発熱、せき、息切れなどの症状が見られ、下痢など消化器症状を伴う場合もある。感染しても症状が現れない人や軽症の人もいるが、高齢者や糖尿病、慢性肺疾患、免疫不全など、基礎疾患のある人は重症化する傾向にあると言われる。

 現在、ワクチンや効果的な治療法はなく、治療は症状に応じた対症療法となる。感染経路は、まだ正確には分かっていないが、ヒトコブラクダがMERSコロナウイルスの感染源動物の1つであると考えられている。

 現在、セウォル号と等しく、韓国政府の初動対処がいかに遅れていたかが問題になっている。

 さらに、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長が、政府とソウル市が感染者の追跡調査過程で情報の共有ができなかったと発言したことで、感染者管理の問題点などが露呈している。

 ソウル市は、6月4日「3次感染者と確認された35番目の患者(38)が、ソウル市内で大規模な行事に参加したにもかかわらず、政府が関連情報を提供していないと発表」、これに対し保健福祉部は「ソウル市の主張は間違っている」とし、公開的に抗議した。

対立する国とソウル市

 韓国の文亨杓(ムン・ヒョンピョ)保健福祉部長官は、6月5日に記者会見を開き、前日に朴ソウル市長が、福祉部がマーズの情報を共有せずにいる、と主張したことに対し「事実と異なる部分があるので、かえって国民の不安を増幅させる」とした。

 さらに「福祉部は5月31日に該当患者に対する疫学調査を迅速に実施し、その結果を疾病管理本部・ソウル市疫学調査官などと団体情報共有SNSを通してリアルタイムで共有し、6月3日にはソウル市と実務会議も開催した」と明かした。

 福祉部では朴市長の言動に真っ向から対立する形で、大規模な行事に対する追跡過程で逆にソウル市の協力がなかったと主張した。

 文長官は、「住宅組合総会(感染者が参加したと疑われている大規模行事)の参加者と関連し、隔離措置などのために該当行事の参加者リストを提出してほしいと再三言ったにもかかわらず、組合が資料提出を拒否した。そこでソウル市側にリストの確保協力を要請した。また、その組合がソウル市の要請にもかかわらず資料提出を拒否する場合は、警察力を動員して強制執行する」と述べている。