韓国大統領:訪米延期 外相は訪日検討、流動的に

毎日新聞 2015年06月10日 21時40分

 【ソウル大貫智子】韓国で中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスの感染が拡大しているのを受け、青瓦台(大統領府)は10日、朴槿恵(パク・クネ)大統領の14日からの訪米延期を発表した。MERS対応を巡り、政府への批判が強まっており、感染拡大防止に全力を挙げる姿勢を示した。韓国政府は尹炳世(ユン・ビョンセ)外相の初訪日を検討中だが、突然の朴大統領の訪米延期で、事態が流動化する可能性も指摘されている。

 青瓦台の金聲宇(キム・ソンウ)広報首席秘書官は10日、「朴大統領はMERSの早期終息など国民の安全に尽くすため、訪米を延期すると決めた」と述べた。

 韓国内でのMERS患者数は10日現在、死者9人を含む計108人に達し、サウジアラビアに次ぐ世界2位の多さ。韓国政府は週内にも終息するとの見通しを示しているが、感染者は増加しており政府批判や不信感が高まっている。

 このため、野党や与党・セヌリ党から朴大統領の訪米を延期すべきだとの声が続出。民間世論調査機関・リアルメーターの10日の発表によると「訪米を延期すべきだ」との意見が53.2%と過半数を占め「予定通り訪米すべきだ」の39.2%を大きく上回った。青瓦台は世論の反発を恐れ延期を決めたとみられる。

 ただ、米韓同盟を重視する保守層からは、16日の首脳会談は予定通り行うべきだったとの指摘が出ている。金秘書官は、訪米延期決定を前に米側に理解を求めたと明らかにし「米側とグローバルパートナーシップを強化するための努力を続ける」と強調。早期に日程を調整するとした。

 韓国政府は、日韓関係の改善を促す米国を朴大統領が訪問することを念頭に尹外相の訪日を検討。22日に在日韓国大使館が東京で開く日韓国交正常化50周年の記念行事に出席し、岸田文雄外相との会談も調整中だった。日韓外交筋は「朴大統領の訪米延期は一つの不安定要素だ」と、調整が不発に終わる事態を懸念し始めた。

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