[新安保政策 法案の合憲見解] 強弁するべきではない
( 6/11 付 )

 多くの憲法学者の違憲との指摘に対し、説得力をもった反論とは到底言えない。

 集団的自衛権行使を可能とする、安全保障関連法案の合憲性をめぐる政府見解である。なぜ合憲かについて、従来の論理構成を基本的になぞっている。

 国会で参考人の憲法学者全員が違憲とした意味の重さを、正面から受け止めたとは思えない。もはや強弁するべきではない。

 そもそも憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使容認へかじを切った昨年7月の閣議決定に無理があった。

 政府、与党が解釈変更の土台としたのは1972年の政府見解だ。「やむを得ない場合に必要最小限度の自衛の措置を認める」としたが、集団的自衛権の行使は許されないと結論付けていた。

 安倍政権はこれを読み替え、武力行使の新3要件という新たな基準をクリアすれば、集団的自衛権は認められるという真逆の結論を導き出した。

 これまでの法案審議で明らかになったのは、つじつま合わせの横行だ。法案の土台が揺らいでいるからに他ならない。

 今回の政府見解も新3要件に関し、「ある程度抽象的な表現は避けられない」と説明している。

 だが、新3要件を「武力行使の明確かつ厳格な歯止め」と強調したのは安倍晋三首相だったはずだ。矛盾していると言わざるを得ない。

 拡大解釈の余地を残す法案の危うさが図らずも露呈した形だ。参考人の一人、小林節慶応大名誉教授は新3要件について「政治権力にフリーハンドを与えるように要求している」と批判する。

 憲法解釈を変更した昨年の閣議決定に関する中谷元・防衛相の発言も見逃せない。

 中谷氏は5日の衆院平和安全法制特別委員会で「憲法をいかに法案に適合させていけばいいのか、という議論を踏まえた」と答弁した。最高法規の憲法を都合よく解釈したとも受け取れる。

 安保法制ありきという政権の姿勢を反映したものだろう。特別委で答弁の意図をただされた中谷氏は、「撤回したい」と述べた。

 政府側は、学者の判断は絶対でないとアピールするのに懸命だ。足元の自民党でも、法案への賛否をめぐって総務会が荒れた。

 国のかたちにかかわる重大事だ。法案撤回を含めて議論をやり直すべきである。野党もこれ以上の強弁を許してはならない。


 
2015/06 2015/05 2015/04 2015/03 2015/02 2015/01 2014/12
戻る ]

PR特集

奄美なひととき

奄美に心奪われた執筆陣が、奄美群島の魅力を紹介するコラム。「奄美なひととき」を収めた壁紙もプレゼント!

南日本新聞データベース

掲載記事96万件。記事の切り抜きイメージをPDFで表示、気になる記事をスクラップ。お申し込み受け付け中!

hot!注目!いちおし!
サッカー女子ワールドカップ
373写真館 県高校総体
ガンバレ!鹿児島ユナイテッドFC応援サイト
ニュース特集 川内原発
Felia! フェリア
薩摩剣士隼人 4コマ劇場

ニュースランキング

センター試験特集
全国学力テスト
九州未来アワード
第3回地域再生大賞
Facebookもチェック!
data-ad-region="373">

373news.comに掲載しているコンテンツの著作権は、南日本新聞社または各情報提供者にあります。2次利用の可否は読者センターまでお問い合わせください。
Copyright Minami-Nippon Shimbun. All rights reserved.