発売中のノンフィクション雑誌『G2(ジーツー)』第19号に掲載後、大きな反響を呼んだ記事「騎士道 羽生善治」。ルポライター・高川武将が6度のロング・インタビューを通じて「羽生善治の本心に迫ろう」とした、文字どおりの「言葉の対局」です。原稿が予定の80枚を大幅に超える130枚に達したこともあり、誌面に載せきれなかった「後半」をおよそ2週間にわたって随時掲載していきます。棋士とルポライターの真剣勝負をご堪能ください(G2編集部)
▼羽生善治「将棋の神」に極意を質す(その1)はこちらからご覧ください
=> http://gendai.ismedia.jp/articles/-/43587
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(文・高川武将)
歳をとっても棋士でいるためのズルさ
『これからの棋士寿命は短くなる。自分も40歳でやっているかわからない。50歳で出来ていたら大満足です』
ちょうど七冠制覇する前後、羽生は頻繁にそう言っている。
やがて30代に入った頃、羽生はタイトル戦とは無縁のベテラン棋士たちが深夜まで対局する姿を見て、その原動力は何だろうと思う。「今が全て」と一喜一憂するよりも、「長い棋士人生をマラソンを走り抜けるようにいかに変わらずに走り続けるか」を模索するようになり、そして勝ち続ける。
――寿命が短くなるというのは、研究が盛んになって戦いが激しくなる、と?
「研究が盛んになるというのは、長距離走だったものが短距離走になっていく、ということなんで。よく、水泳のバサロスタートの話をしてたんですね。つまり、バサロスタートが出来るようになったら、水面に出た後の短い距離の勝負になるじゃないですか。そうしたら、若い人のほうが有利でしょう。まあ、スポーツではレギュレーションが変わってまた状況も変わることはあるけど、将棋はルールを変えるわけにはいかないんで、ええ。そういうことは思ってました」
――それが変わっていった。変わらずに続けていく、という方向に。
「いや、まあ、そうですね。そのときはそう思っていても、歳は自然にとっていくんで。だからといって、そのまんま、ぼんやりしているわけにもいかないんで(笑)」
――でも、勝負というのは『今が全て』ですよね。その一瞬で、正解を考えつかなければそこで終わってしまう。
「ええ、ええええ」
――そうした勝負を如何に続けていくか、ということですか。
「ああ、そうですね。どう言えばいいんでしょうかね、うん・・・・・・例えばゴルフだったら、若いときはよくても、歳を重ねると、いいショットばかり打てるとは限らないじゃないですか。だからまあ、リカバリーショットを充実させよう、と(笑)。OBすれすれとか、林すれすれとか、ハハッ、とりあえず一打でフェアウェイに戻しておくか、みたいな、ハハッハハッ」
――ちょっとズルいような(笑)
「まあ、そういうのも大事ですよね(笑)」
思いも気概も目的も・・・すべて「ない」
――10代の頃は、読みを中心に無我夢中でやっていたのかなと。その後、序盤の研究を徹底して、プロでも難解なほど突き詰められて、七冠になった。そうした流れの後に、そういう考えになったわけですね。
「いや、でも、本当に将棋の序盤が変わったのは、七冠を獲った後のことですから。藤井システムとかが出始めて、2000年くらいですかね。凄く大きく変わったのは。私が七冠を獲った96年頃は、序盤が変わったといっても、その後の変化から見たら、大したことじゃなかったんですよね」
――きっかけというか、始まりだった。
「ええ。その前は、(タイトル戦で)中飛車突いただけで、ぎゃあぎゃあ言ってた時代ですから。そんなの別に、今と全然違いますよね」
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