底なしの性への執着
「入学してしばらくすると、桜蔭の誰々に、フェリスの誰々に告白されたとか、そんな同級生がでてくる。どれだけ願っても、僕には全然ないわけです。いろんなグループでそれぞれ学園生活を謳歌していて、僕は“桜樹ルイの新作手に入れたぜ!”で一発逆転をした。だから僕の武器とか、拠り所はエロしかなかった。本格的にエロにハマったのは、中学2年から。それから現在に至るまで、性への執着は半端ない。憑りつかれているくらい」
小遣いはすべてエロ本とアダルトビデオレンタルにつぎ込み、あらゆるエロ本を熟読し、女の裸や性に徹底的に執着する中学生だったようだ。女の裸は誰しも興味がある。それは筑波大駒場でも変わらなかった。森林氏はクラスや学年の同級生を圧倒する量のAV鑑賞をして、誰よりもエロや性風俗に詳しかった。
「僕はエロに関しては飛び抜けていました。もう、頭の中は女とセックスでいっぱいです。授業中にノートにおっぱいの落書きをするじゃないですか、そのおっぱいを眺めて休み時間にオナニーできるみたいな。辞書で“乳首”って調べて勃起が止まらない、みたいな(笑)」
近所にあった横浜市のレンタルビデオ店。毎週水曜日、7泊8日を180円でレンタルできるサービスデーに、AVを山ほど抱えて帰る。それが毎週の習慣になった。1度に20本を借りるので月間80本、人気単体や人気企画など主要のAVはすべて鑑賞する。
まさに、AV漬けの青春。メーカーや女優の動向、監督の傾向などAVやAV女優にはおそろしく詳しくなった。せっかく抜けるAVを返却するのは、もったいない。オナニーしながら膨大な鑑賞して、抜ける瞬間をテープTOテープでダイビングする。ベスト版テープは膨大になり、学校内での立ち位置は確固たるものになっていく。
「初めて中学2年生のとき、桜樹ルイのAVを観て衝撃を受けた。まず桜樹ルイがフェラ抜きしていた。フェラチオのことは知っていたけど、映像で動くフェラチオを眺めて、なんて気持ちよさそうなんだろうって。どうしてもフェラチオされたくて、でも彼女はいないし、モテないし、ピンサロに行くのはお金が必要だし。
それで結局、どうしたかというと、どうしてもフェラされたいから自分で舐めた(笑)。自分で自分のフェラチオするのは、当たり前だけど無理がある。チンポまで自分の口が届かなくて、風呂上りに酢を飲んで毎日ストレッチした。そんなことを半年くらい頑張って、ようやく自分で自分のものをフェラできた。そこまでの性への欲求というか、情念というか。自分でしゃぶるんだけど、女の人にしゃぶられている感覚が強くなるように脳内を調整して、イメージトレーニングしました。試行錯誤を繰り返してイメージができるようになった。でも、イッた瞬間に賢者タイムがくる。頭が切り変わる。その瞬間に自分に口内発射している現実に戻される。これを桜樹ルイへの口内発射だと思い込むイメージトレーニングを重ねて何回かチャレンジしてけど、結局、何発自分に口内発射しても、その賢者タイムは乗り越えられなかった。なんていうか、それは情けない」
授業中はAV女優の裸体を想像してノートにおっぱいを落書きし、休み時間は毎月欠かさず購読する「ザ・ベストMAGAZINE」「URECCO」「オレンジ通信」「NAITAI」などの各種エロ本をチェックした。放課後は部活以外の時間をすべてAV鑑賞と、抜けるシーンのマイベストビデオ作りで時間が埋まり、一切勉強はしなくなった。たまに息抜きにエロじゃない漫画や小説を読む程度だった。
「エロ本を熟読すると、いろいろ情報がある。エロ本に風俗の値段とかプレイ内容とか、詳細に書いてあるじゃないですか。ピンサロは5000円でフェラまでとか。ヘルスはどうでとか。本番ができる風俗で、一番安価だったのが黄金町だった。これ、近いぞと。映画とか買い物で伊勢佐木町はよく行っていて、黄金町は隣町。なにか理由をつけて伊勢佐木町に行って、後にドキドキしながらちょっと黄金町を通る。もう、ちょんの間街をただ歩くだけで勃起どころか、我慢汁がだらだらみたいな(笑)。いつか行ってやるって」
自分に口内発射――そんな異常な自慰行為を毎日しているうち、本物の女性とセックスしたい情念が頂点まで高まった。ギンギンに勃起させながら黄金町を何度も歩いたが、しばらく一歩を踏みだす勇気がなかった。黄金町で童貞を捨てたのは、高校1年の冬休みである。
「ちゃんとした童貞は黄金町でフィリピン人相手に捨てました。もう、エロビデオでオナニーしているだけでは完全におさまらなくなった。黄金町はもう、超キモチよかったぁ、やっぱ、生身の女の肌に触れるのは、映像を観ているだけとは全然違う。三次元っていうか、女性の肌のぬくもりは、最高だった。ちょんの間のフィリピン人は素晴らしくて、それまで自分の中で培った“優しい男が一番”みたいな格言も生かせるわけです。フィリピン人は“アンタ、ヤサシイネ”みたいに言ってくれる。気持ちいいだけじゃなくて、“あれ、俺モテてる”みたいな勘違いもできる。今思えばフィリピン人とかタイ人は、その日本語しか知らなかっただけだろうけど、僕に“アンタ、ヤサシイネ”“アンタ、ウマイネ”とか言ってくれて、“優しい男が一番”と信じていた自分は間違ってなかったみたいな。童貞はロマンチストなんですよ。メルヘンというか。妄想ばかりしているから、自分の中には物語があった。
童貞を捨ててからは、もう無限にヤリタイって欲望まみれ。家庭教師のバイト代を握りしめて黄金町で買春、買春、買春ですよ。それで妄想はさらに膨らんで、当時はフィリピン人と結婚しようって決めていましたから。後進国に生まれて苦労しているんだろうな、俺が水揚げしてあげなきゃみたいに信じ込んでいた(笑)」
高校生になって毎週フィリピン人、タイ人とセックス生活に突入した。筑波大駒場の秀才、天才たちとの学力差を完全に自覚して、エロに関してはなんでも知っている“オナニー超人”“異常性欲者”として学内で君臨するようになった。
1万円の定価を交渉して8000円に値切る技も身につけて、興味のある同級生を黄金町まで連れて行き、「この黄金町こそが、売春婦のワールドカップだ!」と熱弁した。森林氏の尋常でないエロさと異常性欲を学内の誰もが一目置くようになって、渋谷で遊ぶ派手なグループから部活系スポーツマン、オタク、東大進学の準備をするエリートとすべてのグループを、エロを武器に横断している。
モテる奴はAV男優に向かない
高校3年。成績は学年で160人中、159番か160番まで降下している。周囲と同じく大学受験はしてみたが、すべて不合格。結局、一年間浪人して中堅私大にしか受からなかった。
大学生になっても、なにも面白くなかった。やりたいことも、なにもない。このまま生きていて、いいことあるのか? 大学2年のとき、人生を捨てるつもりでAV男優に応募した。そして汁男優からAV男優の一歩を踏みだしている。
「将来やりたいことがなかった。同級生の優秀な奴らは、もう偏差値で計測するのが不可能みたいなレベルですよ。高校3年あたりには、完全に限界かなと思いましたね。世界が違うと。大学生になってもなにもなくて、もうどうでもいいや、人生捨ててやるくらいの自暴自棄でAV男優に応募した。それで汁男優になった」
汁男優になったのは1999年、16年前である。そこから欲望のままにカメラの前でセックスをしまくって、一歩一歩階段を上がってトップ男優になっている。
「モテる奴は、男優には向かないです。セックスできることがアタリマエになると、とても続かない。僕みたいなモテない男は、生涯拭うことができない鬱憤がある。一番興奮するのは、高校時代にモテててイケていたみたいな女優。高校の文化祭でミスコンやったら1位でした、みたいな。こういう女にまったく相手にされなかったなぁ、という恨みで、やってやるぞ!ってなる」
思春期には徹底的にモテなかったが、現在は森林氏を追っかけのような女性も複数現れて男性芸能人のようにモテている。
(後編に続く。6月10日公開予定です)
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