韓国政府が7日、中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)と関連する新たな情報を公開したが、そのポイントは感染患者が確認されたか、あるいは一時的に診療を受けていた24カ所の病院のリストだった。ところが、このリストにあった一部の病院は、その所在地や名称が誤って記載されていた。例えば所在地が「京畿道軍浦市」と記載された聖母家庭医学科医院は、実際はソウル市城東区にある病院だ。またソウル市永東浦区の汝矣島聖母病院は、その住所は実際には存在しない「汝矣島区」とされていた。さらに忠清南道保寧市の「365連合医院」は「大川365連合医院」に、また「平沢プルン医院」は「平沢プルン病院」と誤って記載されていた。京畿道富川市のメディホールス医院は全く同じ名称の病院が2カ所あるため、「富川市槐安洞」と所在地を特定しておくべきだった。
国は国民が注目する病院のリストを午前11時に発表したが、その3時間後に修正したリストを再び発表した。誤った内容が原因で風評被害が発生し、地域住民から問い合わせが殺到した地方自治体や病院などから抗議や指摘を受けてのことだった。MERS対策本部で企画総括を担当するある局長も記者団に「ミスにより発表をやり直したことについては、少しは謝罪しておく必要がありそうだ」とコメントした。しかし実際に被害が発生した自治体や病院、あるいは国民に対しては誰も謝罪していない。ネットには「国は病院の名称やその位置も正確に把握していないのに、何か有効な対策や調査でも行ったのか」といった批判が相次いでいる。
伝染病の感染対策などを行う疾病管理本部や保健福祉部(省に相当)などの実務担当者は、今回の感染拡大から1-2週間にわたり徹夜の非常態勢で対応に当たってきた。そのため疲れがピークに達し、今回のミスにつながったことは確かに考えられる。しかし首相代行を務めるチェ・ギョンファン経済副首相兼企画財政部長官によると、感染者が出た医療機関の公表を大統領が指示したのは6月3日だった。それから4日間、24の病院のリストを整理し確認することがそれほど大変な作業だろうか。幹部らは疲れた実務担当者たちに仕事を丸投げし、上がってきたリストを発表しただけではないのか。
今回の病院リストは、MERSの感染拡大に対する一連の対策の中でも特に注目を集めていた。これまで各地域で病院を中心に感染が拡大し、国民の間で不安が高まっていたにもかかわらず、国は「病院名非公開」の原則を固く守ってきたため、ネットを中心に根拠のない「危険病院」のリストが広まった。そのため今回、国が病院リストを発表するに当たっては、何よりもその情報の正確さが求められていた。ずさんな対応により信頼を失った国が、病院名さえ正確に発表できないようでは、国民が不信を抱き続けるのも当然のことだ。