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20XX年。 少子高齢化により、人口の集約化が政策でおしすすめられてから数十年。 もはや人のいなくなった学校。 同窓会で、その学校に集まったのは、ある朝のことだった。 「ひさしぶりじゃんねー、みんな」 そう言ったのは、新橋芍薬(しんばし・しゃくやく)。 背の高い、きつそうな美人だ。 卒業以来性格が変わっていなければ、きついのは顔だけではないはずである。 「おっすー」 そう言って、なれなれしく女の肩を抱くのは、千葉長太郎(ちば・ちょうたろう)。 顔はとても整っているが、どことなく軽薄そうな雰囲気をまとっている。 「っていっても、おれとしーちゃんは、よく会ってるけどな」 「なんで?」 そう言うのは、木下喜一郎(きのした・きいちろう)。 優しそうな顔に、純粋な疑問が浮かんでいる。 「木下は、そういう噂ばなしとかにはうとかったからなぁ。俺の彼女なんだよ、しぃは」 「あたしたちもだよー」 そう言うのは、日笠ひまわり(ひがさ・ひまわり)。 三村光義(みむら・みつよし)の腕に、自分の腕をからめている。 小さな胸を、三村の腕に押し当てている。 ロリっぽい風貌は、その筋の人たちには受けそうである。 「はん、恋人ばっかりじゃねぇか」 荒っぽい品のない声を出すのは、矢井田山吹(やいだ・やまぶき)。 卒業前は不良といってもさしつかえなかったような女だ。 「よし、これでここを卒業したやつ、誰一人欠けることなく、全員そろったな。ま、とりあえず、昔使っていた教室に行こうぜー」 そう言う千葉の声に従って、みんなで教室に入る。 六人の黒髪が廊下を歩く。 昔は、髪を染めるのが流行ったときもあったようだが、ここしばらくは、黒髪が流行している。 日本人の多くは、黒髪が多いから、染める必要はあまりない。 「うわー、わたしたちが卒業したときのままだ!」 教室に一番最初に入った新橋が、よろこびの声をあげる。 「ここにいるみんなが、この学校の、最後の卒業生だもんね。本当に、卒業したときのまま、残ってるんだなあ。机とか椅子とか、卒業したときのまま処分しなくてよかったのかな? 本当にまったく変わってなくてうれしいけどさ」 次に入った喜一郎が、並んだ机を見て、しみじみと言う。 「あ、でも、教卓は撤去されてるよ」 「そうだね」 「あ?」 そのとき、ぽかん、とした顔で、千葉が黒板を見る。 次々に、他の人たちも、黒板を見る。 そこには、チョークで次のように書かれてあった。 魔女のゲームを始めましょう。 貴方がたは、魔女の名前を当てるか、この校舎から出ないかぎり、魔女の魔法から逃れることはできません。 貴方がたは魔女の魔法にかけられていますから、以下の掟を守らなくてはなりません。 ・出口のことを忘れ、認識することができない ・この校舎から出ることはできない 「なんだ、こりゃ?」 目の前で手を振ると、千葉は黒板の方をじっと見る。 黒板の文字以外のものは目に入っていないような感じだ。 「窓、開けるよ」 喜一郎が窓を開ける。 ぴたっ。 外に伸ばした手は、窓のあたりで止まる。 「うそ、だろ……」 喜一郎以外の五人も、窓を手に伸ばす。 みんなの手は、一定以上、窓の向こうにはいかない。 かんっ、かんっ! 黒板の方で音がして、六人が黒板の方を見る。 そこには、マグネットで止められた、紙が見えた。 「今の……マグネットで止める音?」 喜一郎がつぶやいて、六人が紙に何が書いてあるか近づく。 そこにはプリントアウトされたこんな文字が躍っていた。 魔女が木下喜一郎と矢井田山吹に命令する。 ・貴方がたは人形である。二人は、死なないような命令なら、どんなことだってする。十分経つと、この魔法は解ける。 「はぁ? ちょ、これって……」 新橋が途中で言葉を区切る。 なぜなら、喜一郎と矢井田が、無表情で直立不動していたからだ。 「み、右手をあげてみて」 新橋の言葉に、喜一郎と矢井田が、右手をあげる。 沈黙。 「えっ、これやばいって」 「すごくね? まずくね?」 興奮したような言葉が飛び交う。 「えーっ、じゃあ、じゃあ……木下くん、初体験はいつですか!」 どっ、と四人が下卑た笑い声をあげる。 「ちょ、やべーってひまわり、そりゃ」 「あー、でも聞いてみたいかも! かも!」 「ありません」 無表情で答える喜一郎。 おおー、と感嘆の声が起こる。 「じゃあ、じゃあ、童貞、ってことですかぁ?」 妙に甲高い声で、日笠が聞くと、無表情、無感動で、 「はい」 と喜一郎が答える。 「うわ、やべえ、マジで人形みたいじゃん」 「それなら、ちょっとそこでラジオ体操やってみてよ」 席が少ないので、教室の後ろは空いている。 喜一郎と矢井田は、そこでラジオ体操をはじめる。 だが、よく覚えていないのか、けっこうでたらめだ。 それが受けたのか、四人の爆笑が部屋に響く。 「やっ、やべええ! これやべええええ!!!」 「ら、ラジオ体操が、こ、こんなに面白くなるとか、ちょ、新橋、お前天才的な命令出したな!」 「あひゃひゃ、あー、ひまわりおなか痛いよー」 げらげらと笑ったあと、千葉がいやらしい笑みを浮かべて聞く。 「矢井田ぁ。お前、今日の下着の色は?」 「ちょ、やめなって」 「そうそう、かわいそうじゃん」 そう言いながらも、みんな止める気はないのか、顔には下賤な笑顔がはりついたままだ。 「白です」 「かわいいー!」 「うけるー!!」 「見てえなあ」 「ちょ、変態」 「彼女いるじゃん、わたしという!」 四人が笑う中で、まさに人形のように、二人は立っている。 「あー、わかった。じゃあ、二人とも、へそみせて」 「はい」 「わかりました」 うつろな目で、上着を少しめくる二人。 下着がちらりと見える。 「おー、これはそそるねぇ」 「いいねいいね!」 テンションがどんどん上がっていく。 「な、いいだろ、下着くらい、ちょっとさぁ」 「ちらっと見るだけ、ちらっと!」 わいわいと、楽しそうに騒ぐ中、矢井田が声をかける。 「あの、なにやってんの?」 「へ?」 「ほ?」 間抜けな声をあげて、千葉と三村の男二人が間抜けな声をあげる。 「あー、十分立ったってことか」 新橋が、後ろの貼ってあった紙を見ようと振り向いてそう言った。 残りの人も、そこの紙を見る。 だが、そこにはすでに別の紙が貼ってある。 魔女が貴方がたに命令する。 ・恋人同士が人前でセックスするのは、当たり前のことだし、むしろ積極的にしなければならないのが常識。どちらかがオーガズムを迎えると、この魔法は解ける。 「あー! もう、こんな大事なこと忘れてるなんて!」 日笠が大声で言う。 「ちょっと、早くセックス見てもらわなきゃダメだったじゃん! わたしたち、何してたんだろう」 「そうだよな、早いとこしないと」 「いいじゃん、そんなに急がなくても」 新橋もそう言うものの、てきぱきと服を脱いでいく。 「あっ、そんなに急がなくていいからね」 「別に減るもんじゃないから、ゆっくりやったら?」 喜一郎と矢井田が、急ぐカップル二組をなだめる。 「もー、ひまわりはこういうの、けっこう気にするんだから! 恋人同士が人前でセックスするのは、これ常識、当たり前! 当たり前のことができないのって、わたしけっこういやなんだからね!」 「人目を気にしすぎなんじゃないかなあ。自分のペースでやればいいと思うけど」 「木下くんは人目を気にしなさすぎだよ。ほら、おちんちん硬くなった? 早くいれて、二人に見てもらおうよ」 三村の勃起したペニスをしごきながら、ちょっと怒ったように日笠が言う。 「おう、これ使えや。同窓会のあとホテルで使おうと思ってよ」 千葉がコンドームを渡す。 「はぁ? 同窓会あとにホテルで? おいおい、三村さんは悲しいぜ、みんなに見てもらわなきゃだめだろーが」 「えっ……。あ、ああ、そうだった、あれ、なんで俺……」 「もー、そんな細かいことはどうでもいいから、わたしに入れて!」 新橋の言葉で、千葉が我に返る。 「あ、ああ、そうだな。どうでもいいか、そんなこと」 ぐいっ、と千葉が新橋に後ろから挿入する。 さらに、ぐいっと持ち上げる。 両足を抱えられて、ひろげられた状態の股間は、当然のようにペニスを飲み込む様子を観客に隠すところなく見せる。 「ほら、どう? わたしのおまんこに、彼氏のデカチンポずぼずぼしてるの、わかる?」 「うわあ、すごいねえ」 「いやらしい……肉がおちんちんにからみついて、離したくないみたい」 「ふふっ、でしょー? んんっ、か、彼氏のオチンポは、最高なんだから!」 「ちょっとちょっと、芍ちゃんだけじゃなくて、あたしのほうもみてー!」 彼氏の上で騎乗位で腰をふる日笠。 ぱんっ、ぱんっ、とリズミカルな音が聞こえる。 「ほらっ、ほらっ、すごいよっ、みんなに見られて気持ちいい〜っ♪」 「お、俺だって気持ちいいっ……」 「あたしの方だって、勃起チンポを、ひまわりおまんこが、しっかりくわえ込んでるんだから! ま、負けないもんっ!」 別に勝負ではないのに、観客の注意を集めようと多少むきになっているようだ。 「小さいからだなのに、よく跳ねるね」 「でも、小さいからだにくらべて、彼氏の体が大きいから、大人が子どもとセックスしてるみたいでちょっと背徳感……」 「いいのっ、ひまわりはもう大人だし、気持ちいいんだからっ、んんっ、んんっ」 見られて興奮したのか、二人はのぼりつめていく。 「い、いっしょにいってくれる?」 「も、もちろん!」 三村、日笠ペアが、ぎゅっと手をにぎりあい、高まっていく。 「あああっ、い、いくっ、いっちゃううううっ!!」 「で、でるっ!!」 がくっ、と糸が切れたように、二人は荒い息をつく。 「こ、こっちも限界だ!」 「あひゃああん! は、激しいよう! で、でも気持ちいいっ!」 「どこが気持ちいいんだ?」 「い、言えないっ、は、恥ずかしいよっ」 「みんなの前でセックスするのは当たり前なんだ! いやらしいことを言うのだって恥ずかしくないっ!」 「あ、そ、そうかっ……お、おまんこっ! おまんこが気持ちいいのっ! 彼氏のおちんちんがずんずん入ってきて気持ちいいのっ、おおっ、おおおおおっ!!」 「ぐ、ああっ……」 恥ずかしさからの解放とともに、この千葉・新橋のカップルも絶頂に至る。 そして。 「きゃああああああああああああああ!!」 「うおおおおおおおお!!!」 「いやああああああああああ!!!」 「なんなんだよ、マジなんなんだよ、これはあああああああああ!!!」 さっきまで、人形になった他人で遊んでいた時の余裕や楽しさはみじんも感じられない、純粋に恐怖の悲鳴だった。 「ちょっと、どういうことなのよ!」 「おいおい、マジかよ」 「信じらんない、さいってい……」 「くそっ、くそっ……」 我に返った四人が、軽いパニックを起こす。 だが、一番パニックになったのは、セックスしていた四人とはまったく別の人間だった。 「こ、こんなところにいられない! あ、あんたたちのだれかが魔女なんでしょ!! こんなの普通じゃない、魔法だよ! 魔女がいて、わたしたちを操ってるんだ!! このままだと、みんな魔女の操り人形にされちゃうんだ!!!」 急に矢井田が叫びだす。 観客ではあったが、先ほどの人形になっていたときのこと、そして今の常識が変えられてしまったこと、その記憶が残っていることで、恐怖が一気に噴き出したらしい。 がっ、と扉をあけて、あっという間に、となりの教室に入る。 がんっ、としまる扉にぶつかる。 矢井田がますますパニックを起こす。 「な、なんで閉まらないのよっ、このっ!」 次はしっかりとしめて、鍵をかける。 鍵といっても、単純なもので、あっさり壊せそうな代物だ。 だが、窓という窓、扉という扉を閉めて、部屋に閉じこもる。 「お、おい、山吹、どうしたんだよ?」 「開けて、ねえ、お願い!」 ガンガンガン! うるさい音がして、扉や窓が叩かれる。 服を着るのに時間がかかり、五人が外に来たときには、窓も扉も鍵がかけられていた。 矢井田は目をつぶって、いやいやをするように、まるで小さい女の子のようにおびえている。 「やめろ! お、お前らの中に魔女がいるんだろ! あたしじゃないんだ、部屋の中にいれば、絶対安全なんだ! ここにはあたし以外いないんだから! 変な命令の紙を見ることなんてないんだ!!」 くすすっ。 その笑い声が聞こえたのかどうか。 矢井田が黒板の方にふりむいた。 そこには、チョークで、 魔女が矢井田山吹に命令する。 ・貴方は、みんなの前に出て、自分の教室でストリップショーをする。オナニーして果てるまで終わらない。心が拒否しても体が勝手に動く。いつでも笑顔で楽しくやろう! そう、書かれてあった。 「い、いやああああああああああああああ!!」 絶叫が響き、一瞬、扉をはさんだ、矢井田のいる教室側と廊下側が無音になる。 が、すぐに、「どうしたんだ!」、「何があった」という声で満ちる。 がらっ。 扉を開けて、矢井田は先ほどいた教室に戻る。 「やだ、やだ、やだ、やだやだやだ……」 「お、おい、矢井田さん、一体、何があったんだ」 木下喜一郎が、矢井田に質問する。 「お願い……見ないで……さっきの、教室……」 とぎれとぎれの言葉を受けて、喜一郎は、さきほどの教室に戻っていく。 矢井田が教室に入ると、それにつれて他の人も入っていく。 矢井田が、自分の机と椅子に、もう一つ余っていた机と椅子を使って、なくなった教卓のかわりに、ちょっとしたステージを作る。 ゆっくりゆっくり、それに上って、みんなの前で腰をふる。 右、左、右、左。 くいっ、くいっ、と踊るように腰をふる様子は、なかなかさまになっている。 「ど、どうしたのよ、山吹……」 呆然としたように新橋が聞く。 「か、からだ、が、勝手に、う、動いて、違うのっ、これ、違うっ」 そう言いながらも、顔はこれ以上ないくらいの笑顔で、ひとつずつボタンをずらしていく。 そのとき、新橋が、あっ、と言って、黒板を指さす。 それにつられて、他の人たちも黒板を見る。 矢井田は、首をひねってそれを見て、絶望した表情を浮かべる。 魔女が命令する。 ・男はストリップショーを見ること。拒否権はなし。新橋と日笠は、二人の男がストリップを見ている間、お互いの彼氏にフェラをする。男にも女にも拒否権はない。 チョークで縦書きに書かれたその文字が、四人に、パニックを起こさせる。 「なっ、なによこれっ!!」 「やめろっ、芍薬っ、やめるんだ!」 千葉が叫ぶが、目はストリップショーにくぎ付けで、横目で三村のズボンを下ろす自分の恋人を眺めることしかできない。 それは三村も同様で、自分の恋人である日笠が、千葉のズボンをおろし、ストリップショーを見て軽く勃起してきたペニスを口にふくむのを見ることしかできない。 「わ、わたしだって、やりたくなんか―――ちゅ、んじゅ、んちゅ」 「いやっ、いやいやいやっ、いや―――れろ、えろっ、れろっ」 ぎこちないフェラ音が響く中、笑顔で矢井田がストリップを続ける。 右、左、右、左。 腰が振られるのに合わせて外されたボタンは、すっかり前をあらわにする。 白いブラジャーが、みんなの前に現れ、上着はどこか遠くへ投げ捨てられた。 「おいっ、みんな大丈夫か?」 喜一郎の声がする。 「は、入ってこないで! 今、してるところなのっ!」 笑顔で元気よくその言葉を吐く矢井田に、この教室に入ってくることを喜一郎は断念したようだ。 お尻をこちらにむけて、そのはりのある尻を強調しながら、スカートを脱ぐ。 むっちりとしたお尻が男たちに丸見えとなる。 気のせいでなければ、しっかりと男ふたりのペニスは、硬く、大きくなってしまったようだ。 「じゅ、じゅるるっ、じゅぷっ」 「じゅぷぷっ、じゅぷるるるっ、じゅるっ」 二人の女のフェラ音をBGMに、矢井田は、もう一度前を向いて、ブラジャーのホックをはずす。 そして、するりっ、とブラジャーを投げ捨て……そして手ブラで乳首を隠したまま、踊り続ける。 踊りが激しくなり、最高潮に達したとき、ばっ、と手を大きく広げ、おっぱいをおっぴろげる。 どうやら、ストリップの才能があるらしい、キレのある踊りだ。 そのままの勢いで、パンティも脱ぎ捨て、秘部をあらわにして、踊りだす。 いや、踊りじゃなくて、あれはオナニーだ。 クリトリスをこすって、顔を真っ赤にしながらオナニーしている。 「ふっ、ふあああっ、だめっ、みんなの前っ、だめええっ……!」 その恥ずかしさが、いつもよりも興奮させているのだろうか。 見る間にどんどんのぼりつめていく。 「お願い、見ないでっ、見ないで、ああっ、見ちゃだめ、だめだめ、だめだめだめ、だめえええええええええええええっ!!」 ぷしゅっ。 潮まで噴いて、大勢の前で絶頂する矢井田。 魔法の効果が切れたのか、がくりと簡易ステージの上にひざをつく。 「じゅるるうるるっ、じゅぷぷっ、じゅっぞぞぞぞぞぞおおおおお」 「れろれろれろっ、ぶちゅちゅちゅっ、じゅっぽぽぽぽおおおお」 ずいぶんとセックスに慣れているのか、二人の女は、激しい音をたてて吸い上げる。 二人の男は、どうやら限界を迎えたようだ。 「あっ、だめだっ、いくっ、いくううっ」 「う、うおおおっ、くそっ、くそおおっ」 びゅるるるるっ!! 元気よく、互いの友人の彼女に射精する二人。 だが、その顔には、罪悪感だけではなく、ある種の征服感もあるのは、きっと見間違いではあるまい。 二人の女が、ティッシュに、口に出された精液を吐き出しながら、呆然と床を見ている。 「あ、あのさ、入っても、大丈夫?」 静かになった教室に、喜一郎が声をかけた。 みんなを落ち着かせて、喜一郎がみんなを自分の席に座らせる。 机といすを持ちよって、給食の班のように机を合わせる。 「これ、使いたくない」 矢井田が、ぼそりと、自分がストリップに使った、ふたつの机とそれぞれの椅子を見る。 机の上にも、そしておそらく椅子にも、汚い愛液がこぼれおちていた。 「わかった、じゃあ、僕のを使いなよ」 喜一郎がゆずることで、自分自身だけ座る机といすがなくなり、一人だけで立ったまましゃべることになる。 他のみんなは、自分の机と椅子を持っているので、座ることもひじをついて休むこともできるが、喜一郎はそういうことができず輪の外で立つことになった。 「で、何があったの?」 「あの、書きこみが……」 新橋が、ゆっくりと指をさす。 「あれ? き、消えてる……いつの間に……」 「だれか、消した?」 喜一郎の声に、みんな沈黙する。 だが、そこには黒板消しで消したようなあとはある。 「その消えた文字って、教室に入ってきたときにあったの?」 「い、いや、なかったよ。だって、あんな目立つところにあるの、書いてあったら気づくよ。気づいたら急に出てきてて……」 「……ともかく、何があったのか、聞かせて」 手短に、みんなの説明を聞いて、喜一郎が考え込む。 「でも、おかしいよね。だって、矢井田さんのいた部屋は、密室だったわけだろ。僕ら五人は部屋の外にいたし、だれも入ってない」 「か、鍵もかけた……なのに……」 ふるえる声で、矢井田が言う。 「なのに、確かにあそこにはチョークで書かれた文字があった。危ないと思って消してきたけど……入ったときにもあったの?」 「な、なかったよ! あったら、すぐにストリップしたはずだし……」 うーん、とみんなが考え込む。 「とりあえず、外に助けを呼ぼう。なんか変なことにまきまれてるって言って、助けに来てもらおうよ。なぜか、ここから僕たちは出られないみたいだし」 「そ、それが最善ね」 新橋が、そう言って、六人は、ほっと一息ついた。 ひらり。 そのとき、合わされた中心に、紙が落ちた。 反射的に、みんな紙を見る。 そこにはプリントアウトされた文字で、こう書かれてあった。 魔女が命令する。 ・新橋芍薬と三村光義、千葉長太郎と日笠ひまわりは、恋人同士であることを「思い出す」 ・恋人同士はとてもセックスがしたくなり、我慢できない。他のカップルに見せつけたい気持ちでいっぱいになる。このセックスは人生で一番気持ちよく、一生忘れることができない。 ・この魔法は、四人全員がオーガズムを迎えるまで解けない 「くっ! しまった!」 「ど、どうしよう、どうしようっ!!」 喜一郎と矢井田が、あせった声をあげる。 「光義、だーいすきっ!!」 新橋が、すぐに服を脱いで、千葉と日笠に見せつけるように舌をからめてキスをする。 「んじゅっ、ちゅっ、ちゅるっ、んー、ちゅちゅっ、ちゅーっ」 品のない音をたてて、じゅるじゅると唾液をすする。 「んーっ、こーんなに気持ちいいキス、はじめて♪」 日笠と千葉も負けてはいない。 「じゅるるっ、じゅっ、じゅるるるっ、んふっ、んはぁっ、んじゅうううっ」 日笠と千葉も、見せつけるようにキスをして、からめあう舌を相手カップルに見せつける。 そのまま、唾液がたっぷり入った口で、日笠が千葉のペニスをくわえる。 「おおっ……こりゃ、やべえな」 「じゅっ、じゅっ、じゅるっ、じゅるるるっ、じゅぽぽぽっ、じゅるるるっ!!」 「やべえ、今まで経験したフェラん中じゃ一番きもちいわ……」 それに対抗して、三村が、新橋の股間に口をつける。 「あはあっ! んっ、いいよっ、おまんこ舐めるの上手っ……ふふっ、見てよ、わたしの彼氏、彼女に対する奉仕ってもんがわかってるんだわ!! んん〜っ、ちゃんと前戯できる彼氏って最高っ、よーく見なさいよねっ!!」 「お、おい、二人とも、やめるんだ!!」 「そ、そうだよ、操られているだけなんだから!!」 喜一郎、矢井田両名の叫びは、届かない。 むしろ。 「もーう、邪魔しないでよね!} 「そうだよ、俺たちは自分の恋人とセックスするのが我慢できねえんだよ!」 「ちがうって、お互いの恋人とセックスしてるんだ」 「そ、そうだよ、ひまわりちゃんの本当の彼氏は、こっち」 「はあ〜? 三村くんが恋人なわけないじゃん! そんな記憶ないし! わたしの彼氏は長太郎だもん! ねー♪」 「もちろんさ。世界中で一番愛してるよ」 「きゃー、はずかしいー! でも大好き! ハメて!!」 にゅるっ、とコンドームにつつまれたペニスが、日笠の中に入る。 「えっ、う、そ、あ、あ、あああああああああああああああああああああああ!!! やばい、やばいなにこれ、やばいいっ、やああああああああああ!!!」 絶叫する日笠に、ぎょっとしたように喜一郎と矢井田が固まる。 「おまんこ、おまんこ気持ちいいいいいいいいいいいいい!!! ありえない、なにこれっ、あああああああっ!!」 「お、俺もやべええええええええええ!! す、すぐにいっちまいそうだ、お、おおおおおおおおおっ!!」 それを見ていた新橋、三村ペアも、さっそく試してみる。 二人で正常位になって、キスをしながら挿入するが、 「んんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!! ぷふぁ、ふぁあああああああああああああ!!!」 「き、気持ちよすぎ、やべええ、腰、腰がとまんねええええええええええ!!!」 「ああああ、おまんこの奥に、きゅうううううう! ってくるっ、くるっちゃうっくるうっ、くるうううううううううううううううう!!!!!」 やばいドラッグでもキメてるんじゃないかというイキっぷりに、喜一郎と矢井田は絶句した。 「あふううううう!! おほおおおおおお!!! いく、いくうううううう!!!」 「わ、わたしたちも、いくっ、がまんむりっ、むりいいいいいいいいいい!!! 一生で一番きもちいいよおおおお!!!!」 そして、四人が一斉に限界を突破する。 「いっくうううううううううううううううううううううううううううううううううう!!!!!!!!!!!!!!!!!」 そして、静寂が満ちた後。 「ちょ、ちょっとひまわり。なに、あんた人の彼氏に手ぇ出してんのよ!」 「はああああ!? それ、こっちのセリフでしょ?」 「三村ぁ、お前なあああ!!」 「てめえが言えた義理じゃねえだろうが、ああ!!」 怒声が響いた。 「お前もお前だ、ひまわり! あんな声あげやがって」 「なに言ってんの、あんただって楽しんでたくせに!」 「今までにないくらい気持ちいいとか、くそっ!!」 「っていうか、木下、お前あやしくね? お前ひとりだけ、大したことしてないじゃねーか」 「人形になっただろ」 喜一郎が、怒りの矛先を向けられる。 「あんなん、俺たちにくらべれば大したことじゃねーだろ!!」 「勝手な言い分だな。それに、矢井田さんが魔法にかけられたとき、僕たち五人にはアリバイがあるじゃないか」 「――じゃあ、あんたが魔女じゃないの? っていうか、魔女って女だし」 今度は、矢井田が責められる。 「な、なんで、わたし……」 「だって、あんた以外、あの教室にいなかったじゃん!! 狂言なんじゃないの!!!」 「じゃ、じゃあいつ黒板に、私のストリップを見ろなんて書けた!? 無理でしょ! 操られてずっと机の上でおどってたんだから」 「確かに、教室に矢井田さんが戻ってきてストリップをはじめた時点では書いてなかったって言われてたしね」 冷静な一言で、怒鳴っていた人たちも、落ち着きを取り戻す。 そして、黒板のほうを見に行った喜一郎が、黒板のチョークがおいてあるあたりで、何かを拾い上げる。 髪の毛。茶色の。 何かを思う間もなく、喜一郎が叫んだ。 「魔女がだれだかわかったぞ!」 【ささやかながら、読者への挑戦】 作者は、読者のみなさんに犯人に至る必要にして十分な証拠を持っていると自信を持って言うことはできません。 しかし、作者は、ここに、魔女が使った魔法は作中で描写されているものだけ(「・」で箇条書きになった箇所)だと断言します。 それ以外は、現実世界と同じ法則が働いています。魔女の魔法以外の反則技、つまり秘密の通路による密室破りや新手の魔法や超能力はありません。 これらの前提を踏まえて、物語をよく読めば、いったいどういう人物が魔女であるのかまでは、わかると思います。 こういう推理物を書くのも初めてですし、論理に不備がある可能性もありますが。 また、さらに知恵を絞れば、魔女の名前さえ、全部わかるに足る論理的証拠はありませんが、半分はある程度の自信をもって推理できるのではないでしょうか。 もしよろしければ、「犯人当て」を楽しんでいただければと思います。では、解答編でまたお会いしましょう。
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