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昨年の原油生産量で米国がサウジアラビアを抜き、39年ぶりに世界最大の産…
昨年の原油生産量で米国がサウジアラビアを抜き、39年ぶりに世界最大の産油国となった。米国では近年、新しい技術を用いてシェールオイル、シェールガスの開発が盛んだ。これまで技術的に採取が不可能だった地層からも生産できるようになった原油や天然ガスである。
長く原油の最大生産地は中東だった。しかし、産油国としての米国の台頭は今後も続くとみられる。1バレルあたり100ドルを大きく超えていた原油価格は、米国の台頭などで昨夏から下落し、いま60ドルほど。原油市場の構図は様変わりしている。
にもかかわらず、日本のエネルギー安全保障論議は、中東、ホルムズ海峡に偏り、今国会で審議されている安全保障関連法案でも、大きな狙いとしてホルムズ海峡の機雷除去の必要性をあげている。調達先の多様化など、原油地図の激変を踏まえた取り組みこそがエネルギー安全保障につながるのではないか。
現在の日本は、中東に原油を依存した状態を続けている。湾岸戦争のあった1990年代初頭まで7割ほどだった依存度は、その後むしろ高まり、8割以上で高止まりしている。
やむをえない事情もあった。日本が期待した東南アジアの産油国が経済成長とともに国内需要を増やし、輸出量が増えなくなった。政府も産業界も、結局は安価で大量調達できる中東原油に頼んでしまった。
しかし、いま中東情勢で調達リスクは再び高まっている。リビアなどの大産油国も原油の安定生産ができない状態だ。
これに対し、日本政府が打ち出すのは日本と中東を結ぶシーレーン(海上交通路)防衛だ。中東に自衛隊を派遣することが焦点となっている。
石油の大消費国でもある米国は、いまは原則として原油輸出を禁じている。だが、今後生産量が増えれば、輸出国に転じるだろうとみられている。日本企業も近く米国の天然ガスの輸入を始める。政府は原油輸出についても解禁を働きかけることができるはずだ。
2040年までの世界の原油需要を見ると、最も需要が膨らむのは、アジア、中でも中国である。原油輸入国として日本と利害が一致する構造が続く。調達先の多様化など中国と協力できることがあるはずで、国会論議のような対中脅威で原油市場は染まらない。
戦争に巻き込まれるリスクをとって中東原油を自衛隊が守ることばかりをなぜ、考えるのか。外交努力の余地がいま、広がっている。
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