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数字で読み解く 23歳からの経済学

第39回 民間の平均給与は10年前と比べ10%も減少!?

2013年5月1日

 この10年以上、日本経済はデフレに悩まされており、安倍新政権はデフレからの脱却を最優先課題とした経済政策「アベノミクス」を打ち出した。その一環として、2013年に入り、安倍新政権はデフレ脱却に向けた消費拡大のために、産業界に賃上げへの協力を求めており、減少してきた民間の給与が今後増えることが期待されている。

 では実際、民間の平均給与はこの10年間でどの程度減少してきたのであろうか。また減少の要因としてはどのようなことが考えられるだろうか。その2点について確認してみよう。

 国税庁の最新の民間給与実態統計調査(2011年)によると、民間の平均給与は2001年の454万円から2011年には409万円とこの10年間で10%も減少している。

 男女別に見てみると、男性は2001年の558万円から2011年には504万円とこの10年間で10%も減少しているのに対し、女性も2001年の278万円から2011年には268万円と小幅ながら減少している。女性の平均給与が小幅減少に留まった背景には、女性の高学歴化が進むに伴い、年収1000万円以上稼ぎ出すような女性が増加していることが考えられる(図表1)。

図表1 平均給与の推移

 業種別に見てみると、非製造業は、サービス産業を中心とした非正規雇用者の増加を主因として、2001年の439万円から2011年には394万円とこの10年間で10%減少している。一方、グローバルな競争がより激しくなっている製造業では、人件費の削減が進められてきたことを主因として、2001年の497万円から2011年には462万円と7%減少している。

 年齢別に見てみると、若手社員(〜34歳)の平均給与が2001年の361万円から2011年には336万円とこの10年間で7%減少し、中堅社員(35〜54歳)も2001年の512万円から2011年には461万円と10%減少するなど、あらゆる年齢層で減少している。

 このように、この10年間で男女の別を問わず、ほとんどの業種で、また全年齢層で民間の平均給与が減少している。減少の要因として共通していえることは、収益改善の一環として、正規社員の給与を抑制していることに加えて、あらゆる年代で給与水準の低い非正規雇用者の割合を増やすことで人件費を引下げていることが挙げられる(図表2)。

図表2 非正規雇用者割合の推移

 近年の日本経済は、民間の給与の減少に伴う購買力の低下が、消費の低迷につながっており、再び消費を活性化させるために民間の給与の増加が期待されている。そんな中、2013年春闘において、安倍新政権は産業界に賃上げを要請した。この要請を踏まえて、多くの企業で一時金(ボーナスなど)の増額を決定するなど、明るい話題が増え始めている。ただし、一時金の年間給与に占める割合はさほど高くないため、今後は基本給の増額にまでこの流れが波及することが望まれる。この調子で給与が持続的に上昇することで、国内消費が活発化し、企業収益が改善することで更なる賃上げが行われるという好循環が回り始めることに期待したい。

(ニッセイ基礎研究所 押久保 直也)