今回は、遺産分割について簡単にご説明致します。
1.意外とモメる遺産分割
遺産分割は、スムーズに、簡単に終わるケースもあれば、モメにモメてまとまらない…というケースもあります。まず、「なぜ遺産分割がまとまらないなどということがあるのか?」とお考えの方もいるのではないでしょうか。
日本の民法には、ハッキリと「相続分」が定められています。例えば、配偶者と子供2人がいる人が亡くなった場合、遺産は「配偶者が1/2、子がそれぞれ1/4ずつ取得する」といった具合です(このように法律で定められている相続分を「法定相続分」といいます)。「法律で相続分が定められているのだから、その通りに分ければモメるはずがない」という考え方です。
※ 相続分についてはこちらの記事に詳しく記載されておりますので、ご参考にしてください。
しかし、ここで考えていただきたいのは、法定相続分どおりに遺産を分けることが、常に可能か?ということです。遺産がすべて現金であれば話は簡単です。1/2、1/4、1/4に分けて、それぞれが取得すればよいのです。しかし実際の相続の現場では、「簡単に分けることができない」ことの方が圧倒的に多いのです。
たとえば、遺産のすべてが不動産だったとしたらどうでしょう?自宅の土地・建物が唯一の遺産という状況では、1/2、1/4、1/4に分けて…とすることはとても困難です。不動産を物理的に分解して、法定相続分ごとに所有する、というのはあまりにも非現実的です。また不動産を持分で取得して共有するという方法もあります。しかし、その不動産に居住することになる相続人はともかく、居住しない人にとっては「持分なんかいらない。現金化してほしい」と思うかもしれません。
さらに、「法定相続分は本当に公平か?」という問題もあります。相続人の中には、故人から生前に多額の贈与を受けていた人がいるかもしれません。また、故人が亡くなる直前、介護をしていた相続人とそうでない相続人とで、引き継ぐ遺産の額が同じでは不公平だ、という考え方もあります。
2.遺産分割の方法は?
とはいえ、亡くなった方の遺産をそのままにしておくわけにはいきません。生きている方が引き継がなければならないのですから、なんとかして遺産分割をする、ということになります。その中でもっとも単純というか、シンプルなのが、「話し合いで遺産分割をする」ということです。この話し合いを、「遺産分割協議」といいます。
ですが、何度も言うように、遺産分割協議をまとめるのは、場合によってはとても大変です。そこで、いろいろな工夫をして、すべての相続人が納得できる結果にもっていかなければなりません。
遺産が不動産の場合、相続人のひとりがその不動産を取得し、不動産を取得した相続人が残りの相続人に現金やその他の財産を支払うという方法、遺産の土地を分筆してそれぞれの相続人が1筆ずつ土地を取得する方法、不公平だとは思うけど仕方ないので我慢するという方法、などなど…。さまざまな方法を駆使して、とにかく相続人全員が納得する結果を模索します。遺産分割協議の内容にきまりはありません。
重要なのは、「すべての相続人が納得する」ことなのです。
すべての相続人が納得する話し合いができたなら、その内容を書面にします。「口頭で行っただけの遺産分割協議は無効」というわけではありませんが、遺産分割協議の内容については、後々問題になることもあります。ですから、かならず遺産分割協議の内容は、書面にしておくべきです。そしてこの書面が、「遺産分割協議書」です。
3.遺産分割協議書作成時の注意点
- 亡くなった方の氏名、最後の住所地、相続発生日(死亡日)、相続が発生した旨を書く
- 相続する財産を特定する
不動産であれば、登記事項証明書に記載されている情報を書きます。不動産が存する住所を書くだけでは特定できないことがあるので要注意です。
また銀行の預金口座も、「○○銀行××支店 普通預金 口座番号*******」のように、きっちりと書いた方が良いでしょう。
- 財産を取得する人間を記載する
- 相続人全員の署名・押印
署名(直筆)ではなく記名(ワープロ打ちなど)でも無効とはなりませんが、署名の方が良いでしょう。また押印は、実印を使います。とくに不動産の名義変更、銀行の口座の引継ぎ手続では、実印でないと手続ができないことがあります。
- 全員の印鑑証明書をつける
4.遺産分割協議がまとまらない場合は…?
いろいろと工夫をしても話し合いでは遺産分割できない場合、あるいは話し合いさえできない場合は、家庭裁判所に遺産分割をお願いすることができます。「遺産分割の申立」です。
家庭裁判所に申立てをしたとしても、あくまでも基本は話し合いです。家庭裁判所が間に入って、相続人同士で話し合いをするわけです。そして、相続人全員の合意を目指します。これを「遺産分割調停」といいます。
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