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創業者のジェームス・フリーマン氏を直撃

ブルーボトルコーヒー、創業者が語る「代官山出店中止」の理由

2015/6/8
6月4日、カリフォルニア州に本拠地を構えるブルーボトルコーヒーが7000万ドル(約87億円)の出資を受けたことを発表した。主な出資者は、資産運用会社のフィデリティ・マネジメント・アンド・リサーチなどだ。ブルーボトルコーヒーは、個人投資家からさらに500万ドル(約6億円)の投資を集める意向を示している。

「おカネ」はタンクに注ぐガソリン

本件に関し、ブルーボトルコーヒー創業者ジェームス・フリーマンは全社員に宛てて、以下のメールを送った。

「おカネ」をいただくのが、事業を評価してくださる投資家からなのか、コーヒーを買ってくださるお客さまからなのかにかかわらず、「おカネ」は私たちにとって目的ではありません。「おカネ」は、すべての人に素晴らしいコーヒー(それとパン!)をお届けするための手段です。

「おカネ」はタンクに注ぐガソリン。つまり、長期的な計画を立てたり、コーヒーの品質やスタッフのトレーニングに投資したり、投資するというぜいたくを可能にしたりするための手段でしかないと考えています。

今回の出資は、新しい店を出店することや、より多くのゲストに私たちのサービスを楽しんでもらうこと、私たちがカフェに対して持っている希望や夢を体現した店をデザインし続けることなどを可能にします。

また、RTD(パッケージ飲料)やデジタル・プラットフォームなど、コーヒーを美味しく飲める環境や技術、商品に投資し、ブルーボトルやタルティーンのサービスを私たちの店以外でも体験してもらうことを可能にします。

私たちは、これからもより質の高いサービス・商品へのコミットメントを強化していくつもりです。

今回の増資は、私たちがミッションを追求し、ベストを尽くして成長していくことを可能にします。

そして私たちは、今日も明日も明後日もこのミッションを追求し続けていきます。

ブルーボトルコーヒー創業者ジェームス・フリーマン

Blue Bottle Coffee Founder, James Freeman (Photo: Motoko Endo)

Blue Bottle Coffee Founder, James Freeman (Photo: Motoko Endo)

代官山に出店していたら、逆に落胆させたはず

サンフランシスコで小さなコーヒー屋台として誕生して以来、ブルーボトルコーヒーはカリフォルニアのベイエリア、ロサンゼルス、ニューヨーク、東京など20カ所に店舗を構えるまでに成長した。

ブルーボトルコーヒーとその競合であるスタンプタウン、インテリジェンシア、フィルズなどはシリコンバレーの新たな“宝の山”だ。彼らは、アプリやほかのテクノロジー系サービスを開発する起業家によく投資する投資家から、出資を受けることに成功している。

4月、ブルーボトルコーヒーがサンフランシスコに拠点を置く高級パン屋タルティーンを買収したことが報道された。

ブルーボトルコーヒーはこれまでに、グーグル・ベンチャーズ、トゥルー・ベンチャーズ、モーガン・スタンレー、ツイッターの共同創設者であるエヴァン・ウィリアムズ氏やインスタグラムの共同創業者ケビン・シストロム氏らから出資を受けている。

NewsPicksのJordan Kroghがブルーボトル創業者ジェームス・フリーマンに、ブルーボトルが投資家にとって魅力的な理由、そして、代官山への出店を取り消した件などについて聞いた。

──代官山への出店予定を取り消しましたが。

ジェームス・フリーマン:そうだ、わが社と合併したサンフランシスコのタルティーンベーカリーとコラボレーションすることにしている。

合併の前、タルティーンベーカリーの代表であるチャッドが、代官山でのライセンス契約に署名するところだったのだが、ちょうどその頃僕は清澄白河の店がオープンする関係で東京にいて、われわれはその時期に合併を決めた。

そして、僕たちは出店候補地を探していたのだが、代官山の候補地は160平方メートルしかなかった。そのサイズのスペースで需要に合った生産は不可能だ。今は需要が大きいことを見越して、450から650平方メートルのスペースを探している。

僕らが出店を取り消したことは、多くの人を落胆させた。でも、個人的には、初めから90分で売り切れを出してしまうような不適切なスペースに出店するほうが落胆させるような結果になると思う。結局、出店してしまったら、みんなもっと怒っていたんじゃないかな。

──なぜ、ブルーボトルコーヒーは投資家にとって魅力的なのでしょう。多くの投資家がいるシリコンバレーとブルーボトルコーヒーの本社が地理的に近いことも一因ですか。

コーヒーは投資家にとって、スケールしやすいプロダクト(商品)と見られていると思う。スケーラブルなコモディティだと。

多くの人がスターバックスを見て、「まだ市場参入の余地があるんじゃないか」と思っているのではないだろうか。新たなカフェが2万店、3万店も出店する余地はなくても、スターバックスより少ないパーセンテージの出店数でも、世界にインパクトを残すことができる。

レストラン・チェーンがビジネスとして成功するのが大変だということは投資家にとって周知の事実だから、われわれがレストラン・チェーンではないことも助けになっていると思う。

サンフランシスコにいることも、助けになっていると思う。というのも、コーヒーに依存している、テック・コミュニティにとって、コーヒーは燃料だから。

※フリーマン氏のフルインタビューは、6月21日(日)からNewsPicksでスタートする「コーヒー3.0」の特集に掲載。同特集では、ブルーボトルコーヒーを筆頭に、サードウェーブがもたらす新しいビジネスやトレンドをリポート。ポスト・サードウェーブの展望も含めて、日米のコーヒービジネスの最先端を描く。