2020年東京五輪・パラリンピックを統括する専任の大臣が誕生する。そのための特別措置法が、成立した。

 これを機に、東京で開く2度目の五輪とパラリンピックの成功とは何かを、問い直したい。

 安倍首相は招致段階から東京五輪実現に熱心に取り組んできた。従来の大臣枠を増やす方針からは、世界が注目するスポーツの祭典をアベノミクスの「成長戦略」の起爆剤に、という意気込みがうかがえる。

 ただ、高度成長期で新幹線、首都高速道路などインフラの充実が求められた1964年東京五輪と、人口減、高齢化に直面する今とでは、首都の抱える課題は違う。東京都の人口は、2020年をピークに減少に転じると予測されている。

 主会場となる新国立競技場は、工期と建設費の見積もりが甘く、開閉式屋根の設置が五輪後まで先送りされる方針が明らかになった。当初から景観への配慮、後利用のコストなどで建築界や市民団体から反対運動が起きていた。異論に耳を傾け、アイデアを吸い上げるシステムが働いたとは言いがたい。

 大会組織委員会が、来年までにまとめる「アクション&レガシープラン」を注視したい。大会後も開催国・都市に有益な「レガシー(遺産)」を残す狙いで、国際オリンピック委員会(IOC)も推奨している。

 東京が他都市の模範になれるテーマはいくつもある。

 水素エネルギーを活用した環境対策。障害者が気軽に街に出られるバリアフリーの推進。駅や商業施設で多言語対応が進めば、グローバルな観光都市の財産として引き継がれる。

 かけ声倒れにならぬよう、施策には数値目標を設けたい。担当大臣には、各省庁や東京都などと連携を図る責任が伴う。

 気がかりなのは、スポーツが主役の祭典であるはずなのに、スポーツ界の存在感が薄い点だ。競技団体は財源の多くを、国に依存する立場で遠慮があるのか、発信力が乏しい。

 国からメダル量産の使命を課され、選手強化で手いっぱいになっていないか。地域の指導者の育成など、草の根のスポーツ振興に心を配りたい。高齢者や障害者が健康のためにスポーツに親しめる施策も大切だ。

 国のスポーツ基本計画は「スポーツを通じてすべての人々が幸福で豊かな生活を営むことができる社会」の実現をうたう。

 五輪・パラリンピックへの準備はその助走であるべきで、大会がひと夏のお祭りとして消費されるだけではもったいない。