重傷交通事故:「信号機に不備」被告無罪+改善求める判決

毎日新聞 2015年06月10日 21時02分

 安全確認を怠り、対向車の男性に重傷を負わせる交通事故を起こしたとして自動車運転過失傷害罪に問われた男性被告(47)に対し、神戸地裁(平島正道裁判長)は10日、「信号機に交通整理の不備があり、事故当事者の刑事責任に転嫁するのは相当でない」と無罪(求刑・禁錮8月)を言い渡した。さらに「本件交差点の信号周期は速やかに改めるべきだ」と関係機関に早期の改善も促した。

 判決によると、現場は神戸市東灘区魚崎浜町の市道で、南北の道路から東と南東方向にそれぞれ枝分かれする変形交差点。被告は2013年7月24日午前10時16分ごろ、大型トラックを北向きに運転し、南東に右折。被害に遭った男性の軽貨物乗用車は西向きから南に左折し、出合い頭に衝突、男性は股関節骨折の重傷を負った。

 事故当時、被告側の信号は青、男性側は赤だが、左折可能の矢印が表示されていた。同様の表示が7秒間続く信号周期だった。平島裁判長は、南東の道路の存在が設定の際に見落とされていた可能性にも触れ「双方の走行を同時に可とする交通規制が相当ではないことは明らか」と不備を指摘した。

 検察側は「右折直前に進行方向を見て安全を確認する義務がある」と主張したが、判決では、右折する車の運転手は、東から左折する車の対面信号は赤と考え、左折してくるのを想定していないとして「信号周期に対する信頼を超えた自動車運転上の注意義務を課すのは相当でない」と判断した。

 兵庫県警交通規制課によると、現在も信号周期は同じという。今後の対応については「コメントできない」としている。

 神戸地検の吉池浩嗣(ひろつぐ)次席検事は、「意外な判決で驚いている。判決内容を精査した上、上級庁と控訴の要否について協議したい」とのコメントを出した。【神足俊輔】

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