違憲の疑いは晴れるどころか、ますます深まった。

 衆院特別委で審議中の安全保障関連法案は憲法に適合するか否か。きのうの衆院憲法審査会で、与野党が正面から意見をぶつけ合った。先週の参考人質疑で憲法学者3人が「違憲」と断じたのを受けてのことだ。

 法案決定までの与党協議を主導した自民党の高村正彦副総裁らは正当性を主張したが、説得力があったとは言い難い。

 高村氏は1959年の砂川事件判決を取り上げ、「憲法の番人である最高裁は必要な自衛の措置はとりうると言っている。何が必要かは時代によって変化していくのは当然だ」と憲法解釈の変更を正当化した。

 また、「54年に自衛隊をつくった時にも、ほとんどの憲法学者は憲法違反だと主張していた。(自衛隊をつくった)先達の常識のおかげで平和と安全を維持してきた」と述べた。

 自民党の平沢勝栄氏も「学者の意見に従って戦後の行政、政治が行われていたら、日本はとんでもないことになっていた。憲法栄えて国滅ぶの愚を犯してはならない」と語った。

 これに対し、民主党の枝野幸男幹事長は「自衛隊違憲論は、9条の解釈が確立する前の白地での議論。参考人の意見は定着した政府の憲法解釈を前提として集団的自衛権の容認は憲法違反だと論理的に指摘したものだ」と反論。砂川判決についても「判決から集団的自衛権の行使容認を導きうるのなら、判決後も政府が一貫して行使は許されないとしてきたことをどう説明するのか」と問うた。

 一連の自民党議員の主張からうかがえるのは、法案を違憲と断じた憲法学者の指摘をおとしめようという意図だ。平沢氏の発言にいたっては「学者の言うことなど聞く必要はない」と言わんばかりの、専門家に対する侮辱であり、国民に対する脅しでもある。

 最高裁について高村氏らは「憲法の番人」と持ち上げてはいるが、一票の格差是正を迫る最高裁の指摘をのらりくらりとかわしてきたのはだれか。

 与党側が慌てて乱暴な説明をしなければならないのは、集団的自衛権の行使はできないとした72年の政府見解の論理はそのままに、結論だけを「できる」と百八十度変えた閣議決定があまりに無理筋だったからだ。

 政府は「これまでの憲法解釈との論理的整合性及び法的安定性は保たれている」と繰り返すが、とても納得はできない。

 深まるばかりの疑義に、安倍首相はどう答えるか。