保健福祉部(省に相当)は先月31日、忠清北道忠州市に対し、同市内のある研修施設を中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)に伴う隔離対象者の収容施設として利用したいと文書で通知した。これに対して忠清北道と忠州市は「同じような施設は患者が発生した地域の周辺に数多くあるのに、(患者が一人も発生していない)清浄地域の忠州市に収容施設を置くのは理にかなわない」として拒否した。さらに忠州市の職員らは文書で通知を受けてから3日間、問題の研修施設に続く道路に三重のバリケードを設置し、隔離対象者が訪れても追い返すため24時間体制で警戒に当たった。このように忠州市が強く反発したことを受け、保健福祉部は要請を取り下げることにした。
保健福祉部は江原道に対しても、MERS患者やその感染が疑われる患者を収容するため、現地にある国指定の隔離病床を提供するよう要請したが、江原道は「道内に患者は発生していないので、外部から患者を受け入れることはできない」としてこれを拒否した。仁川市は疾病管理本部が市に事前に通知せず、MERS患者を仁川市内の大学病院に移したという理由で「今後は事前の通知なしに患者を送りつけた場合、受け入れを拒否する」と抗議したという。問題の患者は京畿道のある病院で感染が確認された後、いったんソウル市内の病院に移されたが、病室がないことから1日未明に仁川市内の大学病院に再び移されていた。
一部の地方自治体ではこのように利己的ともいえる対応や反発が相次いでいるが、これらは果たして問題がないのだろうか。MERS患者や隔離対象者の数はすでに1700人を上回り、彼らを治療、収容する病院の確保はすでに非常に困難となっている。また全国に17カ所ある国指定の隔離病床などを全て活用したとしても、対象者全員を収容することはできないため、隔離対象者の多くは自宅待機という形で隔離されている。今回の感染は主に特定地域の病院で発生したが、2次感染者の移動により患者が発生する地域も徐々に拡大しつつある。そのためある自治体が、「自分たち以外は汚染された地域」で「自分たちは清浄地域」などと分けて考えること自体が到底受け入れがたい。今後もMERSの感染が引き続き拡大すれば、今「清浄地域」などと主張している地域でも、住民は間違いなく感染のリスクにさらされるだろう。
今回、患者らの受け入れを拒否した道や市が、今後も引き続き国の要請を拒否し続けるのであれば、今後もし住民の間で患者が発生した場合、国から専門家や治療のための施設や機器などの提供は一切受けないという覚書をまずは準備しておくべきだろう。