長い間、化石燃料を思うままに使い、二酸化炭素を大量排出して経済発展を遂げてきた先進諸国として、最低限の責任ある態度を示したといえる。

 ドイツで開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、地球温暖化対策として、2050年に世界の温室効果ガス排出量を10年比で40~70%削減するという長期目標を打ち出した。70%に近い「上方」の達成をめざすという。

 昨年まとめられた国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次報告書は、本格的な対策なしでは今世紀末の平均気温が最大4・8度上昇すると推計している。G7の目標は温度上昇を国際合意の2度未満に抑える道筋としてIPCCが示した提言に沿ったものだ。

 G7がIPCCと国際合意を尊重する姿勢を明確にしたことは、先進国が過去の排出責任から目を背けないとのメッセージになる。2020年以降の温暖化対策を話し合う年末の国際会議に弾みがつくだろう。

 しかし、G7の排出量は現在、世界全体の約3割にとどまり、総量も割合も低下しつつある。先進国だけでは達成できない目標である。

 カギを握るのは、途上国である。現在、世界最大の排出国は中国であり、第3位はインドとなっている。先進国の責任を問うてきた途上国をどう巻き込んでいくのか。

 日本を含む先進国は自らの排出削減にとどまらず、世界全体の削減に貢献しなければならない。資金や技術の提供にもできるだけこたえる必要があるだろうし、排出削減のための具体的な仕組み作りも主導して、責任を果たさなければならない。

 年末の会議は2030年ごろが目標年なのに対し、G7の新たな目標は50年や「今世紀中の世界経済の脱炭素化」だ。

 かなり先とはいえ、社会を大きく変えなければ、とても達成できない目標である。先進国は、未来社会を構想する力と着実な実現のための政策立案力を問われているといえる。

 その点で、基準年をずらして排出削減率を高く見せかけるごまかしや、原発に回帰する一方で再生可能エネルギー導入を制限しようとする日本政府の姿勢は心配である。

 温暖化対策をG7がリードしようとする以上、日本も当然、前面に立たなければならない。長期の目標だからと言って先送りは許されない。エネルギー消費と化石燃料を減らす脱炭素化社会の実現に向けた世界貢献は、待ったなしだ。