アクティブラーニングactive learningとは、直訳すれば「能動的学習」。
「従来の講義形式の授業は一方的で学生は受け身になり、自発的に勉強しないからけしからん、学生が能動的、主体的に学習するようにしろ」ということ。
では具体的にどうするか、というと、グループワークとか、討論・ディベートを取り入れることが推奨される。
しかし、結論をいうと、学生の側に、勉強したい、学びたい、という動機付けがなければ、教え方をどういじくりまわそうが、効果はない。教授法の問題ではないし、皮相的な「授業テクニック」の問題ではないのだ。
昨今の多くの学生は、勉強したいのではなく、単位がほしいだけで、バイトの時間に合わせて授業を選択する。
そういう学生が大多数を占める授業の中では、討論をしようにも、学生の発言が出てこなくて、討論が成立しない。教師が何を問いかけても「わかりませ〜〜ん」、「それでいいと思いま〜〜す」では、討論など不可能だ。
クラスをいくつかのグループに分け、なにか課題をやらせたり、議論させても、同じこと。たいていの場合、無為に時間が過ぎるだけ。見るに見かねて教師がひとつのグループに助言すると、その間、他のグループは雑談したり、黙ってスマホを見ていたり、ということになりがち。要領のいい学生がリーダーとなれば、無難に形だけ課題をまとめて終わり。
従来型の講義の場合は、適度な進度で進めれば、意欲のある学生はそれなりに考えるし、無駄な時間は発生しない。たとえ、そういう学生がひとりやふたりでも、意欲のない学生に足を引っ張られることはない。
なんのことはない、無気力で積極性に乏しい平均的学生を対象にする限り、「一方通行」と批判される従来型講義で学ぶことができない学生は、他の方法でも学ぶことはできない。逆に、アクティブラーニングで積極的に学べる学生は、従来型講義でも自分なりに考えて能動的に学ぶことができる。つまり、勉強しない学生を勉強させるためにアクティブラーニングを導入する、というのは本末転倒した話なのだ。
このアクティブラーニングに関して、日本の大学での失敗事例をまとめた報告がある。名古屋商科大学の下記ページからPDFがダウンロードできる。
・アクティブラーニング失敗事例ハンドブック【公刊版】
http://www.nucba.ac.jp/research/community/entry-14562.html
アクティブラーニングを導入・推進しようとしている大学関係者に一読をお薦めする。
「学問に王道なし」で、学習には地味な努力、謙虚さ、真剣さが必要。そういう基本をおろそかにして、学生に迎合するような、小手先の「授業改善」など、かえって弊害をもたらすだけだ。
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