「すがすがしい気持ちになってもらえれば…」と話す原田眞人監督=大阪ステーションシティシネマ |
大泉洋=(C)2015「駆込み女と駆出し男」製作委員会 |
井上ひさしの「東慶寺花だより」を原案にした映画「駆込み女と駆出し男」(松竹配給)が大阪ステーションシティシネマなどで上映されている。「女たちの連帯ありき」の女性映画で、「時代劇へのオマージュ」をそれに重ねたという原田眞人監督に話を聞いた。
−時代劇初挑戦になった。
僕らの世代は、東映時代劇で育っている。小学3年生の時に撮影所がある京都・太秦に行って興奮した覚えがある。当時、深田金之助監督らの作品や大川橋蔵主演のチャンバラ映画をたくさん見た。黒澤明監督の「どん底」「赤ひげ」は忘れがたく、時代劇を撮るとすればそれを外すことはできない。大映で溝口健二監督が撮った「祇園囃子」の木暮実千代、若尾文子の共演も印象深く、今回の映画の満島ひかりと戸田恵梨香はそれを意識している。
−江戸時代に生きる庶民の女性を描いている。
唐物問屋の堀切屋三郎衛門(堤真一)の愛人のお吟(満島)と、鉄練り(今の鉄工所)主人・重蔵(武田真治)の嫁で職人でもあるじょご(戸田)がヒロインで、夫と離縁したいと思い、縁切り寺といわれる幕府公認の東慶寺にたまたま一緒に駆け込む。そこに逆境にあった女性たちが大勢いるが、それは今を生きる女性にもつながるところがあり、初めに「女たちの連帯ありき」の女性映画にしたいと思った。
−満島、戸田の魅力は?
満島はコテコテの現代口語芝居が得意で、悲しい運命を背負ったお吟をあだっぽく演じてくれた。“お歯黒”は「幕末太陽伝」の左幸子がヒントで彼女にやってもらったが、とても色気があってよかった。戸田は自然児で「眼力」がある女優。初め虐げられていたじょごが、東慶寺に入って生活する中でだんだん強く成長する姿を見事に演じてくれた。
−女たちの世話をする医師見習の信次郎に大泉洋。
彼はバラエティーのイメージがあったが、俳優としても天才的でとても真面目に信次郎を演じてくれた。医師としてまだ卵で、戯作者としても修業中の信次郎は、天保の改革の時代は差別(弾圧)されている身分で、この役は「赤ひげ」の見習い医師の加山雄三に通じるものがあり、僕自身も戯作者としてその役に重なっている。
−井上原案についてはどのように。
駆け込み女の15のエピソードをいくつか合体させて人物を作ったのと、戯作者が主人公という設定を使わせていただいた。信次郎が時の水野(忠邦)政治に反発し、小唄をブツブツ唱えているシーンなどはそこからイメージしているが、大泉さんは長いセリフと同時に細かく自然な芝居で見せてくれた。
−遊廓(ゆうかく)から逃げた女郎を追って来たやくざ(橋本じゅん)と信次郎の掛け合いが面白い。
あそこも長いセリフで、橋本、大泉が対決する。まるで舞台劇みたいだけど、それを狙って長回しで2台のカメラで撮った。リハーサルは何回もやったがそのたびにみずみずしいタンカの応酬で、大泉さんはNGのシーンまでよかった。実際、NGシーンを本編に使っているところも。(笑)
−「赤ひげ」に出演していた山崎努さんを起用したのは?
「赤ひげ」の山崎努さんと桑野みゆきさんのエピソードが一番好きで、山崎さんにはぜひ出演してほしいとお願いした。「里見八犬伝」の戯作者・滝沢馬琴の役で、映画を締めてくださって作品に厚みが出たと感謝している。
−姫路の書寫山圓教寺がロケ場所になっている。
撮影はほとんど関西のお寺や街道で行ったが、圓教寺はそのメーン。僕は監督として時代劇は初めてだが、一度、俳優として米映画「ラスト・サムライ」に出演している。その時に圓教寺ロケがあり、ここに来てそのたたずまい、歴史的空間に圧倒され、ここで時代劇を撮ると心に決めていた。今回の映画は圓教寺ありきだったかもしれない。
−チャンバラシーンもここで撮った。
「赤ひげ」は人間ドラマでチャンバラシーンは少ないのだが、一カ所、赤ひげが大勢を相手に格闘するシーンがあって、それがとても迫力があった。そこで、道場主の夫に追われている妻・ゆう(内田理名)の立ち回りシーンを、圓教寺をバックに撮った。じょごの戸田も登場するチャンバラシーンを見てください。
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