「2年前から対策を練っていたのに、なぜ?」MERS感染拡散で判明した、韓国政府の無能ぶり
韓国で「MERS(マーズ=中東呼吸器症候群)」感染防止のために隔離されている人数が3,000人に肉薄している。保健福祉部によると、6月9日午前までで隔離者は2,892人に達し、今後も続々と増えていく可能性があるとの予測も出ている。
非常事態の中、朴槿恵大統領は9日、国務会議を開いて「MERSは確実な統制が可能な状況」と語り、「過敏に反応して経済活動が萎縮してはならない」と強調した。また、「我々は世界的な水準の医療技術と防疫体制を備えており、政府は国民のみなさんとともにこの状況を必ず克服する」と決意した。
韓国の医療技術が世界レベルにあるかどうかはさておき、MERS感染者が増え続けている現状を見る限り、最も信用できないのは韓国政府だと言わざるを得ない。というのも、政府は2013年からすでにMERS対策を練っていたからだ。
韓国の健険福祉部は13年5月に「MERS対策班」を結成し、昨年8月までに6回の対策会議を行っていた。また、専門家による懇談会も2度にわたって開いており、各種フォーラムを開催するなどして、「MERS対策マニュアル」を作成していたという。つまり、韓国政府は以前からMERSの危険性を十分に認識しており、必要な対策案も準備していたわけだ。しかし現実は、感染者と接触した人たちを見逃しただけでなく、感染力を過小評価し、初期対応にも失敗している。今回のMARS拡散によって、政府が作成していた対策マニュアルが無意味であることが証明されてしまったわけだ。
実際に、教育部(日本の文部科学省に相当)は6月5日、全国各地の教育庁に「MERSの学校対応マニュアル−幼・初・中等学校用」を送付。慶尚南道庁などは、そのマニュアルを2日後の7日に各学校へ送っている。しかし、教育部は8日にマニュアルの“修正バージョン”を再送。なんでも、発熱確認の措置条項にミスがあったそうだ。
例えば、最初のマニュアルには「37.5℃以上の発熱がある場合は(生徒を)帰宅させ、保護者に連絡して、近くの医療機関で診察を受けるようにする」とある。しかし、修正されたマニュアルには、「37.5℃以上の発熱がある場合は(生徒を)帰宅させ、任意で医療機関を訪問するのではなく、コールセンターに連絡して、医療チームが訪問するまで待機する」となっている。いかに韓国政府側が右往左往しているかが、手に取るようにわかるだろう。事前に対策を練っていたにもかかわらずこのありさまなのだから、政府に対する不信が高まるのも無理はない。
朴大統領の強気な発言とは裏腹に、現状、政府には具体的な対策案がまったくない可能性すらある。これ以上の感染者を出さないためには、国家的な対策が急務なのだが……。