数々の疑問を棚上げにして、どうしても今国会で成立させるつもりなのだろう。
安全保障関連法案成立に向け、政府、与党が会期延長の本格的な検討に入った。
国会で野党から「戦争法案」と非難され、与野党推薦の憲法学者がそろって「違憲法案」と指摘した安保法案である。
政府の説明で疑念が晴れたわけでもなく、むしろ現状は法案の土台そのものが揺らいでしまったといえよう。
審議時間さえ確保すれば、という考えには同意できない。
法案は間違いなく戦後日本の安保政策を大転換させ、憲法が法律を制限する「立憲主義」にも反する恐れがある。
今国会成立だけにこだわり、さっさと消化試合を済ます気であれば、政権の暴走と言うほかない。法案撤回も視野に入れた十分な議論が必要だ。
法案は5月下旬に衆院で審議入りした。安倍晋三首相がやじを飛ばして謝罪したり、岸田文雄外相の答弁で紛糾したり、与党の想定より審議は遅れ気味である。
会期末が約2週間後に迫り、首相と谷垣禎一自民党幹事長は会期延長を検討する方針で一致した。延長幅は審議状況を見極めた上で判断するという。
政権内には8月上旬までとする案と、8月末ごろまで大幅延長する案がある。
後者は衆院通過から60日以内に参院で採決されなければ、憲法の規定で「みなし否決」を適用して衆院再可決することを念頭に置くシナリオだ。
いずれの案も、法案の衆院通過を今月末から7月早々とにらむ。与党は審議時間80時間を採決の目安にしているためだ。
だが、よく考えてほしい。政府提出の法案は2本だが、このうち「平和安全法制整備法案」は武力攻撃事態法など10本の改正案をひとくくりにしたものだ。
本来なら1本ずつ慎重審議すべきなのに、まとめてベルトコンベヤーのように処理する。
これが国権の最高機関にふさわしい審議だろうか。与野党を問わず、議員一人一人が自問してほしい。
国民には分かりにくい複雑な法案である。加えて政府は自明のことさえ容易に認めず、答弁に窮する場面も見受けられる。
首相が米議会に公約した夏までの成立より、主権者の理解の方が当然ながら大事なはずだ。
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