【イスタンブール=佐野彰洋】7日投票のトルコ国会(一院制、定数550)選挙で、与党の公正発展党(AKP)は2002年に政権を獲得して以来初めてとなる過半数割れに追い込まれた。悪化する経済状況に有権者の不満が広がっていることが背景だ。自身の権限強化を進めてきたエルドアン大統領にとって大きな打撃となりそうだ。
AKP党首のダウトオール首相は「AKPが勝者だ」と語ったが、市場では政権運営が困難になるとの観測から通貨トルコリラが対ドルで急落した。
AKPの獲得議席は改選前の311を大きく下回る258で、連立を組むか少数政権に転じることを強いられる。野党ではクルド系政党の国民民主主義党(HDP)が躍進した。
メディポール大学のケレム・アルキン教授は「低成長とリラ安に伴う物価上昇が与党の支持離れの一因となった」と指摘する。AKP政権は政権獲得後、トルコの労働コストの競争力を売りにして外資を呼び込み、高成長を実現した。00年に4000ドル程度だった1人当たり国内総生産(GDP)は1万ドルを超え、これまでの選挙は連戦連勝だった。好調な経済を支えとしてきただけに、ここにきての景気失速は与党への強い逆風となった。
新興国ブームが去り、市場では経常収支の赤字など構造的なトルコ経済の弱さが改めて注目されるようになっている。通貨は過去1年半で22%も下落。14年の実質GDPは前年比2.9%の伸びにとどまった。足元の失業率は過去5年で最悪の11%に達する。
11年にわたり首相を務めた後、大統領に転じたエルドアン氏は大統領権限の不足と議会の制約が経済低迷の一因との論法で、自身の権限強化を可能にする憲法改正を進めた。しかし、憲法改正の発議に必要な330議席には遠く及ばず、エルドアン氏の影響力低下は避けられない見通しだ。
首相在任後期から反政府デモを弾圧したり報道関係者を逮捕したりするなど強権的な手法が目立った。一人の政治家が過剰な権力を手にすることに有権者の警戒が強まっていた。
与党の過半数割れは短期的にはトルコの安定性を損なうが、中長期的には政治・経済面での必要な改革が進む期待もある。政権がこれまで消極的だった規制緩和に乗り出し、中銀の金融政策への介入が減れば、トルコ経済への信頼性が高まる。
外交面でも変化への圧力が増す可能性がある。中東の過激派組織「イスラム国」(IS)をめぐっては、シリアへの過激派の渡航阻止など「国境管理が不十分」という不満が周辺国でくすぶっている。AKP政権は近隣国と大きな問題を抱えない「ゼロプロブレム外交」を掲げてきたが、一定の友好関係を維持していたイスラエルやエジプトとも対立が深まり、「ゼロフレンド」状態に陥ったとの指摘がある。
シンクタンクEDAMのシナン・ユルゲン会長は、今後の外交政策の立て直しにつながる可能性があると指摘する。野党などの主張を取り入れ、テロ対策などで周辺国との協力を深めることが期待される。
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