原爆資料館:パノラマ「迫力不足」 展示検討で厳しい注文

毎日新聞 2015年06月05日 17時19分

検討会議で披露された、広島市上空で原爆がさく裂する状況を再現した映像=広島市中区で
検討会議で披露された、広島市上空で原爆がさく裂する状況を再現した映像=広島市中区で

 改修工事中の原爆資料館(広島市中区)の展示見直しを考える検討会議が4日、中区であり、被爆前後の広島の街並みの映像を立体模型に投影する「ホワイトパノラマ」などのデモンストレーションが行われた。しかし、委員からは「迫力が足りない」などの意見が出されるなど、新展示で来館者を迎えるパノラマに厳しい注文がついた。【加藤小夜】

 検討会議では白い立体模型の一部に、緑の木々や青い川など被爆前の広島市の風景から、投下された原爆がさく裂し、町が壊滅していく一連のCG映像が映し出された。実際には直径5メートルの白い立体模型に、爆心地から半径2.5キロの市街地の被爆前後の映像を投影するとしている。被爆前のセミの鳴き声や爆撃機のエンジン音なども再現し、原爆投下後の無音と対比させるなど音響での効果も狙っている。

 このほか、なぜ広島に原爆が落とされたかや原爆の脅威を伝えるための大型タッチパネル式検索装置「メディアテーブル」も、画面に映し出す映像や検索装置の一部が披露された。

 現在、製作途中というホワイトパノラマだが、委員からは「広島の街だとわかりにくい」「インパクトが弱い」などの厳しい意見が相次いだ。またメディアテーブルについても、映し出された映像が終始暗いことから「映し出す被害写真は鮮明に」「研究者が見てもいいような中身を」といった注文が出された。

 このほか、広島の復興を伝えるコーナーでは、「明るく美しいものばかりでなく、被害という原爆の二面性の部分も取り入れるように」と求める声が上がった。次回会合は9月に開かれる予定で、今後資料館では意見を反映し、新展示の製作に役立てていく。

 同会議の委員長を務める今中亘・中国新聞社特別顧問は「ホワイトパノラマの迫力不足を感じた。展示は生の資料や遺物が重要であり、補完する役目の(パノラマなど)メディアと主従がひっくり返ってはいけない。きちんと再検討してほしい」と話した。

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