【真核生物の起源再考】6月1日・独マックスプランク研:新しい分析法によって、これまで真核生物の起源とされていた分子痕跡が現生生物による汚染だったことがわかった。これにより真核生物の起源はこれまでの25億年前から15億年前に修正される。http://t.co/Rx22VoamX8
— サイエンスあれこれ (@sarekore) 2015, 6月 6
【真核生物の起源再考】
6月1日・独マックスプランク研:
現生生物による汚染を極力排除した新しいサンプル調製法を用いた結果、これまで真核生物の起源とされていた分子痕跡が現生生物による汚染だったことがわかった。これにより真核生物の起源はこれまでの28億年前から15億年前に修正されようとしている。
細菌などその細胞に核をもたない生物を原核生物というのに対し、酵母や動植物など細胞に核をもつ生物を真核生物という。これまで真核生物の起源とされた証拠には化石による証拠(生物化石)と化学物質の痕跡による証拠(分子化石)の2種類があった。しかし、前者が北オーストラリアの岩石中に見つかった微細藻類の微小化石から判断された15億年前という起源に対し、後者が複数の産地の岩石中に発見された、真核生物の細胞膜に特有のステロイドが変化したステランと呼ばれる化学物質から判断された25-28億年前という起源で、両者には実に10億年以上の隔たりがあった。さらに分子化石には当初から現生真核生物に匹敵する多様なステラン類が発見されたことから、当初は真核生物は出現してすぐに多くの種に分岐したのだと考えられた。しかし、当時はサンプルの保管や分析法が理想的とは言えず、現生生物による汚染の可能性に一抹の不安もあったという。
そこで今回、研究者らが現生生物による汚染の可能性を完全に排除できる新しい方法を用いてこの真核生物の分子化石が含まれてたとされる岩盤を再調査(写真:掘削風景)したところ、一切のステラン類も検出することができなかった。この結果はこれまで発見された多くのステラン類が現生生物による汚染だった可能性を示唆している。さらに再調査した岩石にはかつて高圧高温の環境下にさらされたことを示す新たな証拠が見つかり、当時の真核生物に由来するステラン類の痕跡が存在している可能性はほとんどなくなった。
これで真核生物の起源は生物化石を根拠とする15億年前と考えるのが妥当となったが、これは酸素を必要とする真核生物が、地球上に十分な酸素が生み出されたとされる24-25億年前よりも後に登場したことになり、これまでの起源より辻褄が合うという。
関連記事:
二度の全球凍結と二度の生物大進化〜それぞれをつないだものとは?
原著:
- Katherine L. French, Christian Hallmann, Janet M. Hope, Petra L. Schoon, J. Alex Zumberge, Yosuke Hoshino, Carl A. Peters, Simon C. George, Gordon D. Love, Jochen J. Brocks, Roger Buick, Roger E. Summons. Reappraisal of hydrocarbon biomarkers in Archean rocks. Proceedings of the National Academy of Sciences, 2015; 112 (19): 5915 DOI: 10.1073/pnas.1419563112
Comment
コメントする