クリミア併合宣言から1年という時期に、核兵器の使用に言及すること自体、対露批判を続ける国際社会へのあからさまな威嚇、牽制(けんせい)だ。
大国の指導者からはかけ離れた到底、認められない発言であり、岸田文雄外相が「核兵器の使用はあってはならない」と強い懸念を示したのも当然である。
国際社会はプーチン発言を厳しく批判し、クリミア併合を既成事実化させないよう団結して取り組む必要がある。
プーチン氏は番組で、昨年2月にウクライナで親露派政権が崩壊した時点で、クリミア併合を決断していたことも明かした。
これまでは、翌月行われた住民投票を根拠に併合を正当化してきたが、自らそれを覆した。核使用も考慮し、領土拡張を果たそうとした本音を、隠そうともしない開き直りには呆(あき)れる。
国際社会はイランや北朝鮮の核開発抑止なども目指している。核大国として核軍縮に自ら取り組むべきロシアが、核を背景に他国への侵略・干渉を進める姿勢を示すのでは、核拡散防止条約(NPT)体制空洞化への懸念が広がることも避けられまい。
死者が推計6千人を超えたウクライナ東部でも、深刻な状況が続いている。ロシアが支援する親露派武装勢力は今年2月に成立した2度目の停戦合意発効後も戦略的要衝を制圧した。ロシアと親露派勢力は、今後も同じやり方で勢力圏拡大を図るおそれがある。
ロシアの行為は「力による現状変更」を認めないという国際秩序の根幹への挑戦にほかならないが、プーチン発言から考えても、早期の事態収拾に期待は持てない。国際社会はさらなる制裁強化なども検討すべきだ。
日本としては、ロシアが不法占拠する北方領土はクリミア併合と同根であることを認識し、その返還を訴え続ける必要がある。
ロシアは5月9日に開く対独戦勝記念70年式典について、安倍晋三首相にも出席を呼びかけているようだ。だが、ウクライナ情勢でのロシアの強権的手法や核発言は受け入れられないと、厳しく伝えることが先決である。