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【政治】

自民、学者批判相次ぐ 枝野氏「参考人質疑を軽視」

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 衆院憲法審査会は十一日、自由討議を行い、憲法学者三人が先の参考人質疑で安全保障関連法案を「違憲」と明言したことをめぐり、与野党が論争した。政府が他国を武力で守る集団的自衛権を容認する根拠に挙げる砂川事件の最高裁判決(一九五九年)の位置付けが最大の対立点になった。政府が行使容認の理由にしている安全保障環境の変化も論点になった。自民党の委員からは安保法案を違憲と断じた学者への批判が相次いだ。(新開浩)

 自民党の高村正彦副総裁は、自衛の措置を認めた砂川判決について「集団的自衛権の行使は認められないとは言っていない」と説明した。その上で「最高裁が示した法理に従い、自衛の措置が何であるかを考え抜くのは憲法学者でなく政治家だ」と主張。「違憲だという批判は当たらない」と述べた。

 これに対し、民主党の枝野幸男幹事長は「集団的自衛権行使の可否は、この裁判で問題になっていない。論理の一部をつまみ食いしている」と反論した。

 安全保障環境の変化をめぐっては、高村氏は「自衛の措置が時代によって変化するのは当然だ」と強調。朝鮮半島有事の際、日本を守るために活動する米艦が攻撃された場合に「わが国として何もできないままでいいはずがない」と集団的自衛権を行使して米艦を防護する必要性を訴えた。

 枝野氏は、政府が砂川判決の後、一貫して集団的自衛権は憲法上許されないと説明してきたことを指摘。砂川判決が集団的自衛権の行使を認めていると解釈できるなら「以前から集団的自衛権の行使は法理上は可能だったはずだ。最近の安保環境の変化で集団的自衛権の行使容認が必要になったというのは、つじつまが合わない」と述べた。

 参考人質疑で憲法学者が安保法案を違憲だと明言したことに対しては、高村氏に続いて発言した自民党の委員らは「権力を拘束するのは最高裁判決だ」などと次々に反論。自民党が推薦した長谷部恭男早稲田大教授を名指しし「一刀両断のような意見は現実の安保環境の激変をふまえていない」(務台俊介氏)と批判する意見も出た。

 枝野氏は「国会の参考人質疑そのものを軽視し、国会議員が天に唾するものだ。自民党が傾聴に値すると判断した先生の指摘を重く受け止めるべきだ」と苦言を呈した。

 共産党の赤嶺政賢氏も「参考人全員が閣議決定で憲法解釈を変更したことを立憲主義に反すると指摘したことは極めて重要だ」と述べた。

 <砂川事件> 1957年、東京都砂川町(現立川市)の米軍立川基地拡張に反対するデモ隊の一部が基地内に立ち入り、7人が日米安全保障条約に基づく刑事特別法違反の罪で起訴された事件。米軍駐留が戦力の不保持を定めた憲法9条に違反するかが争点になり、東京地裁は59年3月、米軍駐留は違憲として無罪を言い渡した。検察側の上告を受け、最高裁は同12月、9条は日本に自衛権があると認め、安保条約のような高度に政治的な問題は司法判断になじまないとも指摘。一審判決は破棄され、その後有罪が確定した。

 

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