社説:地球温暖化対策 G7の責任はより重い

毎日新聞 2015年06月10日 02時31分

 日米欧の主要7カ国(G7)首脳会議は温室効果ガスを「世界全体で2050年までに10年比で40〜70%の幅の上方で削減する」長期目標で一致し、首脳宣言に盛り込んだ。年末にパリで開かれる国連の気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で、すべての国が参加する新枠組みに合意する決意も確認した。

 先進国が足並みをそろえ、パリでの合意を主導する姿勢を示したことは評価できる。交渉を加速し、世界の排出削減対策を強化するためにG7が果たすべき責任は重い。

 地球温暖化の深刻な被害を防ぐため、国際交渉では地球の平均気温上昇を2度未満にすることが目標となっている。首脳宣言の長期目標は、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が示した、2度未満の実現に必要なシナリオに沿う。

 G7はこれまで「50年に世界全体で半減、先進国全体で80%減」との目標を掲げてきたが、基準年を明示するのは初めてだ。科学的根拠のある数値を示すことで、途上国にも温暖化対策を促す形になっている。

 京都議定書は先進国に温室効果ガスの排出削減を義務付けたが、途上国の排出量が増えており、世界全体で削減に取り組まなければ効果は望めない。このため新枠組みでは、すべての国が20年以降の排出削減目標を自主的に掲げ、温暖化対策に取り組むことを目指している。しかし、交渉の行方は予断を許さない。

 先進国は温暖化対策のため、20年までに官民合わせて年1000億ドル(12兆5000億円)を途上国に拠出する約束をしていた。首脳宣言はこの約束を確認したが、実現の道筋までは示せなかった。

 COP21に先立ち、欧州連合(EU)は30年に1990年比で40%以上削減、米国は25年に05年比で26〜28%削減という中期目標を国連に提出した。これに対し途上国は、温暖化は先進国の歴史的な責任が大きいと主張している。だが、中国やインドなどの排出大国も地球の未来に責任を負うべきで、意欲的な削減目標を提出するようG7で働きかけを強めてもらいたい。

 安倍晋三首相は会議で、30年に13年比で26%削減する日本の新目標案を説明した。これでG7の目標が出そろった。13年を基準に比較すれば欧米と遜色なく、各国首脳からも一定の評価を得たという。だが、EUには1人当たり排出量で劣り、米国より毎年の削減比率は緩やかだ。

 それでも、目標の達成は容易ではない。国民の理解を得つつ、省エネ対策の強化や再生可能エネルギーの導入拡大に努める必要がある。具体的な施策を早期に策定し、実行に移すべきだ。

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