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【社説】

日韓防衛協力 信頼構築へ交流重ねよ

 日本と韓国の防衛相が四年ぶりに会談した。両国は北朝鮮の核、ミサイルの脅威に直面しているが、歴史をめぐる国民感情もあり、自衛隊の活動にも関わる防衛協力は足踏みしている。

 中谷元・防衛相と韓国の韓民求国防相が先月末、シンガポールで会談し、中断している交流の再開を確認した。だが、各論では韓国は慎重姿勢を崩さなかった。

 中谷氏は軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の早期締結の必要性を訴えたが、韓氏は「受け止める」とだけ答えた。協定は二〇一二年、署名直前まで進んだが、韓国世論の反発で棚上げされたままだ。

 日韓は別々に米国と軍事情報を交換する協定を結んでいるが、二国間では法的拘束力が弱い覚書にとどまっている。北朝鮮がミサイルを発射した場合でも、日韓双方のレーダーによる追尾情報を迅速に共有できない状態が続く恐れがある。

 自衛隊と韓国軍が共同訓練や国連平和維持活動(PKO)で、水や食料、物品輸送などを融通し合える物品役務相互提供協定(ACSA)についても、韓国側に慎重論が強い。

 新たな議題になったのは、国会で審議中の安全保障関連法案だ。防衛相会談で韓氏は日本の集団的自衛権行使を念頭に、韓国と関係があれば相談するよう注文した。中谷氏は「韓国の同意なしに、自衛隊が韓国領に侵入することはない」と説明し理解を求めた。

 植民地時代をめぐる歴史認識で関係が冷え込み、首脳会談の見通しが立たない現状では、軍事分野で具体的な協力を進めるにはまだ壁が厚いといえよう。

 それでも、防衛当局は北朝鮮の核、ミサイル開発抑止という緊急の課題について意見交換を続ける必要がある。併せて高官の相互訪問を増やし、海難事故の捜索、救援を想定した共同訓練を再開するなど、交流を重ねて信頼を積み上げていきたい。

 日本と韓国の対中政策に隔たりがあるのも、防衛協力を難しくしている。安倍政権は中国の尖閣諸島や南シナ海への進出を強くけん制するが、朴政権は、経済関係、北朝鮮に対する中国の影響力を考慮して刺激するのを避けている。

 シンガポールではカーター米国防長官を加えた日米韓の防衛相会談も開かれた。オバマ政権は今後も仲介役を務め、三カ国の連携強化を促すとみられる。

 

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