須藤元気氏インタビュー [2011.05.18]

須藤元気氏インタビュー(3) 「僕自身が楽しいと思えることをやっているだけ」


日々多くのプレッシャーと向かい合っていることを感じさせないぐらいに、とても軽やかでポジティブな須藤さん。それには、選手と接するに当たって、独自の流儀があった。(文:中村陽子)

■楽しいことをみんなで共有すれば
チームが一つになる

須藤さんの語り口は、とても率直だ。

「もともと僕が格闘技をやっていたのだって、女の子にモテたかったから。男は単純なんですよ」とさらりという。そんな姿勢が、学生たちの心をつかむのだろう。プライベートの恋愛相談もよく舞い込むという、いわば選手たちの兄貴役。

そんな兄貴は、やんちゃな仕掛けをすることもある。例えば、ナンパ訓練。

「夏合宿中、オフの時間に海に行って『よし、トレーニングだ。ナンパするぞ』と言ったんです。とても盛り上がりましたね。成功しなくてもいいんです。女の子に話しかけるのは楽しいですから。
楽しいことを共有することで、みんなが仲良くなり、チームが一つになります。それに、僕も楽しいですしね」

■「人のためにやっている」と思って動いても
いい結果にはつながらない

監督という仕事について「僕自身が楽しいと思うことをやっているだけなんですよ」と笑う。その言葉の裏には、こんな理由がある。

「もし僕が『学生たちのためだ』と思って何かをすると、どうしても『こんなにやってあげているのに』と恩着せがましくなる。決していい結果にはつながりません。だから、今この瞬間に僕自身が楽しいと思えることをする。そうすれば押し付けにならないで済むんです」

「僕」を「僕ら」に変え、「僕らが楽しむために」「僕らが喜びを分かち合うために」と考えれば、チーム全体の足並みを揃え、みんなで頑張ることができる。

選手たちと接するときに心掛けていることが、もう一つある。
それは、言葉ではなく行動で示すということだ

「説教をしたところで、相手は変わりません。人と人との関係は、鏡の関係です。例えば、僕が練習場で楽しそうに取り組んでいれば、その姿を見た選手たちもレスリングを楽しむようになります。人を変えようとするのではなく、まずは自分が変わること。そして一人ひとりと愛情を持って心で接すること。僕にできるのは、それだけです」

■執着心を手放して
捨て身であり続けろ

08年の監督就任以降、4度の最優秀監督賞に輝いた須藤さんだが、「いつクビになってもいい」という覚悟を絶えず胸の奥に秘め、監督業に臨んでいた。

「勝負の世界は、捨て身が一番強い。前年に優勝したら学生王者。追いかけられる側です。そこで王者としてのポジションを守ろうとしないことが、強さになる。『ポジションを守りたい』というのは執着です。執着すると不安や猜疑心が出て、いい結果を出せなくなる。だから僕自身、『いつクビになってもいい』と腹をくくって、囚われない自由さを持ち続けるようにしているんです

2年前から北海道の網走に自宅を構えている。月に1度、1週間ほどを網走で過ごす。「飼っている猫が大地を駆け回る姿を見ながら、読書をしたり、ものを書いたり、畑作業をしたり。空気も水も食べものもおいしいし、人もいいし。最高です」

どうすれば、そんなに軽やかでいられるのかと聞いてみた。

「いつもワクワクのひもをたどっているだけなんですよ。毎瞬毎秒、『楽しいことって何だろう』と思ってやっていると、いい循環が起こる。ただそれだけなんですよ」

須藤元気(すどうげんき)Profile
1978年東京生まれ。拓殖短期大学卒業。短大時代には全日本ジュニアレスリング優勝。卒業後に渡米し、サンタモニカ大学でアートを学びながら格闘家としての修行を続け、帰国後に逆輸入ファイターとしてプロデビュー。UFC-J王者を経て、K-1などで活躍。2006年大晦日のK-1を最後に現役引退。作 家、タレント、ミュージシャンなど幅広く活動しながら、2008年、母校拓殖大学レスリング部監督に就任。『今日が残りの人生最初の日』(講談社)、『風 の谷のあの人と結婚する方法』(幻冬舎文庫)など著書多数。自ら立ち上げたパフォーマンスグループ「WORLD ORDER」のPVが国内外で話題となるなか、新曲「MACHINE CIVILIZATION」以降の作品のダウンロードフリーを宣言して注目を集めている。http://www.worldorder.jp/

禁無断転載
▲ ページの先頭に戻る

ログイン

  • ログイン

人事・労務に役立つ商品・サービス検索

  • カテゴリとジャンルから検索

検索

注目商品ランキング 新着商品