従来の記録を大幅に更新ブラッドリー・ウィギンスがアワーレコード54.526kmをマーク 世界新記録を樹立
2012年のツール・ド・フランス総合優勝者で、2015年4月にトラック競技へ転向したブラッドリー・ウィギンス(イギリス)が6月7日、ロンドンのリーバレーヴェロドロームで、1時間に単独でどれだけの距離を走れるかを競うアワーレコードに挑戦し、54.526kmという世界新記録を樹立した。アレックス・ドーセット(イギリス、モビスター チーム)が今年5月に打ち立てた52.937kmを大きく上回った。
ウィギンスはオリンピックのトラック競技で2004、08年に計3つの金メダルを獲得。ロードレースでは2012年のツール総合優勝、同年のロンドンオリンピック個人タイムトライアル(TT)、2014年の世界選手権個人TTなどのタイトルを獲得し、15年4月のパリ~ルーべ出場をもって第一線を退いた。自ら結成したUCIコンチネンタルチーム、チーム ウィギンスに籍を移すとともに、2016年リオデジャネイロ五輪のトラック競技で再び金メダルを獲得することを目指している。そして、もう一つの大きな挑戦が今回のアワーレコードだ。
2014年シーズン以降、トレードマークのようにひげをたくわえていたウィギンスだが、この日はひげをきれいに剃り落として登場した。挑戦に当たっては、チーム スカイにバイクを供給するピナレロのTTバイク「BOLIDE」(ボリデ)をトラック用にチューニングした「ボリデHR」が用意された。ウェアはラファ製のチーム ウィギンスのエアロスーツ。白基調のボリデHRにも、ネイビーや赤といったチーム ウィギンスカラーのペイントが施された。
大勢の観客がヴェロドロームを埋め尽くし、ウィギンスを後押しした。トラックの内側ではスタッフやウィギンスの家族、1991年から95年までツール総合5連覇を成し遂げ、1994年には当時のアワーレコードを樹立したミゲル・インデュライン氏らが見守った。
挑戦の目標を55kmと宣言していたウィギンスだが、スタートしてみると54km台のペースでの走行が続いた。大幅な記録更新は間違いないが、そこからスピードを上げていくことも難しい。
後半にかけて疲れが見え始めるも、スピードは大きく衰えることなく、1時間まで1分半以上を残してドーセットの記録を突破。観客からの声援はいっそう大きくなり、世界新記録がどこまで伸びるのか期待が膨らんだ。そして、力を振り絞りながら1時間を走り切ったウィギンスは54.526kmをマーク。55kmには届かなかったが、ドーセットの記録を約1.6km更新した。
挑戦終了後もゆっくりとトラックを走ったウィギンスは、バイクから降りると両手でバイクを掲げて喜びを表現。家族やインデュライン氏らと抱擁して記録達成を喜び合った。
ツール総合優勝とアワーレコード更新という“ダブル”の称号は、これまでにもインデュライン氏のほかエディ・メルクス氏ら数人しか成し遂げていない偉業。イギリス自転車界の英雄が、新たな勲章を手にした。