先進七カ国(G7)首脳会議(サミット)は、中国やロシアが進める力による「現状変更の試み」を非難する首脳宣言を採択した。“当事国”の中ロへも対話を広げ、具体的な成果につなげたい。
G7は、日本と米英仏独伊カナダ。ドイツでの首脳宣言では、中国による南シナ海での岩礁埋め立てに強く反対。ウクライナ停戦合意の完全履行がない限り、対ロシア制裁を継続するとした。
しかし、G7のメンバーではない中ロ首脳は会議の場にはおらず、宣言で指摘された事態が直ちに改善される見通しはない。
G7は二〇〇三年以降ロシアの全面参加でG8となったが、ウクライナのクリミア半島を編入したロシアへの制裁で昨年、G8参加停止が決定された。
一時、サミット拡大会合に参加していた中国も最近、G7と距離を置いている。
G7首脳宣言に対し、中ロは早くも反発や不満を示している。
今後もロシアがウクライナでの強硬姿勢を改める可能性は低く、G8復帰は当面困難で、中国のG7拡大会合参加も難しいだろう。しかし、問題解決を話し合うための対話の扉は開いておきたい。今年二月、メルケル独首相の奔走で、ロシアのプーチン大統領も参加したウクライナ停戦合意交渉が、モデルケースになるだろう。
サミットでは、テロとの戦いを優先課題とし、過激派組織「イスラム国」(IS)壊滅を目指す方針も確認した。IS対策にはシリアへの影響力が強いロシアの協力も必要だ。対テロ、中東問題でも国連安全保障理事会常任理事国である中ロの協調を取り付けたい。中ロと欧米の主要六カ国と、イランとの協議で四月、核開発大幅制限などの「枠組み」で合意する成果を挙げた先例もある。
中ロをめぐって、G7各国のスタンスはさまざまだ。日本は中国とは尖閣諸島、ロシアとは北方領土の領土問題を抱える。中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に日米カナダは不参加だが、英仏独伊は創設メンバーに入った。欧州ではロシアのG8復帰を望む声もあるのに対し、米国は慎重だ。
このG7各国間の姿勢の違いが逆に、中ロへの多彩なアプローチとチャンネルづくりにつながるのではないか。
中ロとの対立を強調するばかりでなく、個別の首脳会談などで意思の疎通を保ちたい。G7首脳宣言を将来につなげたい。
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