赤い鳥の「竹田の子守唄」には2つのバージョンがあるのをご存じだろうか。

 赤い鳥はメジャーデビューする前に、URC(アングラレコードクラブ)からシングル「お父帰れや/竹田の子守唄」をリリースしている。
 メジャーデビューするとコロムビアレコードから1stアルバム「FLY WITH THE RED BIRDS」とシングル「人生/赤い花白い花」をリリース。「人生」は「竹田の子守唄」の替え歌(?)で、山上路夫氏が詞を書いている。編曲は大野雄二氏。
 東芝EMIに移籍して「誰のために/小さな歴史」に続いてシングル「竹田の子守唄/翼をください」をリリースするとこれがスマッシュヒット。このヒットで「竹田の子守唄」が一般的に知られるようになった、4thアルバムのタイトルはそのものずばりの「竹田の子守唄」である。

 「竹田の子守唄」は赤い鳥がアマチュア時代からレパートリーにしていた伝承歌だった。メジャーデビューのきっかけとなった「第3回ライト・ミュージック・コンテンスト」では「竹田の子守唄」と「COME AND GO WITH ME」をうたってフォーク部門で優勝、総合でグランプリを獲得した経緯がある。
 「赤い鳥コンプリートコレクション」のレアトラックスでこれら初期の「竹田の子守唄」をすべて聴くことができる。

   「竹田の子守唄」(URCバージョン)
   「竹田の子守唄」(シングル・バージョン)
   「竹田の子守唄」(第3回L.M.C.ライブ・バージョン)

 歌詞はこうなっている。


  守もいやがる 盆からさきにぁ
  雪もちらつくし 子も泣くし

  盆がきたとて 何うれしかろ
  かたびらはなし 帯はなし

  この子よう泣く 守をばいじる
  守も一日 やせるやら

  はよも行きたや この在所こえて
  向こうに見えるは 親のうち
  向こうに見えるは 親のうち


 リードヴォーカルは新居(現・山本)潤子さんで、2番でバックに平山さんのコーラス「ねんねんや~ ねんねんや~」が入る。

 5thアルバム「赤い鳥スタジオライブ」でも「竹田の子守唄」が聴けるが、歌詞が一部変更されていた。それは2枚組の実況録音盤「ミリオンピープル」も同じ。
 歌詞はこうだ。


  守もいやがる 盆からさきにぁ
  雪もちらつくし 子も泣くし

  久世の大根飯 吉祥の菜飯
  またも竹田のもんば飯

  この子よう泣く 守をばいじる
  守も一日 やせるやら

  はよも行きたや この在所こえて
  向こうに見えるは 親の家(うち)
  向こうに見えるは 親の家(うち)


 2番の〈盆がきたとて 何うれしかろ/かたびらはなし 帯はなし〉が、〈久世の大根飯 吉祥の菜飯/またも竹田のもん葉飯〉に変更になったのだ。
 この変更に伴い、平山さんのコーラスがなくなった。

 「スタジオライブ」のリリースが1971年12月。シングル「竹田の子守唄/翼をください」の発売は同年2月。この間に何があったのか?
 アマチュア時代から「竹田の子守唄」をうたってきたとはいえ、赤い鳥のメンバーはこの歌について何も知らなかった。竹田がどこのあるのかという質問にも答えることができなかった。
 リーダーの後藤悦治郎さんは歌の出自を調べる決意をする。そして高校の同級生、橋本正樹さんに調査を依頼するのである。
 調査の結果、京都は伏見・竹田地区の民謡であること、被差別部落の守子唄であることをつきとめた。
 橋本さんはこの経緯をまとめて「竹田の子守唄」という本を自主出版した。

 僕はこの本の存在を「ミリオン・ピープル」で知った。
 「ミリオン・ピープル」には大型ポスターがついていて、裏面が赤い鳥新聞の拡張版といった体裁だった。メンバーだけでなくプロデューサー、ディレクター、マネージャー等々、業界関係者のさまざまな声が掲載されていた。
 永六輔氏も一文をしたためていた。
     ▽
 橋本正樹君の「竹田の子守唄」に目を洗われた以上赤い鳥に耳を洗われたいという気持ちが強くなりました。
     △
 永さんは橋本正樹という人が書いた「竹田の子守唄」の何に目を洗われたのか? 何が書かれていたのか?

 その後、赤い鳥新聞に掲載された後藤さんの文章に次のことが書かれていて、「竹田の子守唄」が何か問題を抱えていることを知ることになる。
     ▽
 「五木の子守唄」や「竹田の子守唄」は真に理解されないまま、伝承されずに終わる運命にあるのかな
     △

 こうして、大学時代、僕は幻の本「竹田の子守唄」を求めて神保町の古書店を探し回るのだ。ちと大仰かな。

  この項続く



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