GDP:設備投資増の持続性に懸念も 改定値大幅上方修正
毎日新聞 2015年06月08日 19時52分(最終更新 06月08日 20時51分)
◇15年1〜3月期 年率換算で3.9%増
内閣府が8日発表した2015年1〜3月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)の改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比1.0%増、年率換算で3.9%増となり、5月発表の速報値(年率換算2.4%増)から大幅に上方修正された。企業の設備投資が大幅に伸びたためだが、設備投資はこの先弱含む可能性もある。
設備投資は前期比2.7%増となり、速報値の0.4%増から大幅に修正した。一方、個人消費は前期比0.4%増で速報値と同じ。住宅投資は1.7%増、公共事業は1.5%減で、それぞれ0.1%下方修正された。
設備投資が伸びたのは、ネット通販の拡大で物流センターの建設が増えているほか、外国人観光客の増加でホテルの改修が進んだためだ。スマートフォンや自動車関連の生産増強投資もあった。経団連の榊原定征会長は8日の定例記者会見で「企業の国内回帰、設備投資への意欲が浸透しつつあることの証左だ」と指摘した上で、「給与も上がり、日本経済は4月以降も順調に成長できる」と述べた。
ただ、この勢いが続くかは見通せない。設備投資の先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)は、1〜3月期は前期比6.3%増だったが、4〜6月期の見通しは7.4%減に転じた。最近の円安は国内生産にとって追い風だが、産業界は「また円高に振れるのでは」(大手電機)という不安を拭えず、生産の国内回帰が加速しているとまでは言えない。みずほ証券の末広徹マーケットエコノミストは「1〜3月期は製造業の更新投資と、ホテルや物流センターなど非製造業の投資が重なったが、人口減少で需要が先細りする国内では投資は増えにくい」と構造要因を指摘する。
一方、個人消費の回復はまだ緩慢だ。4月には、物価変動を除いた実質賃金が2年ぶりのプラスに転じたものの、世帯当たりの消費支出は減少した。家計はまだ先行きに自信を持てず、消費の基調は盤石ではない。「夏場はボーナス増額の効果で消費が押し上げられるが、その後の回復は鈍い」(末広氏)などとして、4〜6月は設備投資の下振れなどで再びマイナスに転じるとの予測も出ている。企業が余力を賃上げや投資に回している間に、消費の本格回復が実現するかが当面の焦点となる。【横田恵美、片平知宏】