まずはじめに「労働基準法」という法律があります。これは、労働に関する規制などを定めたもので「労働組合法」「労働関係調整法」と並んで労働三法と呼ばれています。
労働基準法は強行法規であり、これを守らない使用者(会社)は罰則に処せられることもあり、使用者(会社)に対して非常に厳しい内容になっています。労働基準法は、労働者、つまり、あなたの保護を目的に制定された法律だからです。
その労働基準法の第32条には次のように定められています。
労働基準法で定められている労働時間はつまり「1日8時間以内」「1週間40時間以内」であり、この労働時間を超えた分は残業ということになるのですが、この定めを超えて労働しているにも関わらず残業代を受け取っていないことを、「サービス残業」ということになります。 |
労働基準監督署による是正勧告などが急増していますが、このサービス残業が表面化してきた背景には不景気による大規模なリストラがあります。 その結果、適切数の労働者を確保できていない企業は社員1人当たりに課される仕事量が増加し、過労死など、問題視されるようになりました。 リストラされた社員が、正当な権利を行使すべく未払い残業代の請求をし始めたこともこの表面化の理由のひとつです。未払い残業代問題はあなたにとって縁遠いものだったかもしれませんが、ご存知のとおり、大手自動車メーカー、大手ファーストフード店、大手老人ホーム、あらゆる業界でこのサービス残業について問題視しております。 では、一体なぜ、サービス残業がなくならないのでしょうか? |
企業の就業規則や賃金規定、雇用(労働)契約書を作成している社会保険労務士が多くいますが、実情を聞いてみると、労働基準法を間違って解釈している経営者や経営陣、担当者が非常に多いです。中には意図的に自分の都合の良いように解釈している人すらいるようです。サービス残業は法律違反であり、事件なのです。
経営者や経営陣が、残業代未払いは違法であるとは分かっているにも関わらず、身勝手な見解を振りかざしていることがあります。これは業績が芳しくない企業だけでなく、きちんと利益を出している企業にあっても多く見られ、当然このような勝手な見解は許されません。
「社員もこの不景気に文句は言ってこないだろう」など、何となく世間の流れに便乗して残業代を支払わない企業があります。考えようによっては、この理由が最も悪質かもしれません。しかし、世間は、サービス残業をさせている企業は徹底的に排除する方向にシフトチェンジしています。諦めずに自分の権利を主張しましょう。
残業代の請求は、「労働時間の計算」から始まると言っても過言ではありません。ですが、使用者(会社)も労働者(あなた)もこの労働時間に対する認識が甘すぎます。この甘さが未払い残業代を発生させる最大の原因です。 さて労働時間に含まれる時間とはどんなものでしょうか?通勤時間は含まれるのでしょうか?休憩時間は?出張先へ往復時間は?着替えの時間は?これらも参照しながら、労働時間の定義を紐解いていきましょう。 経営者や経営陣、担当者に法律の知識がないことを挙げましたが、金額の多寡はあるにしてもあなたの会社にも未払い残業代が必ず存在し、語弊を恐れず言えば、同じく専門的な知識を持ち合わせていないあなたはそれを黙認してしまっているのです。 労働基準法は昭和22年に制定された古い法律であり、「労働の時間に対して賃金を支払う形態」には馴染んでも、「労働の成果に対して賃金を支払う形態」には馴染んでいない部分があるのも事実です。そろそろ他人事と言ってられなくなってきます。ここで残業定義についての具体例をご紹介します。 |
労働基準法などを解釈すると、次のような時間帯は労働時間であると定義されています。
1.指定された制服や作業着への(からの)着替え時間
2.義務付けられた始業前の清掃や終業後の清掃
3.昼休み中の来客当番
よって、タイムカードに打刻されていない上記のような時間帯についても、未払い残業代(賃金)が発生しているの
です。
1日の残業時間は例え1分であっても切り捨てることは認められていません。タイムカードに打刻されていないこのよ
うな時間帯についても、未払い残業代(賃金)が発生しているのです。
※但し、1日分についての切り捨てや四捨五入は認められていませんが、1ヵ月分についての四捨五入は認められています(30分単位)。
結論から言えば、例え1時間でも、1分でも、請求は可能です。「1日の残業時間は15分単位で切り捨てる」などのような独自のルールを設けている会社がありますが、これは違法です。労働基準法第24条並びに第37条には次のように定められています。
つまり、残業時間を勝手に四捨五入したり切り捨てすることは認められていないのです。
しかし一方、同条文に則り残業代の計算をすると、事務処理上煩雑なケースが出てくるため、行政通達(昭63・3・14基発第150号)にて、次のような例外を認めています。
これを解釈すると、次の通りになります。
同通達の内容に限らず、労働者にとって有利な例外であれば違法となりません。
休日とは「労働の義務がない日」です。労働の義務がないということは、「使用者(会社)は労働者に対して業務を指示してはいけない日」、換言すれば、「労働者が労働から完全に解放されている日」ということになります。 この休日の単位は「日」ですので、つまり、午前0時から午後12時(深夜0時)となり、よくある「半休」などは本来義で言えば休日とはならないのです。 また、休日には「法定休日」と「所定休日」の2種類があります。この法定休日と所定休日の違いは残業代を計算するうえでとても重要なポイントですので、解説します。 |
労働基準法第35条には次のように定められています。
この定めによる休日が「法定休日」であり、使用者は労働者に対して、「毎週少なくとも1回の休日を与える」か、「4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならない」といことになります。但し、4週間を通じて4日以上の休日を与えようとする場合は会社の就業規則に定めてある必要がありますので、一般的には毎週少なくとも1回の休みを与えなければならないと理解していただければ問題ありません。
一方で、労働時間(残業時間)の定義を知っておこうで解説した通り、労働基準法第32条(労働時間)では「1日8時間」「1週40時間(特定措置対象事業場は44時間)」を超えて労働させてはならないという制限を定めています。
しかし、この労働基準法第32条(労働時間)と、上記同第35条(休日)を用いて、1週間の労働時間を試算してみると、【1日8時間労働×6日(1週に1回の法定休日を取得するため)=48時間】となり、「1週40時間(特定措置対象事業場は44時間)」を定める労働基準法第32条(労働時間)と自己矛盾してしまいます。
そこで、法定休日に加えて、もう1回の休日を増やすことにより、【1日8時間労働×5日(1週に2回の休日を取得するため)=40時間】としている使用者(会社)が多いのです。この加えた1回の休日が「所定休日」です。
なお、就業規則などに「法定休日は日曜、所定休日は土曜」などと定めている使用者(会社)はまずありません。 特定の曜日に定めてしまうと、「どうせ土日のどちらかに出勤しなければならないなら、25%割増される土曜よりも 、35%割増される日曜に出勤した方が得だな」と考える労働者がいてもおかしくないからです。
休暇とは「労働義務はあるが、その労働が免除された日」です。労働が免除されたという表現通り、もともとは労働する義務がある日ですので、もともと労働義務のない休日とは異なります。
また、休暇にも「法定休暇」と「法定外休暇(会社ごとに定められた休暇であることから「任意休暇」と呼称されるともあります)」の2種類があります。なお、法定休暇は労働者から請求があった場合には、原則、使用者側はその取得を拒否することができません。
●年次有給休暇
●産前産後休暇
●生理休暇
●育児休暇
●介護休暇
●子の看護休暇
●時間外労働(残業)に関する代替休暇
●傷病休暇
●慶弔休暇
●夏季休暇など
休業とは、労働基準法などの法律では明確に定義づけられていませんが、一般的には「労働の義務はあるが、その労働が労働者、あるいは、使用者の都合によって任意に免除された日」です。
労働者側の都合であれば育児休業や介護休業など、使用者側の都合であれば業績不振による自宅待機などが該当します。また、比較的長期に渡る休暇を休業と呼称するこもあります。なお、休業期間中の賃金について、労働基準法第26条では次のように定められています。
「代休」と「振替休日」を同じものである(単に呼び方が違うだけ)とほとんどの使用者が誤認していますが、全く異なるものです。
法定休日、所定休日に限らず、休日出勤(労働)の代償として、他の労働日を休日として恩恵的に休ませる方法です。事後的に、「本来の休日」と「本来の労働日」を交換することになるため、休日労働をしたという事実に変わりはありません。当該休日労働が法定休日であった場合や、(前述の通り)所定休日労働だが割増賃金が発生した場合には、割増賃金分は請求できるということです。
代休は事後的に、「本来の休日」と「本来の労働日」を交換する方法でしたが、振替休日は「事前に」交換する方法です。「事前に」と認められるには次の条件を満たす必要がありますが、休日労働をしたという事実を打ち消すことができますので、法定休日に労働した場合でも割増賃金は請求はできません。
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