円安:中小・家計打撃も 輸入品高騰、行き過ぎに警戒感

毎日新聞 2015年05月26日 22時31分(最終更新 05月27日 09時59分)

 東京外国為替市場で26日、7年10カ月ぶりの円安水準となった。市場では円安がさらに進むかどうか見方が分かれており、円安の引き金となった米国経済やギリシャの財政問題の行方を注視している。行き過ぎた円安は輸入価格の上昇を通じて中小企業や家計に悪影響を及ぼすため、持ち直しつつある国内消費を冷え込ませてしまう懸念もある。

 「ユーロが安くなるのでドルが上がっている」。元財務官で国際協力銀行(JBIC)の渡辺博史総裁は同日午後、記者団にこう強調し、ギリシャ情勢への懸念を背景にユーロ安・ドル高が進み、それにつられる形で円に対してもドルが買われやすくなっているとの見方を示した。現在の水準については「米国の利上げを先取りした想定内の水準だ」と指摘した。菅義偉官房長官も同日の記者会見で「(現在の為替水準は)急激な変動にあたるとはみていない」と述べ、想定の範囲内であるとの認識を強調した。

 みずほ証券の鈴木健吾FXストラテジストは「原油価格がこの先1バレル=50〜60ドル台で安定すれば、年内に日銀の追加緩和が実施され、円安がさらに進む」と指摘。来年前半までに1ドル=130円台に乗せる場面もあると予想する。一方、SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは、米国の年内の利上げを市場が織り込みつつあるとして「1ドル=122円前後でいったん落ち着く」と分析する。

 日本経済にとって円安は輸出企業の収益を改善させるメリットがある一方、輸入原材料費の上昇によって中小企業の経営や食料品の値上げにつながるデメリットがある。帝国データバンクによると、2014年度は食料品や繊維、アパレル業界を中心に「円安関連倒産」が401件に達し、前年度(178件)から大幅に増加。同社は「今後も円安の影響を受けた関連倒産は高い水準で推移する可能性が高い」とみている。

 みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「今の水準でもデメリットの方が大きい。円安がさらに進み、食品の値上げが相次げば、せっかく上向いてきた人々の消費マインドがまた冷え込んでしまう」と警告する。【土屋渓、中井正裕】

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