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 ニューヨークで開かれた核不拡散条約(NPT)再検討会議は1カ月間の議論もむなしく、最終文書を採択できないまま5月に閉幕した。「核兵器の非人道性」という正義の言葉をどんなに費やしても、「広がってしまった核」の軍縮は本当に難しいということだろう。

 「核を広げない努力」の方では、核兵器の原料になるプルトニウムを大量に所有する日本も大きな責任をもつ。昨年のことだが、「英国にある日本所有分のプルトニウムが2・3トン増えた」と突然公表され、日本側では「なぜ急にそうなったのか」がよくわからないという奇妙なことが起きた。

 大きなニュースにはならなかったが、「プルトニウムはどう管理されているのか。日本側はきちんとフォローしているのか」について改めて考えさせられるできごとだった。

■原子力委も知らない

 日本は47トンのプルトニウムをもつ。フランスに約16トン、英国に約20トン、日本国内に約11トンある。この47トンという量、そして36トンもの量が外国に存在するのは原子力計画の頓挫などの結果だが、異常なことである。

 しかし、「保管しているのは核保有国」というある種の「おまかせ心理」と、核には秘密がつきものという「情報過疎への慣れ」の中で、日本社会の関心は薄れている。

 ことの発端は昨年9月15日の原子力委員会の会合だ。原子力委の事務局が「2013年末の日本保有のプルトニウム量が前年末の44トンから47トンに増えた」と公表した。

 このうちの0・64トンは、日本国内の原発にいったん装荷していたプルサーマル燃料(プルトニウム・ウラン混合酸化物〈MOX〉燃料)が使われないまま取り出されたために再算入したものだった。問題は残りの2・3トンだった。

 これについて原子力委員の一人が増えた理由を質問し、事務局がこう答えている。

 事務局「英国の再処理施設の方で処理が進んだことによりまして、(平成)25年内に新たに約2・3トン、日本に返還予定のプルトニウムというものの割り当てと申しましょうか、保有量の追加が行われたというふうに聞いております」

 原子力委員「ということは、イギリスの再処理工場はまだ動いているということですかね」

 事務局「イギリスの再処理工場はまだ稼働しております」

 こんなやりとりが交わされたが、これは少しおかしい。確かに英国の再処理工場「ソープ」はまだ動いており、停止するのは2018年ごろの予定だ。しかし、日本分のソープでの再処理は04年に終わっている。小さな間違いだが、本質的な間違いだ。このやりとりによって、原子力委事務局も原子力委員も海外プルトニウムの現状に詳しくないことが露呈した。そして、日本の国会議員の事務所を通じたその後の問い合わせで、英国分ではさらに1トンの「日本への割り当て」が予定されていることも分かった。帳簿上で3・3トンものプルトニウムが急に増えたのである。

 日本のプルトニウム保有量を原子力委が発表するようになったのは1994年。「日本は余剰プルトニウムを持たない」という原子力委の方針に沿ってだった。

 しかし、プルトニウムの大半は、日本の電力会社がかつて英仏に委託した再処理から抽出されたものだ。だから英仏に存在し、所有者は電力会社である。国内の保有量は保障措置もあって把握できているが、海外の保有量については、原子力委は電力会社(電気事業連合会)から数字を聞いて発表しているに過ぎない。原子力委事務局にあらためて聞いてみたが、やはり詳しくはなかった。

 そこで私は、当事者である電事連と英国当局に「2・3トン増加」について質問してみた。少し時間はかかったものの、双方から答えが返ってきた。