出産を理由に議会を欠席できるよう、市町村議会が規則を改めるかもしれない。労働基準法が定める産休は特別職の議員には適用されないが、女性が働きやすい議会とするためには欠かせない。
雇用関係にある労働者と違い、特別職の議員には労働基準法で定める産休は適用されない。国会では参議院が二〇〇〇年に橋本聖子議員の出産をきっかけに規則を改め、欠席を認める理由に「出産」を加えた。
〇一年に衆議院も導入し、〇二年には都道府県議会も公務や病気、事故と同様に出産を欠席理由として明記した。
しかし、市町村議会では一部を除き、出産を欠席理由に認める規定はなく、「事故」や「病気」として届けられていた。背景には「有権者の代表である議員が出産のために議会を休むのは無責任」「出産するなら議員を辞職すべきではないか」という空気があるためだった。
先月、全国の市議会議長会と町村議会議長会がようやく「標準規則」を改め、欠席理由の中に「出産」を明文化した。標準規則は各市町村議会が会議規則を改正する際の参考にするもので、この改正により今後、全国の市町村議会で見直しが行われる見通しだ。
地方議会の女性の割合は一割とまだまだ低い。市民が暮らしやすい制度をつくる議会が、一般社会で当たり前になっている産休さえないのでは、産みたくても産めないし、子育て世代は議員になること自体をためらってしまう。
出産は、自分で決める大切な権利である。一九九四年の国際人口開発会議以来、産むか産まないか、いつ産むかは、自己決定権「性と生殖の健康と権利(リプロダクティブ・ヘルス、ライツ)」であり、基本的人権の一つだという考え方が国際標準となっている。日本もこの行動綱領の採択に加わり、政府の男女共同参画基本計画にも決められている。
出産で休む議員がいる場合も議会運営に支障がないよう、制度を整えていきたい。北欧などで導入されている代理投票制度はその一つだろう。
東京都北区議会では今春、聴覚障害のある女性議員が誕生したのをきっかけに議場のバリアフリー化を進めた。産休に限らず、育児休暇や介護休暇も当然認められる権利のはずだ。子育てや介護を抱える人、障害のある人など、多様な人が不自由なく活動できる開かれた議会にしていきたい。
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