北京のランダム・ウォーカー

社会主義は危機に弱くなったのか? 「東方の星」転覆事故から透けて見える習近平体制の「きしみ」

2015年06月08日(月) 近藤 大介
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〔PHOTO〕gettyimages

韓国全土をパニックに陥れている「MERS」

東アジアで「大乱」が続いている――。

日本列島は地震と火山に怯えているが、これは天災なので、まあ仕方ない。口永良部島の噴火で一人の犠牲者も出なかったのは、普段からの島民の用意周到な避難訓練の賜だろう。

問題は、韓国と中国だ。

まず現在、韓国全土をパニックに陥れているのが、MERS(中東呼吸器症候群)である。

韓国で農場設備会社を経営するA氏(68歳)は、4月18日~5月3日まで、バーレーン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)を訪問。5月4日に、カタール経由で仁川国際空港に降り立った。帰国後、発熱と咳に悩まされ、5月12日から20日にかけて、4つもの病院を転院した。その間、最初の3つの病院では、中東へ行っていたことを医師に伝えていなかった。

5月20日になって、4番目の病院でようやく、中東帰りであることを告白。MERSに罹っているとの診断を受けた。A氏夫人も感染が確認された。

ここから凄まじい勢いで感染者が増えていき、6月5日には死者4人、感染者41人、隔離対象者は1600人を超えた。これからどこまで感染者が増えるか、予想もつかない状況だ。

韓国では、学校も703校が休校措置を取った。ソウルの知人に電話して聞いたところ、街はどこもガラガラで、市民生活にも多大な影響が出始めているという。加えて、サムスンをはじめとする韓国の大工場でも、工員の欠勤が目立ち、産業界にも大きな打撃が広がっている。

韓国の観光業界も当然ながら、売り上げはガタ落ちだ。昨年韓国を訪れた中国人観光客は、612万人(全体の43%)にも達したが、いまや中国人客のキャンセルが相次いでいるからだ。

ちなみに昨年韓国を訪れた日本人観光客は228万人に過ぎないが、こちらもキャンセルが続出しているという。確かにもともと嫌韓感情が広がっている日本で、MERSが吹き荒れる韓国へ行こうという日本人はいないだろう。6月22日には日韓国交正常化50周年を迎えるというのに、哀しいことだ。

ソウル証券取引所の株価も続落している。朴槿恵政権は、今年の経済成長率を2.9%と予測しているが、いまや2%を切る可能性も出てきた。このままMERS騒動が収まらなければ、ひょっとしたらマイナス成長になるかもしれない。昨年も4月に「セウォル号ショック」があったばかりだが、朴槿恵政権3年目の今年は、さらに大きな試練に見舞われているのである。

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