MERS:韓国政府、「災難レベル」引き上げに消極的

先月20日の第1号患者発生以来、現在に至るまで「注意」レベル
「地域社会に感染が広がっておらず、経済に与える悪影響も懸念」

 ソウル市を首都圏の幾つかの病院に限られていた中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)の感染が、次第に全国に広がる兆候が見られる中、現在「注意」にとどまっている「国家伝染病災難(災害)レベルを「警戒」または「申告」に引き上げるべきではないかという声が出ている。だが政府は「対応はすでに最高レベルに引き上げている」として、実際のレベルを引き上げることには消極的だ。

 政府がこのような対応を見せる理由は大きく分けて二つある。まず、規定上の要件が十分かどうかということだ。現在、韓国の国家伝染病災難レベルは「関心(青)」「注意(黄)」「警戒(ピンク)」「深刻(赤)」の4段階となっている。各段階はそれぞれ「伝染病の深刻性」や「流行の程度」によって決められる。

 現在のレベルである「注意」は「海外の新種の伝染病が国内に流入した状況」を意味する。先月20日、韓国初のMERS患者が確認された時点で、このレベルだったといえる。これよりも高い「警戒」レベルは「海外の新種の伝染病が国内に流入した後、他地域に伝播」している状況を意味するが、保健福祉部(省に相当)など政府の一部では、最近までのMERSの感染が地域社会ではなく病院間にとどまっていること、主に首都圏(ソウル市・仁川市・京畿道)に感染者が多いことを挙げ、現在の状況を「警戒」レベルと見なすのには反対する意見が出ているという。

 レベルが引き上げられた場合、韓国の状況が実際よりもさらに悪いものという誤った認識が広がり、経済に悪影響を与えるのではないかということも大きな理由だ。企画財政部の関係者は「外国人観光客が急減し、国内消費も落ち込んでいる状況で、対外的に誤ったメッセージが伝わるのではないかと懸念する声が出ている」と話した。災難レベルを引き上げることが、海外の投資家たちに不安感を与え、金融市場を不安定化させたり、韓国製品の安全性に対し懸念が生じ、輸出に悪影響を与えたりする恐れがあり、これは対外依存度の高い韓国経済の特性上、大きな被害をもたらしかねないというわけだ。

 韓国の国家伝染病災難レベルは1954年、米国の林野火災危険度格付けシステム(NFDRS)をモデルとして導入された。米国がNFDRSを国防や安全保障、災害管理などの分野に応用したため、世界各国がこれをベンチマーキング(ほかの優れた点を学び、それを基準に業務などを改革する手法)している。だが、国によって各レベルの意味や深刻性は異なっており、レベルの引き上げに対する反応も国によって違う。

チョン・チョルファン記者
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