集団的自衛権:政府「行使は限定的」…違憲指摘に反論

毎日新聞 2015年06月09日 19時00分(最終更新 06月09日 22時59分)

長谷部恭男早大大学院教授の発言と政府見解
長谷部恭男早大大学院教授の発言と政府見解

 政府は9日、集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法案について、「これまでの憲法解釈との論理的整合性および法的安定性は保たれている」とする見解を野党側に文書で提示した。4日の衆院憲法審査会で、長谷部恭男早大大学院教授ら憲法学者3人が「憲法違反」と表明したことに反論した。議論の沈静化を急ぐ政府だが、野党は「説得力がない」(民主党の長妻昭代表代行)と批判を強めており、引き続き国会審議で追及する方針だ。

 ◇野党「従来の繰り返し」

 憲法審では、自民党が推薦した参考人の長谷部氏が集団的自衛権の行使容認を「従来の政府見解の基本的枠組みでは説明がつかず、法的安定性を大きく揺るがす」と指摘。野党は長谷部氏の発言に対する政府見解を求めていた。

 見解では、集団的自衛権の行使容認を「わが国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として一部限定された場合の武力の行使を認めるもの」と指摘。憲法9条の下でも「わが国が存立を全うするために必要な自衛の措置」を認めた1972年の政府見解を引用し、「基本的な論理を維持した」と説明した。

 その理由について「安保環境が根本的に変容」したことで「今後、他国への攻撃でも日本の存立を脅かすことはあり得る」と説明。新3要件で容認されるのは、国際法上認められている他国を防衛する集団的自衛権ではなく、「あくまでもわが国の存立を全うし、国民を守るため、わが国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置」に限定されていると強調した。

 長谷部氏はまた、他国軍への後方支援で「非戦闘地域」の概念がなくなり「他国の武力行使と一体化する恐れが強い」としたが、見解は「現に戦闘を行っている現場」では活動しないことなどを挙げ、「一体化の回避という憲法上の要請は満たす」とした。

 見解は安保法制を「(昨年7月の)閣議決定の考え方に立ったもの」と強調している。ただ、長谷部氏は「(集団的自衛権は)自衛よりむしろ他衛で、そこまで憲法が認めているという議論を支えるのは難しい」と閣議決定そのものの論理矛盾を指摘しており、議論はかみ合っていない。

 長妻氏は9日、記者団に「これまでの説明を文書にしたに過ぎない」と指摘。72年見解が集団的自衛権を「憲法上許されない」と結論づけたことを挙げ「ひどい論理展開だ」と批判した。維新の党の柿沢未途幹事長も「閣議決定以来の論理をただ繰り返しているだけだ」と述べた。

 見解はまた、新3要件を「いかなる事態にも応えるという事柄の性質上、ある程度抽象的な表現が用いられることは避けられない」と説明。共産党の赤嶺政賢衆院議員は「へりくつをこねくり回し、非論理的で暴走した憲法解釈だ」と語った。【青木純、村尾哲】

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