派遣会社のマージン公開率についてこの記事で書いたが、当然浮かぶのが、
「派遣会社が50%中抜きしているなら、派遣社員を直接雇用した方が、企業にとって得ではないか?」
という疑問である。
例えば、派遣社員の時給が1200円だとしたら、企業は派遣会社に2400円払っている。
それなら、派遣社員を直接1200円で雇えば、派遣会社に残りの1200円を払わなくてもよい。
それについて考える前に、派遣会社がいかに儲かるかが一目で分かるグラフを紹介する。
労働者と企業間の中間搾取ダントツ世界一は日本。『派遣会社数・世界比較』 pic.twitter.com/dJoriRa24u
— 大野純一 (@ohnojunichi) 2015, 1月 30
全世界において、日本だけ、派遣会社数が突出している。
日本の派遣制度は、欧米のものとは全くちがう。後日書くが、日本の制度は、派遣先と派遣元だけが儲かる制度だ。
これだけ派遣会社が多いのは、儲かるから、だれもが派遣会社側になりたがるということだ。原発の除去作業が、多重下請けにより、東電が出した20000円のうち作業者には3000円しか渡らないように。
人件費は時給と残業代だけではない
人件費は、このように構成されている。
引用元:人事マネジメント:「人件費の変動費化」をどう進めるか - 『日本の人事部』
人件費総額は、基礎となる「所定内賃金」の1.72倍となる。
つまり、時給1200円×8時間×21日=月給201,600円とすると、派遣社員を直接雇用するとかかる費用は、単純計算で346,752円になる。
日ごろ搾取されている身からすると、この数字を見てしみじみ思う。
「人件費は、本来ならこれだけコストをかけるべき費用なんだな」
「本来なら、これだけもらえるんだ」
これだけもらえたら、どれほど生活が楽になるだろう。
そして同時に思った。
「これだけかかるなら、企業が派遣社員を直接雇用するはずがない」
だが、元々、企業は派遣会社に403,200円払っているのである。
マージン40%で計算しても、336,000円。
マージン35%で計算しても、310,153円。
大手派遣会社のほとんどはマージン率を公開していないので(違法)、本当のマージン率平均値は分からない。
だが、マージン率が低いなら、宣伝のため公開するだろう。まして、法律で義務づけられている。
公開しないのは、後ろめたいところがあるから、すなわち高いからである。
派遣会社に高いマージンを払っても、潤うのは派遣会社の経営者だけだ。もっと安くていい、25万くらいでもいいから労働者に直接賃金を払えば、経済も潤い消費も伸びるのに。
そうしないのは、人件費を「固定費」ではなく、「変動費」にしたいからだ。
つまり、いつでも解雇できる、安い労働力がほしいからである。
りそな派遣社員の個人情報漏洩問題だが、もちろん派遣社員本人が悪い。
免許証をコピーするなど非常に悪質だし、擁護するつもりは全くない。
ただ、解雇前提・搾取され放題の人材が、愛社心や忠誠心を持てるはずもなく、重い責任を期待するのはおかしいのではないかと思う。
自動車産業で活気づいているはずの派遣社員の時給
ちなみに、上記の例の時給を1200円にしているのは、私の住む地域を元にした。
東京から電車で1時間半程度の田舎で、派遣社員の時給の相場は1000~1300円である。
田舎だが自動車産業があり、大手派遣会社の時給はだいたい1200円だ。
月給20万から、保険・年金・住民税・交通費(派遣社員は交通費をもらえない)を引いたら、手元に残るのは14万程度である。
東京に近いため物価は安くないため、一人暮らしは難しく、一人暮らしをしたら病気などに備えた貯金はほぼできない。
派遣会社の営業に聞くと、現在は円安で自動車産業からの求人が多く、人材が不足して困っているとのこと。
だが、(知る限り)3年前と比べて、時給は上がっていない。
この地域の時給が上がる、つまり、派遣先が時給を上げる、もしくは派遣元がマージン率を下げる、そんな日は来るのだろうか?