文芸社とのトラブル事例

 Cさんは3年前、文芸社の営業マンから「良い作品は共同出版で、中身のない作品は自費出版しかありませんが、会議であなたの作品は、自費出版でなく共同出版に決まりました。大変評価が高いですよ」と電話があり、「200万円くらいかかりますが相場です。でもよい作品はテレビドラマや、全額返金もあります」と説明され契約をしました。

 契約をしたら、契約前後は度々あった電話やメールがピタリと止まりました。本が出版される頃になって、「直接本屋さんに営業に行ったり、本が置かれているかどうかを確かめたりしなで下さい」などと書かれた文書が届き不審に思っていたところ、友人から、一部の書店では棚に置かれていたが、一部の書店では目立たない隅の棚やレジの下にあったと聞かされ愕然としました。

 この事に「だから自分で本屋さんを調べたり行ったりしないでくれと言うことだったのか」と抗議すると、「まだ書店が並べる前だったのでしょう」とか、「注文された本は棚に並びませんから」と言う答えでした。

 出版から2年が経過したところで、8万円近くの倉庫使用料の知らせが届いたため驚いて倉庫料金についての資料を読みかえすと、2年目から在庫冊数に応じて月額の倉庫使用料が発生しており、書かれていた表には一見、一年分と勘違いするような一万円以下の月単位の倉庫料が書かれていました。

 また、契約前は共同出版という説明でしたが、契約書に書かれていた売上還元タイプのことを専門家に尋ねて、違う意味であることを知りました。出版、委託販売、全ての費用が作者持ちで、自費出版と変わらないこと、印税タイプなら倉庫代は会社持ちだけど還元タイプは倉庫代まで払うことを知りました。おまけにインターネットで調べて自費出版の相場より倍くらい高いことを知りました。

 文芸社に「出版費用の半額を返せば倉庫代は払う」と抗議のメールをしたところ、「何を根拠に半分返せといわれているのかわからない。倉庫代は書類に書かれており契約に違反しているのはあなたです。払う意思がないのなら、手続きに入らせてもらいます」と裁判手続きにも取れるような返信がありました。実際に文芸社は裁判を起こしていることもサイトで知りました。

 またインターネットで調べたところ、文芸社は提携書店に専用の棚を有料で借りていて売れ残った本を買い取っているということも知りました。この点について質問すると、以下のような返事がありました。

 「買取が事実かどうかということが、著者の方にどういう理由でどのよう不利益が生じるのか是非お聞かせください。つまり買い取りをしているかどうかを回答する以前の問題です。」

 質問の答えにもならないような回答が返ってきました。買い取りにかかる費用は著者が支払った出版費用に含まれていると考えられるし、有名書店であなたの本が売られますと勧誘していたのが実は、買い取りをするから書店は文芸社の本を置いていたとなると、著者たちは文芸社を信じません。勧誘時に売れ残りの本を買い取るシステムを知っていたなら、契約などしませんでした。また買い取りシステムであることを契約前に知らせず、買い戻した本を「返品」と称しているなら、著者にとって不利益となる事実を隠して契約させたことになります。

 しかし、文芸社は都合の悪い質問には開き直り倉庫代を主張します。勧誘内容と契約が違う事や、精算書に書かれた書店からの返品数が実際に書店に並んだ数より多い事や、買い取りの質問を何度もしましたが納得のいく回答は得られませんでした。協議した結果、1年分の倉庫料金を支払い、それ以降もかかっていた四ヶ月分の倉庫料金は支払わないということで合意しました。

 送られてきた「合意書」には、「甲と乙は、本件合意後、相互にまたは第三者に対し一切異議等を申し立てないものとする」という、メールで約束していない項目までありました。口止めをするかのような項目があることに対して抗議すると、文芸社からはいつになく謝罪の言葉とともに「集団訴訟や書き込みを止めさせる意味ではありません。解除の契約を後になり取り消すなどないよう処分した本を返却希望されないため書いています」との返事がありました。そこで、合意していない項目に取り消し線を引いて返送しました。

 本を出すという夢を叶えたい人達は、甘い勧誘言葉や契約書の中の専門用語に気を付けて、相場を調べてから後々トラブルや不快な思いをしないよう出版を検討していただきたいと思います。

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 「共同出版に選ばれた」と伝えながら、売上還元タイプの契約書を送付し、「印税タイプ」と「売上還元タイプ」の説明をせずに「売上還元タイプ」の契約書を送るなど、契約に際して著者を錯誤させており、大きな問題点があります。また、文芸社の作成した合意書には、裁判を起こしたり第三者機関に情報提供をしないよう求める項目があり、トラブルを隠そうとする意図が伺えます。

 合意が成立して解約をする場合は、合意書の内容をよく読んで理解し、合意していない項目があれば削除や訂正を求めるべきです。


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by nakusukai | 2010-02-07 12:03 | 事例紹介
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