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【衝撃事件の核心】「山口組守護神」弁護士、会見でぶちまけた裏社会との“あぶない関係”

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【衝撃事件の核心】「山口組守護神」弁護士、会見でぶちまけた裏社会との“あぶない関係”

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1審で有罪判決を受け、弁護士バッジ剥奪の危機に陥っている山之内幸夫被告=平成26年4月、大阪市北区  「ヤクザにとってこれほど悪い時代はなかった」。有罪判決にやけになったのか。指定暴力団山口組の顧問弁護士は建造物損壊教唆罪に問われた自身の公判後に記者会見し、捜査当局への批判をぶちまけた。「顧問料は月20万円」「最高幹部から顧問復帰を依頼された」。謎に包まれた顧問業の一端まで明かし、捜査関係者からは「身の危険を考えないのか」との声も漏れる。即座に控訴に踏み切ったが、禁錮以上の有罪判決が確定すれば弁護士バッジを失う。「弁護士ならばヤクザのような少数意見にこそ耳を傾けるべきだ」と“正義”を強調する「山口組の守護神」の職業観とは。

「弁護士生命、いずれ終わる」

 1月25日、今年創設100周年を迎える山口組は、全国の組幹部を集めた100周年記念行事を神戸市内の総本部で開いた。その3日後、長年にわたり山口組を支えてきた顧問弁護士の山之内幸夫被告(68)は、大阪地裁の法廷で人生の岐路を迎えた。

 「懲役10月に処する。ただし2年間は刑の執行を猶予する」

 裁判長は執行猶予付き有罪判決の主文を宣告、判決理由を朗読した。ダークスーツに身を包んだ山之内被告は、自身の主張をことごとく退けた判決にも表情を変えず、終始冷静に聞き入った。

 しかし閉廷後に大阪市内で開かれた会見では、一転して不満が爆発。警察、検察、裁判所への怒りを10分近くにわたって一気にまくし立てた。

 「私のクビを取りたい警察の意向を受けた検察が、普通は起訴猶予にする事案を起訴し、裁判所もそれを追認した」

 「司法判断というより、世の中に暴力団の顧問弁護士が存在してはならないという行政判断に近い。到底納得できない」

 判決によると、山之内被告は平成25年9月、事業をめぐるトラブルの解決を依頼してきた男=建造物損壊罪で有罪確定=に倉庫を壊すようそそのかしたとされる。「壊して」「大丈夫や。かまへん、そんなもん」。男が山之内被告とのやりとりをひそかに録音した音声データが決定打となり、大阪府警が昨年3月に書類送検。翌4月に大阪地検が起訴した。

 公判で山之内被告は一貫して検察側の「公訴権の乱用」を主張。しかし判決はこれを一蹴し、「法律家でありながら法秩序を無視しており、厳しい非難が向けられるべきだ」とした。

 「裁判で1審が占めるウエートは大きい。私の弁護士生命はいずれ終わるでしょう」

 山之内被告は会見で、弁護士としての経験則からこんな“予言”もしたが、間もなく判決を不服として控訴した。

法解釈を教示、法廷外でも「守護神」

 山之内被告は昭和50年に弁護士登録。山口組の竹中正久4代目組長の時代に顧問弁護士に就任した。昭和62年に「暴力団の顧問は弁護士としての品位を汚す」として、所属する大阪弁護士会から戒告処分を受けたため、いったん顧問を辞任したとされる。

 しかし、会見での本人の説明によると、「表向き辞めたことにして実際は続けていた」。顧問でなくなったのは平成3年、山口組系組事務所に隣接するビルの新築工事をめぐり、施主の弁護士との交渉で美術品を脅し取ろうとしたとして、組幹部らとともに恐喝未遂容疑で逮捕、起訴された後だという。

 「組に接触できなくなって必然的に顧問ができなくなったのです」

 この事件では、大阪地裁が無罪を言い渡し、大阪高裁も支持したため、9年に無罪が確定した。それでも、8年後に篠田建市(通称・司忍)6代目組長が就任するまで組側とは断絶状態が続いた。転機は18年、6代目体制の最高幹部から「もう一度顧問に復帰してほしい」と依頼されたことだったという。

 再び顧問に就任した後、組幹部らの刑事弁護のほか、直系組長が組事務所として使っていた土地の明け渡しを求められた民事訴訟でも代理人を務めた。配下の組員に指を切断する「指詰め」をさせたとして、山口組系組幹部が強要罪に問われた事件では25年8月、大阪地裁で無罪判決を勝ち取った。

 ただ会見では、こうした表に出る活動の裏で、さまざまな相談に対応していたことも暴露。22年以降に全国の自治体で制定が続く暴力団排除条例の研究や、暴力団にかかわる新法の解釈などを依頼され、見解をまとめた書面を組側に提供したと語った。

 24年3月には、世界遺産に登録されている三重県熊野市の神社にある石灯籠4基に山口組最高幹部の名前が刻まれ、三重県警が撤去を求めていることが報道されたが、この際にも組側から「どうしたらいいか」と助言を求められていたという。

 顧問料については「山口組の2つの財産管理会社から月10万円ずつもらっていた」と説明した。

 ある弁護士によると、大阪で主だった企業の弁護士顧問料は月5万円。東京では月15万~20万円の企業もあり、山之内被告のケースと一致するが、山口組の顧問料としては低いとの印象がある。暴力団担当の捜査関係者も「表向きは20万円かもしれないが、裏金としてもっと多額の金をもらっていた可能性はある」との見方を示した。

暴力団は「落ちこぼれの受け皿」

 「今回は山口組を弱体化させる目的で顧問の私が狙い撃ちにされた。ただ、顧問をしたことを後悔したことはない」

 映画化された「悲しきヒットマン」などの著作でも組員へのシンパシーを隠さなかった山之内被告は、会見の終盤、暴力団に対する持論を展開した。

 暴力団の存在は「社会からドロップアウトした人間の受け皿」と指摘。「創業から100年続く企業がどれだけありますか。警察から壊滅作戦を繰り返されても100年続くヤクザ組織は、それなりに存在する理由があるということです」と語った。

 さらに「弁護士であれば大衆に迎合せず、少数の味方になることだ。世の中から敵のように扱われている暴力団組員の意見にこそ耳を傾けるべきだ」と力説。ただ、「残念ながら賛同してくれる弁護士はいない」とも付け加えた。

 1審では「山口組顧問弁護士」の肩書を前面に押し出して検察側と対決するため、「主張が制約される」多人数の私選弁護団の就任申し込みを断り、国選弁護人1人に弁護を委ねたという山之内被告。「最初で最後の顧問弁護士」を自負する男が、控訴審で改めてどのような主張をしていくかに注目が集まる。

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