安保法案:長谷部氏、政府見解を批判…違憲論高まる

毎日新聞 2015年06月09日 22時07分(最終更新 06月10日 01時29分)

民主党控室を訪れ、憲法審査会の参考人に関する政府見解の説明に臨む横畠裕介内閣法制局長官(奥左)ら=国会内で2015年6月9日午後5時46分、藤井太郎撮影
民主党控室を訪れ、憲法審査会の参考人に関する政府見解の説明に臨む横畠裕介内閣法制局長官(奥左)ら=国会内で2015年6月9日午後5時46分、藤井太郎撮影

 自民党推薦の参考人として国会で安全保障関連法案を違憲だと指摘した長谷部恭男早稲田大大学院教授が9日、毎日新聞の取材に応じ、同日公表された政府見解に対し「(関連法案の)閣議決定の繰り返しで反論というものではない。これ以上説得できる論理がまったくないと思った」と厳しく批判した。政府は火消しに必死だが、憲法学者や国民の間で「安保法制は違憲だ」との批判が高まっている。【樋岡徹也、日下部聡、川崎桂吾】

 長谷部氏が指摘した舞台は4日の衆院憲法審査会。他の参考人2人と合わせて憲法学者3人全員が安保法制を批判し、違憲論が大きく盛り上がった。

 長谷部氏は取材に「従来の政府見解の基本的枠組みでは説明がつかず、法的安定性が損なわれている」と強調。「(集団的自衛権で武力行使を認める要件を)一見限定するかのような(法案の)文言と実際に政府がやろうとしていることの間に、常識的には理解できない巨大な距離がある」と不信を表明した。

 また、長谷部氏は9日夜、TBSラジオの番組「荻上チキ・Session−22」に出演。高村正彦・自民党副総裁の「憲法学者はどうしても憲法9条の字面に拘泥する」という発言について、「憲法に拘泥しないで政治権力を使いたいと言っているのか。大変怖い話」と述べた。また、違憲でないという著名な憲法学者も多いとする菅義偉官房長官の発言には、「本当か」と疑問を投げかけた。

 一方、参考人の一人だった小林節・慶応大名誉教授は、武力行使を認めるかどうかについて「攻撃国の意思・能力、規模などを総合的に考慮(し判断する)」という政府見解の表現を問題視し、「要は『出たとこ勝負』で軍隊の運用を政府に白紙委任せよ、ということ。独裁国家の発想だ」と批判している。

 同法案を巡っては3日、小沢隆一・東京慈恵医大教授らが廃案を求める声明を発表。賛同する憲法学者は当初の171人から9日現在、212人に増えている。日本を代表する憲法学者の佐藤幸治・京都大名誉教授も、6日の講演で「いつまでぐだぐだ(憲法の根幹を揺るがすようなことを)言うのか」といらだちを表明した。

 これに対し、集団的自衛権の行使容認を昨年提言した首相の私的懇談会「安保法制懇」のメンバーで、憲法学者の西修・駒沢大名誉教授は9日、取材に「国連憲章上、集団的自衛権は固有の権利で、国家存立のための自然権と位置づけられている。憲法は自衛権の行使を否定していない。国連加盟時に何の条件もついていない」と合憲論を展開。違憲論が強まっている現状については「合憲派は少なからずいる。憲法論議は多数決ではない」と話した。

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