競泳の元日本代表選手による窃盗疑惑の一件は後味の悪さだけが残った。

 昨年9月に韓国・仁川アジア大会でカメラを盗んだとして窃盗罪で有罪判決を言い渡された冨田尚弥(26)が4日に、控訴を断念。事の真相はともかく、今回の「冨田事件」で改めてハッキリしたのは、国際試合ではいつどんなトラブルに巻き込まれるか分からないということだ。

 日本代表が海外の大会に参加した際、各競技団体が専属コックを雇うのは、ライバル国に買収された宿泊施設の関係者から食事に禁止薬物や下剤を混入されるのを警戒しているから。用意された移動のバスが遅れ、会場入りがギリギリになって試合前のウオームアップもままならないのは日常茶飯事だ。

 国際大会の開催国によるあからさまな嫌がらせもあり、ラグビーの日本代表が遠征した際に、練習場として提供されたグラウンドに釘やガラスの破片が落ちていたことがあったそうだ。日本のお家芸である柔道は世界各国からマークされているため、足を引っ張ろうと畳が敷かれていなかったり、床が剥がれた稽古場を与えられることもあったという。

 国際大会での実績が引退後の人生を左右する国もあるだけに、勝つためには手段を選ばない選手、コーチがいても不思議ではない。今回の冨田の件にしても日本オリンピック委員会(JOC)関係者の曖昧な証言を韓国警察が有力な証拠として採用したといわれる。

 各競技とも今年から来年にかけてリオ五輪の出場権のかかる世界選手権が控えている。五輪でメダルを取りたければ、国際試合では“身内”であっても信用しない方がよさそうだ。