最近の輸出減少も円安など為替面だけの問題ではないというのが李総裁の見方だ。李総裁は最近、金融業界関係者に「輸出減少の要因は、中国の景気減速など世界需要の減少だ。輸出は韓国だけ減少するわけではない。1ー4月の韓国の輸出は金額ベースで4%減少したが、同じ期間に日本の輸出は6%減少した」と指摘したという。ただ、主要先進国は、輸出依存度(GDPに占める輸出の割合)が10%台なのにに対し、韓国は40%台だ。国家経済が輸出に依存する割合が高く、輸出不振が経済に与える影響がはるかに大きいという点は、李総裁も認めている。円安の影響がさらに強まると判断すれば、韓銀は利下げカードを切る可能性がある。
■家計債務問題が足かせ
李総裁が利下げというカードを切る際、家計負債問題が最大の悩みだ。李総裁は最近、韓銀幹部に対し、「利下げで家計債務が最近3カ月で10兆ウォンずつ増え、1100兆ウォンを超えた。このままでは危険を伴う」と語ったとされる。韓銀は政府が補正予算編成などの拡張的な財政政策を通じ、景気浮揚の主役を担うことを期待している。韓銀関係者は「『金利を1、2回引き下げれば、経済が何%成長する」といった主張が政府から聞かれるが、政府から追加補正予算で資金を供給しても成長率を引き上げることができる。追加補正予算だけに政府負債の増加などの副作用があって、利下げは副作用がない万能薬だというのか」と問い返した。
米国が今年中に利上げに踏み切る点を明確にしたことも李総裁の悩みの種だ。李総裁は最近、私的な席で「米国の景気は改善している。年内であれば、12月より9月に動く可能性が高いとみている」と話したとされる。 5日(現地時間)に発表された米国の5月の雇用統計は、新規就業者(農業を除く)が予想よりも大幅に増え、28万人に達するなど回復傾向を見せている。米国は年内に利下げを行う余地は拡大した。米国が利上げを実施すれば、韓国との対外金利差が縮小され、韓国債券市場から外国人の投資が大規模に離脱する可能性がある。韓銀が利下げに慎重にならざるを得ない理由だ。