【動画】オオグソクムシせんべいが人気=杉本崇撮影
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 隠し味は、あの深海生物?! 静岡県焼津市の漁師の親子が発案したオオグソクムシの粉末入りせんべいが評判になっている。4月下旬の発売から1カ月も経たないうちに3500箱を完売。夏休みに向けて増産中だ。

 オオグソクムシは全長10~15センチほどの日本最大のダンゴムシの仲間。武士が身に着けた具足(ぐそく)にちなんで名付けられたとされる。焼津市に面する駿河湾など本州中部以南の水深150~600メートルほどの海底に生息する。最近は深海生物ブームの中、「きもかわいい」と人気だが、一般には食用にされていない。

 粉末入りせんべいを発案したのは長谷川久志さん(65)と一孝さん(40)親子。久志さんは40年近く、ほかの漁師と競合しない深海ザメやヌタウナギなど深海魚を専門に漁をしてきた。ヌタウナギ用の筒状の仕掛けにはオオグソクムシがよく入るという。

 8年ほど前にテレビ番組の取材を受けた際、仕掛けに入ったオオグソクムシを指さした出演者に「食べられますか」と尋ねられ、食べる羽目に。素焼きにして恐る恐る口にすると、エビやカニに似た甲殻類特有のうまみがあった。

 焼津と言えばマグロやカツオのイメージが強い。「多様な深海生物がいるのに、ほとんど知られていない」と感じていた一孝さんが思いついたのが、見た目がグロテスクでなく、初めての人も食べやすい粉末入りせんべい。焼津市の水産加工業者や隣の藤枝市の菓子店の協力で完成させた。

 12枚入り1500円で、東京・秋葉原のアンテナショップや静岡県の高速道路のサービスエリアで4月29日から売り出すと、試し買いした観光客らの間で「香ばしい」と評判になった。

 一孝さんは「せんべいは最初の一手。焼津と言えば深海生物のまちと言われるぐらいになるように、深海生物を使った街おこしを頑張りたい」と話す。(杉本崇)