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高まる中国株バブル崩壊リスク
世界経済が大荒れとなる恐れ

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第379回】 2015年5月25日
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行き詰まり感高まる中国経済
金融緩和政策の効果も限定的

 最近の中国の経済指標を見ると、実体経済に強烈なブレーキがかかっている。今年1~3月期のGDPはプラス7.0%と発表されたものの、その数字を鵜呑みにしている専門家はないかもしれない。

 実際には、その数字以上に減速しているとの見方の方が有力だろう。中国政府要人の発言を見ると、景気の下振れにはかなりの切迫感がある。今年4月の輸出は、前年同月対比でマイナス6.4%と大きく落ち込んだ。

 中国経済を牽引してきた輸出の伸び悩みは、経済全体に大きなマイナス効果をもたらすはずだ。民間銀行が発表している景況感指数である、今年5月の製造業購買担当者指数(PMI)速報値は49.1%と景況感の分水嶺である50%を下回り、3ヵ月連続の50割れとなった。

 同国政府は、3回にわたる金利の引き下げなどの金融政策を動員して景気の下支えを行っているものの、これまでのところ効果は限定的と言わざるを得ない。地方政府や中小企業に多額の債務が積み上がっていることを考えると、金利を引き下げても金融機関の貸し出しを増加させることは難しい。

 不動産価格の下落傾向が鮮明化する状況下、経済全体に過剰供給能力を抱えた中国経済の回復への道はかなり厳しい。政府は輸出を拡大するため、AIIB(アジア・インフラ投資銀行)の設立等によって新興国向けのインフラ輸出を目指さざるを得ない状況に追い込まれている。

 13億人を超える人口を抱える中国にとって、一定の経済成長は国民の支持を維持するために必要不可欠な要素だ。経済担当の李克強首相の発言に緊迫感を感じるのは、中国経済の行き詰まりを表していると言える。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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