|
……未来が読めたらと今ほど思ったことはない。 ……なぜか? お前のようなクズが生まれるのを防げた。 俺がクズならあんたもクズだよ。親なんだからな。 ……出て行け。当面の住む場所と金はやる。 ……後は自分でなんとかしてみせろ。 ……これは最後の機会だ。私に認められる、な。 沸騰する感情。頭が白く染まる。理性が消える。 視界も染まる……白く……白く……。 ■10月23日■ 「はっ! はっ、はっ……はぁ、はぁ、は」 ばくばくばくと心臓が脈打つ。 厭なことを思いだしたもんだ。 あのとき親父にしこたまボコられた痛みと悔しさが蘇ってくる。 汗でシャツが体に張り付いている。 「きもちわる」 忘れろ忘れろ。 もう親父はいないんだ。 あのうざったい声を聞くことは二度とないと思ってたのに、夢に出てくるとはつくづく厭な野郎だ。 「あのぉ〜ご主人サマ」 びくっとした。 下着姿の女がベッドの傍で座り込んでいる。 悪戯を見つけられたときの犬みたいな表情をしている。 ああ、琴美か。 やるだけやって放置していたが、……なんで下着だけ? 「奴隷って服きちゃまずいのかなーって思ってさあ、じゃない、思いました。はい」 どっちかっつーと奴隷ごっこだなこれ。 「あのぉ、あたしバイトとかあるんですけどぉ」 「今何時」 質問を無視して訊く。 「7時ちょっと前。こんな早い時間に起きたの初めて」 く、と口の端が自然と持ち上がる。 ちょうどいい時間に目が覚めたもんだ。 「お前はいつも通り生活しろ。稼いだ金は俺に回せ」 「でもぉ彼氏にも渡さないといけないし」 『手』を伸ばす。 ――俺に金を渡せ。 ――彼氏とは別れろ。 「……わかりました」 足ヶ谷琴美はすっと立ち上がると部屋を出て行く。 『悪魔の手』……ではなく自分の手を開いたり閉じたりしながら俺は呟く。 「いまいち効力が掴みきれねー能力だよな……、んっ?」 床に服が散らかっている。女の物の服だ。 俺はベッドから飛び降りて駆け出した。 「下着のまま出て行くのはやめろぉーっ!!」 7時13分。 「いってきまあす!」 双子が元気よくマンションの廊下を駆けていく。 その後に東雲佳耶子とその旦那が廊下に現れた。 「いってらっしゃい、琢己さん」 「ああ。それじゃ面倒かもしれないが、彼のこと、頼むよ」 「大丈夫、まかせて。それじゃ……」 ちゅ、と柔らかそうな唇が夫の頬に触れた。 ……あんな絵に描いた新婚夫婦ってほんとにいるんだな。 にしても『彼』ってのは誰のことだろうか。 「がんばってね」 若い妻の柔らかい声に励まされて、旦那は少し気恥ずかしそうに顔を緩ませて出勤していった。 上の階の階段からのぞき見していた俺はやっと奥さん一人になったことに待ちくたびれながら、さも今階段を降りてきたかのように振る舞って挨拶した。 「おはようございます」 出し抜けに声をかけられた彼女は目を丸くして立ち止まる。 笑顔はすぐに戻ってきた。 「おはよう、柊くん」 そしてさようなら貞淑な若奥様。 ――俺の言葉をすべて信じろ、東雲佳耶子。 『悪魔の手』が東雲佳耶子の頭を掴む。 「部屋、入っていいですよね」 「えっ、と?」 不思議そうな彼女に明るく笑いかける。 「いやだなあ、昨日招待してくれたじゃないですか」 合点がいった、とばかりに東雲佳耶子は柏手を打つ。 「そうだったよね。ごめんなさい、じゃあどうぞ」 302号室への扉が開く。 ありがとう、佳耶子さん。 そんな約束はしてねーけど、な。 「おー佳耶子ねーさんお帰りお帰りって、誰!?」 「お前こそ誰だよ!」 見たこともない野郎が失礼にも俺を指さしている。 歳は俺よりも上っぽいが、脱色しすぎの髪とチープでナンセンスな服装からして精神年齢は低い。間違いない。 佳耶子さんは対峙する俺と野郎の間で、なんの気負いもない顔で、 「琢馬くん、この子は13階に住んでる柊くん。仲良くしてあげてね」 小学生の顔合わせかと言いたくなる紹介をしてくれたので気が抜けた。 「なあ。うちのネーさんとどーゆー関係?」 琢馬くんとやらは垂れ気味の目で俺を胡散臭そうに見ていた。 何はともあれ、邪魔者には退場してもらおう。 『手』を伸ばす。 ――東雲琢馬、俺に従え。 「……なんだ」 おかしい。手応えがなかった。 掴もうとしたら相手がウナギに変わったような感覚。 琢馬は不思議そうな顔で額のあたりをぽりぽり掻いている。 まさか、失敗か。……試してみよう。 「琢馬だっけ」 「そうだけど、なに。つか何で呼び捨て?」 「ちょっとバク転してくれ。今すぐ」 「するか! おれはサーカスの猿か!」 おいおい、本当に失敗してるじゃねーか。 「いやあすんません冗談っすよ冗談。挨拶代わりっていうか」 敵意を濃くする琢馬に適当な応対をしながら、早鐘を打つ心臓を鎮めるべく頭を回転させる。 考えろ、考えろ、考えろ。 何で失敗した。 再確認しろ、操る条件は何だった。 ――操るには相手の『本名』が必要だ。 脳裏を過ぎるミハルの言葉。 そう、それだけ。本名さえわかればいいはずだ。 野郎の本名は東雲琢馬。なら問題はない。 野郎の、本名? 『おー佳耶子ねーさんお帰りお帰りって、誰!?』 『琢馬くん、この子は13階に住んでる柊くん。仲良くしてあげてね』 佳耶子ねーさん。 琢馬くん。 実の兄弟がそんな呼び合い方をするわきゃあない。 いくつかの可能性が頭を過ぎる。 疑惑度が定量オーバーしたのか、琢馬が不信感を声にした。 「ねーさん、こいつ、」 と、そこで東雲佳耶子が指をぴっと一本立てた。 「琢馬くん、こいつなんて言っちゃ、めっ」 「いやいや! 甘すぎんだ、ねーさんは! こいつはぜってーヤバイ。わかりやすく言えば、ゲロ以下のにおいがぷんぷんするぜぇーみたいな」 馬鹿で助かった。 最後の一言でわからなくなったと見えて、佳耶子さんは首を傾げている。 だが、急いだ方がいいみたいだ。解決策はもう考えついている。 「東雲さん、苗字! こいつ、この琢馬の苗字教えてくれるって約束でしたよね?」 「はあ? 意味わかんねー。教えないでいいスからね、ねーさん」 ぐっと俺に向かって歩み寄ってくる琢馬。 佳耶子さんはぽけっとした顔で、 「そうだったわね。日暮。日暮琢馬くんよ。琢己さんのお兄さんの子なの。うちは婿入りだったから……」 佳耶子さんはノロケともなんともつかない話を続けている。 くっ。ほんとうに便利な力だよなあ。 なんせ今の佳耶子は――『俺の言葉をすべて信じる』。 「ちょ、ちょっとねーさんっ、お人好しにも程が、」 さあ、ご馳走だ。 ココロを侵す『悪魔の手』。 しっかり味わってくれ、琢馬くん。 ――日暮琢磨、お前は俺の奴隷だ。 ――日暮琢磨、お前は何も考えるな。 ――日暮琢磨、お前はただ俺に従え。 ぱちりと照明のスイッチを落としたように琢馬の目から輝きが消える。 ぱたりと糸が切れたように琢馬は項垂れ、動きが止まる。 「ふう」 まったく、焦らせやがって。 俺は手をしっしっと振って、 「琢馬、別の部屋へ行ってろ」 命令に従って琢馬がふらふらと隣の部屋へと消えていく。 「あら、琢馬くんどうしたのかしら。きつく叱りすぎたのかな……」 この人はこの期に及んでまだ呑気だ。 『手』、使わなくても騙せたんじゃねーかと思えてきた。 佳耶子さんは旦那に頼まれた責任感からか、琢馬が気になる様子だった。 「ごめんなさい、ちょっと様子を、」 「あれ、忘れたんですか。旦那さんは琢馬のこと放っておいていいって言ったんですよ。 それよりも、俺のことをもてなせって」 そもそも俺と旦那はまったく面識がないのだが、今の佳耶子は疑わない。 「あ……そう、だったかしら。 ごめんなさい、お茶の用意するわね。えっと、お菓子、お菓子……」 ぷっ、と俺はわざとらしく笑った。 「やだなあ佳耶子さん、もてなすってそういうことじゃないでしょ」 「えっ? わたし、何かおかしかったかしら」 不思議そうに目をぱちくりする東雲夫人に、俺は道理を説くように言った。 「男をもてなすときはカラダを使うのが常識です」 こんな無茶苦茶な言い様にもかかわらず、佳耶子はやだ、と頬に手をあてた。 その常識を知らなかったことが恥ずかしい、とでも言うように耳たぶまで赤く染めている。 「だめねえ、わたし世間知らずで」 あらためて『悪魔の手』がおそろしい力だと思い知らされる。 判断力も理性も常識も上回る、絶対的な支配力だ。 佳耶子はおっとりと俺の後ろに回ると両手をそっと両肩に乗せる。 柔らかな掌が俺の肩を優しく刺激する。 「あらあ、柊くん凝ってるわ。やっぱり生活、大変なのね。 困ったことがあったらわたしに相談してねっ」 「いやあありがとうございますって、違う!」 勢いよく立ち上がってぽかんとしているおおぼけ若妻を見下ろす。 確かに、いいとこの育ちだとは聞いている。 けど、天然にも限度があるというもんだ。 「佳耶子さん、今まで何人とヤった? ……あーセックスな、セックス」 「ふ、二人よ。大学のときに付き合っていた人と、琢己さんの二人だけ」 彼女は恥ずかしそうに目を伏せつつ答えた。 まあ、そんなもんか。 「旦那とは何回くらいヤってる」 「……初夜と、あとは月に一度くらい、かしら」 俺は佳耶子さんの、セーターを盛り上げる豊満な二つの膨らみを見た。 こんなイイ女を嫁にして月に一度だ? バカだな、バカ。 ようし、俺がちゃあんと教え込んでやるよ、旦那の代わりにね……。 俺は諭すように言う。 「佳耶子さん、せっかくいいものをもってるんだからそれを使わなくちゃあ」 「いいもの……?」 かがんで目線を合わせ、乳房を指さしてやる。 「胸ですよ胸。大きな胸はち○ぽを挟んでしごくためにあるんですよ。わかりました?」 佳耶子は感嘆の声を漏らした。 「そうなのねえ。ありがと、わたし、知らなかったわ」 俺はにこっと笑った。 「いえいえ。でもまず言葉遣いから正さないとね。 僕と佳耶子さんは客と家人です。立場はね、客のが上なんだ。だから敬語を使え」 最後だけ命令口調で強く言いつける。 すると彼女はぴっと背筋を伸ばして表情に緊張を滲ませた。 「は、はい、ごめんなさい。柊く、じゃなくて、柊さん」 「ま、いいだろ。じゃあ始めてもらおうかな。胸で頼むよ、佳耶子」 佳耶子がくっと喉を鳴らした。 決心した風にセーターに手をかけぐいっと持ち上げる。 薄ピンク色のブラジャーに抱かれたおっぱいがこぼれ落ちる。 そのまま彼女はセーターを脱ぐと畳んで床に置いた。背中に手を回しブラジャーのホックを外す。はらりと落ちたブラジャーをセーターの上に置く。 佳耶子の頬はいっそう上気し、肌も少しずつ赤らんでくる。心で荒れ狂う羞恥があふれ出てきているようだった。 その羞じらいが、ひどく官能的で、心地良かった。 失礼します、と蚊の鳴くような声を出して彼女は既に勃起した俺のペニスを取り出し、ふくよかな胸と胸とで挟み込んだ。 その状態で彼女は少し戸惑ったように沈黙し、やがてゆっくりと体を擦りつけはじめた。 「体じゃない。胸を使え」 彼女は少し考えてから、両手で胸を押さえ、間にあるペニスをしごき始めた。 軽く動かして彼女は滑りが足りないことに気づいたらしかった。 「あっ」 なくし物を見つけたときの子供のように微笑む佳耶子。 彼女の口から舌がぬろりと顔を出す。ねっとりと濡れた舌先から透明な唾液が滴り落ちる。 ローションのような粘りけをもった、ほのあたたかい涎が亀頭を濡らし茎のほうへと落ちていく。 佳耶子の舌が口内に戻る。もごもごと口が蠢く。えぅ、と赤ん坊みたいな声を出しながらまた舌を突き出し、さっきよりも多量の唾液を垂らす。 ぴたっ。多すぎた彼女の唾液がフローリングにこぼれ落ちる。 彼女の両手が動きを再開した。ペニスが柔らかい弾力に刺激される。 「んっ……ふ…」 自分の乳房を掴んで男のペニスをしごきあげる。 慣れない行為のためか、元々真面目なのか、その様子はなんというか、熱心だった。 時折亀頭に触れる吐息が熱い。 「んっ、……んっ、ふっ」 にちゅっ、ぬちゅっ、じゅちゅっ。 ゆっくりと速度が上がっていく。 俺と佳耶子はただ同じマンションに住む住人同士でしかない。 それが今は奴隷のようにいいなりになってパイズリをしている、そのことを思うだけで興奮が高まってくる。 にゅぐ、と刺激的に乳房が茎の部分をしごきあげた瞬間に根元から快感が噴き上がり、精液となって噴き出した。 「ああっ!? んっ! んぅ……ぅ」 佳耶子は口と瞼を閉じて、粘っこい白濁を顔で受け止めた。 大量の精液は頬を滑り、唇を伝い、乳房へと滴り落ちた。 彼女は顔にかかったザーメンを手でそっと拭ってから、羞じらいを含んだ微笑で俺を見た。 「あの、いかがでしたか」 媚びるような声。 気が付いたときには、俺は佳耶子の両肩を掴んで押し倒していた。 あっ、と恐怖が佳耶子の顔に一瞬よぎったが、――客をもてなさねばならない、という狂った認識が彼女の危機感を押さえ込んだ。 セミタイトのスカートを乱暴に剥ぎ取る。 彼女は体をよじってささやかに抵抗したが、相手にせず、白無地のパンティを強く引っ張って膝下までずり下げる。 両膝を掴んで左右に大きく開く。 「ああっ…」 彼女は両手で顔を覆った。 思っていたよりも濃い茂みが現れた。 水気のきらめきが反射する。 興奮してやがったんだ、この女は。他の男のち○ぽを胸でしごきながら。旦那がいるくせに。 佳耶子は顔を隠していた両手をそっと離し、顔を横に向けた。 目に涙が溜まっている。 「見ないで、ください」 ペニスはとっくに勃起していた。 俺はそいつを佳耶子へと突き刺した。 「あああっ」 ぬるりと温かい感触にペニスが包み込まれた。 何もしなくても気持ちよかった。 使い込まれていない膣の適度な狭さが既に一つの刺激だった。 腰を打ち付けた。 「あぅんっ」 陰部で水音が鳴った。 遠慮も、気遣いも、いらなかった。 ただただ快楽を得るためにち○ぽを擦りつける。 濡れた陰毛が擦れて水気混じりの卑猥な音を生み出し続ける。 「あぁ、あぁあぁあぁ、あぁ、あっあっあっ」 穏やかな白昼の下で、淫靡な声が、水音が、混じり合う。 佳耶子の両の乳房に五指をめりこませ、加虐的にこね回す。 「んっ、い、痛いっ」 愛撫なんてない。 相手の意思など知ったことか。 これは一方的な性欲処理、侵して犯す蹂躙の快楽。 「ああぁぁぁいい、いぃぃっ、ああんっあんあんあんっ!」 より激しく乳房を揉み、より激しく腰を打ち付ける。 一際強く、奥まで届くようにペニスを突き挿れた。 「ああぁぁぁぁ! いっくぅううううううっ!」 部屋の外まで聞こえるような嬌声をあげる佳耶子の膣内にどくどくと熱い精液が注ぎ込まれていった。 「じゃあな佳耶子さん、また来るよ」 佳耶子の一糸まとわぬ肢体は精液にまみれていた。 今まで感じたことのない快楽に表情を蕩けさせて、彼女は俺の言葉に頷いた。 扉に手をかける。 「あ、忘れてた。おい琢馬、出てきていいぞ」 隣室からぼうっとした表情で琢馬が出てくる。 次の獲物は春日千聖。 『悪魔の手』がある今、後れを取るとは思えないが、念には念を入れておくべきだろう。 エレベーターで下る。 奴隷化した琢馬は俺についてきている。 春日千聖と取り巻きがたむろしている場所は大体わかっている。 琢馬を使って春日に隙をつくって……よし、いける。 チン。 エレベーターの扉が開く。 外へ出る。 肩に手が乗せられた。 「よォ」 がつん、と頬を突き抜けた衝撃に、考えていたことが綺麗さっぱり吹っ飛んだ。 状況を理解する暇を与えられることなく胸ぐらを掴まれて、壁に背中を叩き付けられた。 一瞬、息が詰まった。 「ぐっ!?」 顔に温かい息が掛かる。 誰かが顔をすぐ近くまで寄せているんだ。 「助かったぜ、捜す手間が省けた」 「かっ、春日」 何でこんなとこにいやがる。 春日の口がにいっと歪んで八重歯が覗く。 「お前が焦らすからさァ、待ちきれなくなったんだよ」 囁くようにそんなことを言われても、この状況じゃあ怖気しか起きやしない。 俺は出来る限り平生を装って訊ねる。 「なんの、話だっけ」 「あっはは、おいおい」 ころころと笑っていたかと思うと表情を一変させて、もう一度俺の背を壁に叩き付けた。 「がぁっ」 「てめェの頭は鳥並か? あ? 金だよ、金金金!」 額を抑えつけられ、後頭部が壁にこすれた。 「いたっ、いたたたた、いたいって!」 男達の笑い声がする。 取り巻き連中も一緒か。 舐めやがって。今すぐ『手』を使って―― 「いてぇ!」 まずい、これじゃ集中できない。 くそっ、せっかくとんでもない力を手に入れたのに、このままだといつもと同じじゃねーかよ。 「あのぅ、お取り込み中すんません」 間の抜けた声に、場が静かになった。 た……琢馬。 すっかり忘れていた。 「何あんた」 取り巻きの男どもに即取り囲まれる琢馬。 男達の間から見える琢馬の顔は引き攣っている。 「いやいやいやいや、忙しーのはすっごいわかるんす。 でも、ほら、暴力はいけないんじゃないかなあーって思ったり、思わなかったり」 どっちだよ。 しかし、なるほど……『奴隷』として主人を助けにきたわけか。 「へー暴力。暴力ってなに。オレたちに教えてよ」 男連中が琢馬に肩をぶつけたり足を踏みつけたりし始める。 「イテッ! いやこれこれっ、これですって、いたっ! 痛い! そこだめ、そこ弱いから!」 なんて使えない奴隷だ。 いや、だから奴隷なのか。 「なんだありゃ」 春日も呆気にとられている。 しめた、琢馬の方に気を取られて締め付けが緩んでる。 と喜べたのも束の間、春日はいきなりスリーパーホールドをかけてきた。 「ぐっ、ぐるし、い」 「なに、キモチイイって? よゥし、じゃあこのままでお前の部屋まで行ってやるよ。 仲良くやろうぜ、ハハハッ!」 ぎりぎりぎりと首が絞まる。 こっ、この怪力女! 俺は死に物狂いで体を振り回した。 それでもホールドはほどけない。 「暴れるな、よッ!」 さらにきつく締まる。 「がっ……」 意識が遠のきそうになる。 力が脱けた。 「ったく、余計な手間かけんじゃねーよボケが」 少しだけ息を荒くした春日が腕の力を緩めた。 ――ばぁぁぁか。 「琢馬! この女に襲いかかれ!」 声を張り上げる。 「このやろッ」 春日の腕にまた力が込められる。 今度は本気でオとしにかかってやがる。 やばいぞ……急げ琢馬! 「おらっしゃあああああああっ」 琢馬が声を裏返らせて突進した。 不意を突かれた男どもは琢馬を捕まえそこねた。 耳元で春日の舌打ちを聞いた。 すっ、と春日が俺から離れて、猪のように突っ込んでくる琢馬を迎え撃つ。 春日の肩が上がる。息を吸い込んだんだ。 「フッ!」 鋭い呼気とともに繰り出された右ストレートは見事に琢馬の顔面に吸い込まれた。 鼻血を噴き出しながらぶっ倒れる琢馬。 俺は心の中でご苦労さんと言っておいた。 掴め、『悪魔の手』。 ――春日千聖、今ここにいる俺以外の奴を叩きのめせ。 「さッすが千聖。超つえー……ってぶッ!?」 笑いながら春日に近寄った男の顔に拳がめり込んだ。 ばたーんと倒れる男。 残った三人が一歩後退った。 顔には当然戸惑いと恐怖が浮かんでいる。 「お、落ち着けよ千聖。なに興奮してんだ。相手がちげーだろ」 本心ではキレていそうだが、相手が春日だけに迂闊な態度を取れないのだろう。 まあどんな態度を取ろうと今の春日には無駄なんだけど。 春日が突風となって男に肉迫する。 放たれるアッパーカット。防ぐ暇さえない。 これで、二人目。 「ぅおるァ春日ァ!」 春日の背後にいた男が殴りかかる。 「ほぶっ!」 裏拳が男の頬にめり込んだ。 男はかろうじて踏み止まったが、その顎へと鋭い左フックが打ち込まれ、結局そいつもノックダウンされた。 最後の一人が無言で走った。 その手には飛び出しナイフ。 「女のくせに調子ン乗ってんじゃねーぞ」 ナイフが左上段から振り下ろされる。 春日はナイフをもった奴の右腕を左拳の甲で弾いた。 そして踏み込む。 鈍い音がした。 男の手からナイフが落ちる。 刃が床で音を立てるのとほぼ同時に、男ががくりと膝を着いた。 後にはボディブロウを放った春日が立っているだけだった。 「強すぎてひいた」 と俺がドン引きしていると、人形のようだった春日の顔に表情が戻った。 「は、はァ? なんだこれ。アタシ、何で」 彼女の目が俺を捉える。 この状況はわからない、わからないが、とりあえず目の前の他人のせいだ。 能力なんてなくても、心の動きが手に取るようにわかった。単純タチワル女め。 「てめェ、」 その性格、『悪魔の手』で修正してやるよ。 ――お前は大人しい女だ。 ――大人しく、内気で、気が弱い。 ――俺に恐怖し、俺に逆らわない。 春日は両手で頭を抱えると、屈み込んだ。 「うあ……うあっ、あああ、あああああぁぁ」 目の焦点は合わず、口の端からは涎がこぼれている。 まあ奴の人格を否定したんだ、そりゃあ狂乱もするだろう。 春日はいやいやと頭を振るが、『手』の支配からは逃れられない。 びくんと体が痙攣し、顔が天井を向く。 金魚のように口がぱくぱくと動いて、急に電池が切れたように前のめりに倒れ込んだ。 動かない。 「……まさか死んじゃいないよな」 それはまずい。 あのミハルって野郎が言ってた『唯一の禁則』を破ることになってしまう。 いやでも不可抗力だし、とぐるぐる考え込んでいると、春日がぴくりと動いた。 眠りから覚めるような鈍い動作で体を起こす。 狂気も暴力への欲求も無い、茫然自失の顔。 うまくいった、のか? パトカーのサイレンが近づいてきた。 「やばっ」 とりあえずこの場から離れないと。 俺は琢馬を叩き起こして、警察をうまくあしらっておくよう命じた。 そして呆けている春日千聖に命じた。 「行くぞ千聖」 春日千聖の虚ろな眼が俺を見た。 唇が動く。 「は、い」 1301号室。俺の部屋だ。 「さーてと」 俺の声に、春日千聖はひっと息を飲んで体を竦めた。 新鮮な反応に嬉しくなる。 これが、あの春日千聖か。 おどおどと俺をうかがう様は初心な少女だ。 パンク・ファッションも右目を縁取る紫の星形も、今のこいつじゃコスプレ程度の価値しか持たない。 「おい。呼び方、千聖でいいよな。前は千聖サマって呼べって言われたけど」 千聖は頷いてから首を振るという奇妙な動作をした。 「呼び捨てっ、呼び捨てでいいですっ。さ、サマなんて。ぶるぶる」 いやあ、そそられるね。 あれだけ生意気だった女が、こうだ。 俺は腹の底が疼くのを感じた。いじめてやりたい。 乱暴に長い髪を掴んで引っ張り上げる。 「きゃ」 「お前にはすっげー痛い目に遭わされたよ。何度も」 「ごっ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい、ごめんなさあい!」 声に涙が滲む。 「やっぱ千聖ってのやめた。好きに呼んでいいよな」 千聖は何度も頷く。 掴んでいた髪を離してやる。 千聖は胸元に手を引き寄せ肩をかすかに震わせながら俺を見ている。 「お前はな、『便器』だ。俺が性処理するための『便器』。嬉しいだろ」 千聖は引き攣った泣き笑いを浮かべて、はいと言った。 俺はズボンのジッパーを下ろし、パンツからチ○ポを露出させた。 ギンギンに勃起していた。 「やあ……」 頬を染めた千聖が両手で顔を覆った。 うーん、ここまで豹変するとは。 感慨深く思いながら、俺は顔を隠す千聖の両手を乱暴に剥がした。 「ひぃっ」 「目を逸らすなっ」 愕然とした顔で、けれども命令に逆らえず俺のペニスに視線を固定する千聖。 「よし、口を開け」 「…………」 「何度も言わせるなよ。口を開け」 おずおずと開かれた口内にペニスをねじ込んだ。 「ぅえッ」 「噛むな。吐くな。俺が射精するまでそのままだ」 一切の遠慮も容赦もなく腰を打ち付ける。 「んんーっ!? んぼっんぼっんぼっ! ぉぇ、ぶっ、んっんっんっ!」 千聖の瞳が助けを求めて泳ぐ。 その憐れさが嗜虐心を満たしてくれる。 千聖の口の端から涎とカウパーの混ざった液体が泡となって垂れ落ちる。 「んっんっんっ!!」 快感が高まっていくのがわかる。 目の端に涙の玉を浮かべる千聖に構わず、腰の動きをいっそう速めた。 食らえ、便器女。 「んんッ!?」 胃に届かせる勢いペニスを奥へと挿し込み、ザーメンをすべて注ぎ込む。 「ふぅっ……ふぅっ……んふ……」 口呼吸を遮られた千聖は鼻から必死に酸素を吸い込んでいた。 喉がごくりごくりと動いている。 精液を出し切って、ゆっくりとペニスを抜く。 「んぐぇっ。げっ、げほっ、げほっ、っ……は、ハァ、ハァ、ハァ。 ありがとう、ござぃ、ました」 蹂躙されてなお感謝の言葉を述べた千聖の瞳はしかし、心が壊れているかのようにひどく虚ろだった。 その姿は俺の情欲を再び燃え上がらせた。 「四つん這いになれ」 「はい……」 千聖は従順だった。 肉感的な尻をこちらへ向けて犬の恰好をする。 むっちりした尻肉を掴んで左右に引っ張ると、肛門と愛液で潤った膣口が露わになった。 肛門がひくりと痙攣した。 「いやらしいケツしやがって」 尻をひっぱたく。 「やぁっ!」 「こっちは使ったことあんのか?」 指をアヌスに突っ込む。 ぶるっと千聖の尻が揺れる。 「な、ないです」 「セックスは何回した?」 「……憶えてない、です。たくさん――ひぁっ」 ばしんと尻を叩かれ千聖は悲鳴をあげた。 「誰と」 「中学の時の連れとボクシング・ジムのコーチと、あとお金目当てにおじさんと……ひぎぃっ!」 尻をひっぱたく。 「このクソビッチが!」 言葉では憤りながら、俺は真実笑っていた。 そんな女を虐げられる優越感が俺を昂揚させる。 「ああっ! あぁっ!」 叩くたび千聖は逃げるように尻を振る。 叩くたび千聖のマ○コから愛液が糸を引き、周りに飛び散る。 臀部に赤い手形が出来た頃、叩くのをやめて尻を左右にぐいっと開く。 先走りで濡れたイチモツを、男を誘うように痙攣している千聖のアナルに挿入した。 「あひぃっ!? そこっ、そこはぁ、ちがぅううっ!」 「便器にはこっちで充分だ!」 膣とは違ったタイトな締め付けがペニスを刺激してくる。 「あぁあ! あんあんあんあんっ、はあぁっ!」 じゅぷじゅぷじゅぷと亀頭がアヌスと擦れ合う音が鳴り響く。 高まる興奮に任せて、赤く腫れた千聖のケツをふたたび叩く。 「はひいいィッ! ひィッ! ひぐぅっ!」 俺は千聖の耳に囁く。 「ひゃい、ひゃいっ、キモチイイ! キモチイイですっ! お尻叩かれて興奮してますぅっ!」 じょろ……じょろろろろ。 千聖の股間から黄金色の水が放物線を描いて飛び出す。 「ごべんなさいいっ! もうわかんないっ、わかんないぃっ! お尻いいッ、いいのぉっ!」 ああ、イきそうだ。 俺は千聖の尻の肉をぐっと掴み、さらに激しく腰を前後に振った。 「あああああああイく、イくイくイイクイクイクぅぅっ!」 汗と愛液を撒き散らしながら仰け反る千聖。 彼女の直腸に大量の精子を撒き散らす。 掴んでいた手を離す。 脱力した千聖は自分が出した水たまりにべしゃりと倒れた。 「あ……あ……あ、は、あはは、……えへへ」 虚ろに笑う千聖を見ながら、俺の股間は再びそそりたった。 もっとだ。もっともっと侵して犯して壊してやる、この俺の『手』で。 < 『第三幕 一日婦警』につづく >
|