現在、韓国語・朝鮮語の教育を実施している日本の公立・私立高校は百七十一校―。若い世代の外国語教育をサポートする活動を展開している財団法人・国際文化フォーラム(TJF)はこのほど、日本の公・私立高校で実施されている韓国語教育の実態調査をまとめた。調査報告によると現在実施しているのは全国の高校五千四百九十三校中三%に当たる百七十一校だが、中国語も交えたアジア圏の言語学習は今後ますます増加する見通しだ。
◆80年代から増加
報告書によると、韓国語教育への取り組みは一九八〇年代後半から増加した。八七年から昨年までの統計で見ると年平均で九・四校の割合で増加してきた。これは八七年に提出された臨時教育審議会の最終答申で国際理解のための外国語教育が重視されるようになったことや、九一年度には外国語教育多様化研究協力校が設けられたのをはじめアジア地域の言語教育の必要性が強調されたことも増加の背景としてあげられる。
調査の結果、韓国語教育の取り組みが確認できたのは三十六都道府県。全高等学校の三%、公立高校の二・七%、私立高校の四%が取り組んでいることが明らかになった。
韓国語講座の学習者数は九七年度時点で三千九百二十九人で、英語以外の外国語学習者はまだまだ少数派であることがわかる。一方で、年々増加傾向をたどっていることもわかった。
◆講座名
講座名は、「ハングル」を用いている学校が約四二%、韓国語が二四・三%、朝鮮語が二〇%、韓国朝鮮語が一三・六%となっているが、公立高校では約半数が「ハングル」を、私立高校の約半数が韓国語を講座名として使用している。
◆担当教員
担当する教員数は延べ百一人を確認したが、複数校で教鞭をとる場合もあり、実数はもっと少ない。しかし、少数派である韓国語講座を導入するために学校管理職の説得、講師や受講生の確保など積極的に講座に関わっている姿が浮き彫りとなった。
◆教 材
多くの担当教師が教科書や教材の不足を訴えている状況が明らかになった。第二外国語であるために単位数が少なく、教科書的な教材では分量が多すぎると言う意見や様々な教材を組み合わせて自主教材をつくるなど苦労している姿が明らかになった。またビデオや調理実習、民俗芸能、留学生などの授業参加など様々な工夫を凝らして生徒の学習意欲をあげている点も触れられている。
◆調査過程
今回の調査は、九七年度に高等学校の韓国朝鮮語教育について第一回の調査を行った。これまでに見られた断片的な先行調査・研究を参考にしながら、事前または調査期間中に確認した中国語と韓国朝鮮語教育を実施していると思われる高等学校三百七十五校を対象に、九七年六月から九八年三月にかけ数次にわたる文書によるアンケート調査ならびに電話による取材を行った。初回のアンケート調査の回収率は四〇%で、以後フォーラム職員が地方出張した際に県や市教委への調査、電話調査などを経て報告書がまとめられた。
韓国語教育の現状がどのように動いているかをとらえるため、九七年度に実施している高校だけでなく、九八年度以後に新設予定の高校と九六年度以前に実施していながら九七年度には実施していない高校も含めて調査した。担当教員の異動やカリキュラムの改訂により、やむなく講座を一時的に中断した学校でも、条件さえ整えば講座を再開する可能性があるためだ。
報告書に出てくる取り組み高校の数字は、文部省が二年に一度発表しているが、担当教員とのインタビューや取り組み校の様々な工夫、情報は初めて明らかにされたもの。
同フォーラムでは、もし一覧表に掲載されていない学校で韓国朝鮮語教育に取り組んでいる学校があれば、情報を寄せてほしいと求めている。連絡先は03(5322)5211。
韓国朝鮮語に取り組む高等学校一覧表
・北海道(3)
札幌国際情報、札幌静修、札幌聖心女子学院
・岩手(3)
不来方、花巻南、盛岡スコーレ
・宮城(3)
仙台育英学園、仙台白百合学園、宮城野
・山形(2)
酒田南、山形城北女子
・群馬(1)
白根開善
・埼玉(4)
慶応義塾志木、自由の森学園、細田学園女子、立教
・千葉(2)
千葉明徳、流山東
・東京(13)
飛鳥、桜美林、葛西南定時制、啓明学園、国際、狛江、芝浦工業大学付属、都立大学附属、西、晴海総合、日比谷、南葛飾定時制、武蔵
・神奈川(6)
新磯、栄光学園、神奈川総合、岸根、商工、大師
・新潟(1)
新潟商業
・長野(3)
上田西、塩尻、松本蟻ケ崎
・富山(1)
新湊
・石川(3)
金沢辰巳丘、金沢伏見、金沢北陵
・福井(2)
啓新、敦賀気比
・岐阜(1)
土岐紅陵
・愛知(1)
安城学園
・三重(1)
昂学園
・滋賀(5)
石部、近江兄弟社、国際情報、水口、守山女子(市)
・京都(6)
嵯峨野、同志社、同志社国際、花園、日吉ケ丘(市)、南京都
・大阪(33)
旭、今宮、今宮工業定時制、大阪女子短期大学、大阪成蹊女子、大阪体育大学浪商、貝塚南、柏原東、勝山、勝山定時制、関西創価、柴島、建国、此花総合(市)、金剛学園、佐野、佐野工業定時制、清水谷、住吉、帝塚山学院泉ケ丘、長吉、西、西成、花園、阪南、枚方、枚方津田、布施定時制、松原、箕面、桃谷通信制・定時制、守口東、八尾
・兵庫(11)
芦屋(市)、尼崎、尼崎(市)、尼崎工業、関西学院高等部、香寺、神戸甲北、姫路商業、湊川、武庫、六甲アイランド(市)
・奈良(2)
天理教校親里、山辺
・和歌山(1)
智辯学園和歌山
・鳥取(4)
青谷、境、米子、米子南商業
・島根(3)
邇摩、浜田商業、松江商業
・岡山(2)
岡山学芸館、岡山後楽館(市)
・広島(18)
安芸府中、因島、大竹、尾道工業、山陽、山陽女子、崇徳、高宮、西、広島観音、広島県新庄、広島工業大学附属、広島商業、広島女学院、広島電機大学附属、広島皆実、舟入(市)、三次青陵
・山口(3)
下関国際、早鞆、響
・愛媛(2)
新居浜南、北条
・福岡(8)
沖学園、九州国際大学付属、慶成、東鷹、戸畑商業(市)、博多青松、福岡女子(市)、福岡第一
・佐賀(4)
唐津北、唐津商業、神崎清明、高志館
・長崎(1)
豊玉
・熊本(5)
菊池農業、熊本中央女子、熊本フェイス女学院、玉名女子、東稜
・大分(6)
大分東、日本文理大学附属、日出暘谷、日田三隅、別府大学附属、楊志館
・宮崎(4)
都農、富島、日章学園、本庄
・鹿児島(1)
鹿児島東
・沖縄(2)
向陽、那覇国際
※リストには過去に開講していたり今後予定している学校、講座はあるが履修者不足で
実質開催していない学校も含まれる。
(1999.7.21 民団新聞)
|