アジア市場は日本の20~30倍の市場規模に!? アジアの中心で感じる「Japan Too Small」

2015年06月08日(月) 田村 耕太郎
〔PHOTO〕gettyimages

シンガポールから見ても小さくなる日本の存在

「世界第3位の経済大国」などと言っている日本人にはイメージしにくいかもしれないが、アジアの中心からみると、日本がいかに「小さくなりつつある特殊な存在」にすぎないかがよくわかる。シンガポールは小さい国だが、そのシンガポールにいる外国人もシンガポール人も「Japan Too Small」を連発している。

シンガポールにいるビジネスリーダーたちは、GDPでは日本の3倍近くにまで成長した13億人の中国経済や、購買力平価ベースGDPで日本を超えた12億人経済のインド、こちらも購買力ベースでは日本に匹敵する6億人経済ASEANを相手にしているのだ。

経済重視のモディ政権となり、年率7%を超える経済成長率を叩き出しているインドは、来年は成長率が8%を超える可能性がある。このペースでいけば、あと7年ほどで実質GDPでも日本を超えてしまうだろう。10年後にはASEANも実質GDPで日本と肩を並べているはずだ。

中国の外貨準備は400兆円近くに達し、これだけで日本のGDPの8割に匹敵する規模である。「世界一の規模」と言っている日本の公的年金の4倍近い金額だ。これが中国人富裕層のお金とともにアジアを中心に世界中に染み出している。その一部がASEAN加盟国に少し流れ込んだだけで、たちまち大バブルとなる。

個人のお金もすごい。株式や不動産ではなく、限りなくキャッシュに近い形で1兆円近く持っている中国人富裕層がザラにいる。彼らをもってしても中国ではナンバーワンのお金持ちではない。私はそんな富裕層の一人と非常に親しくしているのだが、彼からは「この規模でお金を置いておくことは本当に大変だ」と、よく聞かされている。

彼はもちろん、金融商品だけではなく、事業や技術にも投資しているのだが、彼らの発想は私などとは全く違うスケール感なのだ。個人で、東証の一日の売買代金の1割以上の投資を一日のうちにやってしまうこともあるという。そういう資産家がシンガポールには複数居を構えている。このクラスの人間の資産運用を支援するのが、本当のプライベートバンカーなのだろう。




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田村 耕太郎

(たむら・こうたろう) 前参議院議員。エール大学上席研究員、ハーバード大学研究員などを経て、世界で最も多くのノーベル賞受賞者を輩出したシンクタンク「ランド研究所」で唯一の日本人研究員を務めた。
国立シンガポール大学公共政策大学院名誉顧問、新日本海新聞社取締役東京支社長。
1963年生まれ。早稲田大学卒業、慶応義塾大学大学院修了(MBA取得)。デューク大学ロースクール修了(法学修士)、エール大学大学院修了(経済学修士)、オックスフォード大学上級管理者養成プログラム修了、ハーバード大学ケネディスクール危機管理プログラム修了、スタンフォード大学ビジネススクールEコマースプログラム修了、東京大学EMP修了。
2002年から10年まで参議院議員を務めた間、内閣府大臣政務官(経済財政、金融、再チャレンジ担当)、参議院国土交通委員長などを歴任。
シンガポールの国父リー・クアンユー氏との親交を始め、欧米やインドの政治家、富豪、グローバル企業経営者たちに幅広い人脈を持つ。世界の政治、金融、研究の第一線で戦い続けてきた数少ない日本人の一人。
2014年8月、シンガポールにアジアの地政学リスクを分析するシンクタンク「日本戦略情報機構(JII)」を設立。また、国立シンガポール大学(NUS)リー・クワンユー公共政策大学院の兼任教授に就任し、日本の政府関係者やビジネスリーダーに向けたアジア地政学研修を同校教授陣とともに実施する。
著書に『君に、世界との戦い方を教えよう 「グローバルの覇者をめざす教育」の最前線から』などがある。